第58話 本当の歴史、間違った世界観

 俺の目の前にいる生き物は、いわゆるゲームなどでよく見かけるドラゴンというやつだった。

 ええ、、、俺が来たのは可能性としての今現在ということだよな。

 2000年前に大分岐した世界にドラゴンがいる?

 いや、まったく意味が解らん。


「、、、雄介様は、歴史で学習したものの中には、ドラゴンは含まれていませんよね」


「いや、そりゃそうだろ。君たちの歴史の授業には出てくるような言い方だが」


「はい、当然タイムトラベルが可能となった以降の歴史観は、それまでの物と異なります。というより、大きく異なり、だいぶ印象が変わるはずです」


「それにしたって、ドラゴンが過去にいれば、それは化石になったり目撃されたりするだろう」


「そうなんです、雄介様の時代には、それらは恐竜として描かれていますが、それは後日、間違った世界観であると修正されてゆくのです」


「それにしたって、今目の前にいるのは化石ではないぞ、生きて、、、いるんだよな」


 いや、もう、生きてるもなにも、グルグルと変な唸り声上げてるし、もう生き物そのものだよな。

 ドラゴンを、それも生きている本物をこの目で見れるとは夢にも思わなかった。

 俺がそう思っていると、そのドラゴンは突然大声を上げて何かを威嚇し始めた。


「雄介様、機内へ退避してください、一旦離脱します」


「いや、ちょっとまて、、、、なんだ、あそこにいるのは?」


 俺が気になったのは、ドラゴンから少し離れた場所に、なにやら人影が見えた気がしたからだ。


「ほら、あの木陰に、何かドラゴンに向かって、、、、、攻撃している?」


「GF、私の方で、それが何か確認します、携帯端末のモニターモードに拡大図を出しますからご確認を」


「ありがとうシズ、、、、これがモニターか、直接目の前に現れるんだな、どういう仕組みで投影されているんだ?」


「あら、GFの時代には、この技術はもうありますよ、歴史上では」


 そうなのか?

 それにしても、初めての体験だな、空間にモニターが浮いているよ、やっぱり100年後って凄いな、、、、って、おい、ドラゴンの次は勇者でも現れたのか? 

 なんだか数人で、ドラゴンと対峙している連中がいるぞ?

 一人は剣を持ている、さすがに火を吹いたりはしないだろうが、象の何倍かありそうな巨体相手に、剣ってまた古風だな。


「おいシズ、援護してくれ、おれは彼らを救助する」


「え、えええ、GF、援護って言っても、私、武装なんてしてませんよ!」


 俺はキャサリンが準備してくれていた米軍のカービン銃を手に取ると、一目散に彼ら目がけて突進した。

 途中、玲子君が制止に入ろうとしたが、横須賀基地の時のように、どうも俺は一度闘志に火が付くと、止まれない質らしい。

 

「おい、大丈夫か?」


 そう言うと、向こうのグループの何人かが、俺を認識した。

 彼らはとっさに「来るんじゃない」「危ないぞ」と叫ぶと、俺を制止しようとするが、それを待たずして、ドラゴンの尻尾が、剣を持った人物を豪快に跳ね飛ばしていった。

 さすがに一瞬躊躇したが、俺は跳ね飛ばされた彼の下に駆け付けると、彼を庇うような姿勢で大丈夫かと問うた。

 

「大丈夫です、君は、、誰、、なの?」


 ん?、声が女っぽいな、、、、まさかの女剣士か?

 装具は付けているが、たしかに少し俺より小さいサイズだな。


「そのままじっとしていろ!」


 俺は、銃の切替レバーを連発に切り替えると、ドラゴン目がけて乱射した。

 小銃とはいえ、連発ならば機関銃並みの威力、さすがのドラゴンも、、、、あれ、なんだか死なないよ、この生き物。

 しかし、暴れているが、弱ってはきているようだな。

 とっさに銃を持って走ってきたから、替えの弾がない、これを打ち切ったらアウトだ、、、と思っている矢先に、打ち切ってしまった。

 

「失礼、ちょっと君の剣を借りるよ」


 半ばやけくそになっていたが、ここに倒れる女性に、まさか背中を向けて立ち去るわけにもゆかず、、、あーあ、剣で戦うことになってしまった。




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