第59話 パーティ

 よもやのドラゴンに、剣士様の登場と、さすがにおかしな流れながら、俺は剣を構えて、ドラゴンに立ち向かっていた。

 幼い頃に剣術を学んではいたものの、多分、この生き物には通用しないだろうな。

 まあ、迷ってても始まらない、このサイズ観だと、せいぜい足元しか狙えないかな。

 俺は、全力でドラゴンに向かって走っていった。

 俺の剣先が、ドラゴンの巨体に突き刺さろうというその瞬間、、、大きな銃声が聞こえた。

 

 ドウウウウーーン


 ちょっと聞きなれない大きさの銃声だ、大砲かと思うほどの大きさだ。

 突き刺さった剣から獣の血が滴り落ちると、俺はその銃声の主を見た。

 玲子君だった。

 彼女は対物狙撃銃という化け物のような銃を構えて、なんだか少し怒った顔をしながら


「雄介様!」


 と、対物狙撃銃を放り投げ、俺の方に走ってきた。

 ビンタでもされそうな勢いで駆け寄ると、彼女は意外にも飛びついて俺に抱き着いた。


「いつも言っているじゃないですか、ご自愛くださいって」


 ああ、そうだった、彼女はいつも俺の盾となって守ってくれているんだったな。

 それにしても、この世界では、俺以外、彼女も武器を使うことが出来るらしい。


「ああ、すまなかった玲子君、これからは自重するよ」


 そう言ったものの、彼女はなかなか俺を開放してくれない、、、よほど心配したのだろう。


「、、、あの、、お取込み中失礼するが、先ほどは助けてくれてありがとう、君たちは見慣れない装備だが、冒険者なのか?」


 先ほどの剣士らしき女性が俺たちに話しかけてくる。

 よく見ると、童話にでも出てきそうな青い瞳に金髪がかった茶色髪でロング、色白の女性だった。

 年齢は、俺たちと同じくらいか?


「美鈴、GFから離れなさいよ、いつまでくっついているつもり!」

 

 シズが端末に話しかけてくる。

 なんだか、シズはシズで、ちょっと怒っていた、なんだ?今日はなのか?

 剣士の彼女は、後方にいた仲間に声をかけて、こちらに呼び寄せた。

 、、、、んんん?、これまた、、なんだよ、これは、ゲームかラノベの世界か?

 仲間も、まあまあ、そういう感じの服装、装備の人たち、、、まさか魔法とかは使えないだろうな。


「先ほどは、本当にありがとう、私達はこのドラゴンを退治に来ていたパーティです。」


 ああ、もう、パーティって言っちゃってるじゃん。

 、、、?、あれ、俺、何で彼女たちと会話が出来るんだ?


「玲子君、なぜ我々は彼らと会話が出来るんだ?」


「雄介様は初めてでしたね、これは自動翻訳の一種で、雄介様には今現在、携帯端末が体に仕込んである状態です。SIZから送られてきた画像も、もう見えていますよね。」

 

 ああ、そういうことか、、、体にって、え、いつ?、俺の体にそんな改造を?ちょ、ちょっと怖いんだけど?

 

「それにしても、剣先でドラゴンを倒すなんて、貴方はどこの剣術使いだい?。君たちは命の恩人だ、もしよければ私達はこれから村に帰るので、一緒に来ないか?」


 ああ、さっきの狙撃を、彼女たちは剣術で倒したと勘違いしているんだな。

 まあ、見たところ、この世界には、銃器は存在しないらしい。

 しかし、俺たちはともかく、あのUFOみたいなタイムマシーン見て何も気付かないのか、、、あれ?タイムマシーンが消えてる!

 俺は小声で聞いた。


「玲子君、機体が消えてるけど、、、」


「問題ありません、光学迷彩で森に溶け込ませているだけで、そこにいます。」


「大丈夫ですよー、GF、私ならここにいまーす」


 シズはいつも明るいなあ。

 俺は、まだ慣れない身体端末で彼女たちとコミュニケーションを取りながら、とりあえず、この、、、パーティの(ああ、パーティって言っちゃったよ、俺も)ご厚意を受けることにした。

 なんにせよ、解らないことだらけだから、情報収集が必要になるだろうしね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る