第60話 体内ディバイス
このパーティのメンバーは、意外にも全員が女性だった。
なんだか、大学の、そういうサークルなの?というほど、年齢が俺たちに近い人たちばかりだった。
完全な白人もいれば、東洋人のような人もいる、全員が実にスマートで、本当にゲームにでも出てきそうな人たちだ、、ズバリ、カッコいい。
俺と玲子君は、彼女たちが宿泊している村へ向かって歩いていた。
バックアップとして、光学迷彩で透明になっているシズも上空待機していた。
ここは、彼女たちがご馳走してくれるので、近くの酒場にでも一緒に行こうとのことであった。
俺たちも近くに宿をとも思ったが、この世界の通貨を得ていないので、宿泊はタイムマシーンの中でとなるだろう。
そう思っていると、先ほど倒したドラゴンには、比較的高額の賞金がかけられていたらしく、賞金の取り分と、自己紹介を兼ねての宴席となる予定だ。
俺たちは村について、少し驚いた。
それは、イメージ通りと言うか、それこそゲームやラノベに出てきそうな典型的な村のそれであった。
彼女たちが、一度部屋に戻って着替えてくるから、その間、先に酒場でまっていてくれ、というので、俺と玲子君は酒場で二人待つこととなった。
「玲子君、この世界での現金はどうしたらいい?」
「はい、GF職員は、一定額の換金率の高い貴金属が支給されていますので、そこはご心配ありません。しかし、この世界でのドラゴン退治は、恐らくそれなりの金額となりますから、当面のお金の心配はないと思われます」
「とりあえず、この後村をすぐに出ると怪しまれるから、この村の宿に宿泊した方がよさそうだな」
「そうですね、彼女たちの宿を紹介してもらいましょう、まだ少し時間があるようですから、貴金属をお金に換えてきます」
彼女はそう言うと席を立ち、シズと連絡を取りながら、この村の現金換金所を目指して行った。
俺は、、、ポツンと一人になってしまった。
それでも、この店からはいかにも美味しそうな料理の香りがしてくる、みんなを前に、食事でもしてしまいたいくらいだ。
隣の席には、何の肉か解らないものの、丸焼きの美味そうな肉や洋食のようなものが次々と運ばれていた。
これは期待できそうだ。
どうせ見ても解らないと思ったが、とりあえずメニューのようなものがあるのでそれを見てみると、、、、あれ、なんだか、文字に字幕で日本語が見えるが、、、映画みたいだな。
「GF、それは携帯端末を使った機能なんですよ」
シズが教えてくれた。
体内ディバイスとでも言うのか、仕組みは今一つ解らないが、シズがサポートしてくれるので、ここでの生活には何ら不自由はないように感じられた。
「シズ、この目の前に何もないのに、画像が見える仕組み、さっき俺の時代にはあると言っていたが、そんなもの記憶にないのだが」
「そうですか?、この映像は、スマートグラスと言う名前でGFの時代には既に開発はされていますね、もしかしたら試作品かもしれませんが、目の前に像を出すのではなく、微弱な光で網膜に直接映し出す仕組みですので目には負担が少ないのです」
なるほど、人間の目は眼球の奥に像を映し出すから、それを目を通さず直接網膜に投影しているということか。
そんな技術、もうあったんだな。
この耳に直接届く仕組みも、本当に助かる、、、、これでこちらの話声が、もう少し声を出さなくても大丈夫なようになれればいいのだが。
これでは、延々と独り言を言っている気の毒な若者に見えるではないか。
「GF、それも練習次第でコントロールできますよ」
「おい、何で考えていることまでわかる」
俺は、今話さなくても良くなればいいと考えただけだったのに、シズから勝手に回答が帰ってきた、テレパシー?、ちょっと怖いぞ。
「GF,これはその人の感情や身体データから情報を再構築することで、会話を成立させる技術なんです、口の中で小さく話をすれば、私達は人間が何を話そうとしているかが解ります。ですので、無音で会話することも出きるんですよ」
へー、それは凄いな、ちょっとやってみるか。
「シズ、それでは私が何を話しているか、試しに当ててみてくれ」
「はい、GF」
俺は、ちょっと口を閉じたまま、ゴモゴモと言葉を話してみた、すると
「、、この時代の通貨の単位、ですね、それと、日本円との比較、でよろしいですか?」
おおお!、なんか凄いなこれ、本当にシズはこんな内容を認識出来るんだ!
、、、大丈夫か、俺の考えていること、全部読まれていない?そして、それは、玲子君に駄々洩れになってない?
いや、男子には言えないこともありますから、それはポーカーフェイスを気取っていることだってありますから!。
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