第54話 見知らぬ男

 玲子君は、陸軍の軍服から、パイロットスーツのようなツナギに着替えていた。

 同じく階級章が付いているから、これは米陸軍のパイロットスーツなんだろうか。


「こちらが格納庫になります」


 キャサリンがそう言うと、格納庫の照明に灯がともった。


「これが、タイムマシーン、、、、おい、これって、、あれだよな」


 そう、これは見覚えのある形状、俺が知っているこの形状は、タイムマシーンではなく、、、


 UFOだ。


「UFOの目撃例とは、このタイムマシーンの目撃例だったんだな」


「もちろんです、不思議に思いませんでしたか?なんで宇宙人が人類に興味を持つのか」


 キャサリンが、学校の先生のような口調でそういう。

 玲子君が、その理由について、フォローしてくれた。


「雄介様は、仮に蟻の列があったとして、特別介入しようとしますか?」


「いや、全く興味に該当しないな、しかし、人類と蟻とでは比較にならないだろう」


「いえ、この世界には、多くの文明種が存在しています、この現世人類は、彼ら宇宙人の興味を引くようなレベルの文明ではありません、どちらかと言えば、まだ未開の分類に入ります。その現世人類に何度もアプローチしてくるということは、現世人類に近しい存在であり、その関係性が重要な種族ということになりませんか?」


 なるほど、たしかに文明が多く存在しているなら、宇宙人である必要はないわけで、むしろ未来人の方が自然だな。

 そう言えば、UFOって、目撃例が初めて出ていた時より、進化しているような気もするから、目線が俺らレベルということになるしな。

 しかし、俺たちのレベルって、宇宙全体からすると、そんなもんなんだな、もう少し注目されているかと思っていたよ。


「そうすると、古代で突然文明が興るタイミングには、時間への干渉が未来人によってもたらされた、ということか?」


「それはまた、微妙に異なるようです。私達が行ける過去には、まだまだ制約があって、それほどの大昔には軽易に行けません。それには、何と申しましょうか、手続きのようなものが必要となるのです。」


 んん?、手続き?、誰から誰に対して?、、、これってグルっと回って、宇宙人の話をしていないか?


「、、、その手続きは、誰に対して行うものなのか?」


玲子君が、とても話しにくそうに切り出してくる。


「もう、ここまで来てしまうと、時間超越のルールの話になってしまいますが、、、、そうですね、まず、時間超越には、かなり厳正な決まり事があります、それは、この世界(宇宙)を崩壊させないためのルールです。時間超越の技術を手に入れた文明レベルは、まずこれら文明の先輩方とのファーストコンタクトに合格する必要があるのです」


 なんだか、運転免許の仮免許みたいだな、合格、不合格の世界なんだ。


「で、100年後の未来では、その試験に合格をしているという事なんだな?」


「そうですね、この時代の免許で言うところの仮免許のようなものとお考えください、100年後の未来ですら仮免許ですから、現世人類はまだ免許の手続きすら終えていない状態なのです」


「その、仮免許に合格する前に、現世人類がタイムマシーンを開発してしまったら、それはどうなるんだ?」


「はい、止められます」


「いや、止めるって、誰に、、、、、!」


 ちょっと、鳥肌は立った、そう、その時間超越の先輩って、「管理人」のことではないか?


「管理人、なのか?」


「いえ、管理人もその機能の一部と言えますが、本体は別にあります。この宇宙全体で統制されたシステムに加入した、とお考えください、仮に理論上タイムトラベルの域に人類が達したとしても、管理人の直接介入によってそれは阻止されます」


「どうやって?」


「、、、、こうやって、ですわ」


 玲子君がそう言うと、俺の後ろには見た事のない普通のおじさんが立っていた。


「、、、?、失礼、あなたは?」


「昨日、お電話でお話した、、管理人です」


 、、、、わー、本物来ちゃったよ。

 これが、噂の管理人?

 いや、なんというか、宇宙人の統制システムなんて話聞いた後だから、余計に違和感を感じるな。

 そこにいた人物は、何というか、本当にただの「おじさん」だった。

 それも、ホワイトカラーではなく、ブルーカラー、作業員のような印象を受けた。

 むしろ、この米軍補給所の中では、掃除のおじさんくらいにしか見えない。

 俺は、玲子君に近づき、耳元で囁いた。


「管理人って、なんだか、こう、普通だな」


「はい、でも、怒らせない方が良いですよ、特にエラーノリターンについては話さないでください。でも、本当に管理人は雄介様に敬語なんですね」


 ああ、やっぱりそこが珍しいんだな。



※ 設定資料 格納庫内のタイムマシン ↓

https://kakuyomu.jp/users/wasoo/news/16817330668191643780

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