第359話 真の敵
敵駆逐艦からの砲撃が続く中、俺と玲子君は俯いたまま、向き合っていた。
そして玲子君は、これまでに見せたことのないほどの、深刻な表情で、俺に語り出した。
「雄介様、恐らくこの攻撃を行っているのは、マーシャン・ディッカーソンで、間違いないかと思われます」
は?、、、なんだそれは?、今、マーシャンの事を言ったのか?
「私は、彼の事を少々疑っておりました、しかし、それに確証が無かったため、ここまで何も言わないでいましたが、これではっきりしました、彼が、、、、軍使エムディ本人で間違いありません」
、、、、!、、?
、、なんだって?、マーシャンがエムディ?、、、あの?、、だってそれはさっき、俺たちが葬ったではないか、マーベリック・デイモンド艦長、、、、!
俺は、そして、、、、、再び背筋の凍る思いがした、、、、
「マーシャン・ディッカーソン、、、、「M」・「D」、、、そう言うことなのか?」
すると、玲子君は小さく頷くと、泣きそうなほどに悲しい表情を浮かべた。
俺たちは、ずっと騙されていたのだ、、、マーシャンが、あの「キル・ザ・ドール」の首謀者、アンチAIのトップ、、、あのエムディだなんて。
「おかしいとは思っていたんです、どうしてマーシャンは自身のタイムマシーンを保有しているのに、わざわざシズを使ってベニオンに飛んだのかって。」
確かにそうだ、そう言われてみれば、おかしな点は多々あったはずだ。
一番最初に、俺がマーベリック艦長の足を撃った時も、何故か介抱していたし、最後に俺がマーベリック艦長にとどめを刺そうとしていた時も、わざわざゼンガにそれをさせた、、、俺がこの時代の人間を殺傷出来ないから、わざわざそれが出来るゼンガを呼んだってことになる。
「しかし、アンチAI組織のトップなのに、どうやってタイムマシーンを操作している?、それだってAIなんだろ?」
「、、、、マーシャンのAIは恐らく、、、人格形成プログラムが破壊されています、、、恐らく、相当な拷問によって、既に精神は崩壊しています、今の彼女は、命令のままに動く、ただの機械です。電磁パルスでも機動しているのは、そのせいです」
どこまでもAIを人間とは認識出来ない連中なんだな、、、
「おい、それではシズが危ないんじゃないか?」
玲子君は、何かに気付いたように、顔を上げ、上空のシズを見上げた。
📶『
「玲子君、それって、AIに対する精神攻撃の事を言っているのか?」
「はい、そうです、そして、恐らくはそれだけでは済みません、物理攻撃が加わる可能性があるのです」
彼女がそう言うと同時に、敵駆逐艦の砲撃により14潜の艦尾が大きく損傷した。
そして、南側からは、何か複数の航空機が接近しているのが薄っすら見えるではないか
「10時方向より敵機襲来、各員対空戦闘準備!」
対空戦闘と言われても、航行が出来なくなった14潜なんて、空に対して何も出来ないではないか!。
「山本提督、自分が出ます、もはやこの艦では抵抗できません、この時のために、我々は準備して来たんではありませんか!」
北村少佐が、甲型2番機で出ると言い出した。
まさか、敵駆逐艦を、核兵器で沈めると言うのか?
「だめだ北村、核弾頭では威力が大きすぎる、下北半島の住民まで巻き込んでしまう」
「問題ありません、、、弾頭は、80番に換装してありますから」
それを聞いた山本提督は、北村少佐が準備周到に出撃準備していたことに驚くと共に、その覚悟を決めた表情に、もはや反対の余地は無いと察した。
80番、、、それは、早川中尉が出撃した時に装備されていた800キロ弾頭の事を指していた。
「解った、甲型2番機、発進準備!」
艦内が慌ただしく発艦準備に取り掛かった、その中でも、マーシャンの指示による砲撃は、絶え間なく繰り返されていた。
俺は、北村少佐が出撃しなくても、何とかなる方法を考えていた、、、まだ間に合うのではないかと。
※ マーシャン・ディッカーソンの設定資料 ↓
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