第53話 格納庫

 どれだけ眠ったのだろう、かなり深夜だと認識できた、真っ暗な病室に、また月明かりだけが差し込んでいた。

 

「雄介様、ずっとここにいてくれたんですか?」


 俺は驚いて暗い部屋を見回した、、。

 彼女が目を覚ましていた。

 なんという事だろう、逆に俺が目を覚ますのを、彼女は待っていてくれたのだ。


「玲子君、いつ、気付いたんだ?心配したんだぞ。かなり危ない状況だったんだ」


 俺は暗い部屋の中で、薄ら涙を浮かべながら、彼女の生還を心の底から喜んだ。

 

「お願いだ、もうどこにも行かないでくれ、私と一緒にいつまでもいてくれないか」


「まあ、雄介様、それでは大昔のプロポーズというものではありませんか?」


 彼女は笑いながら、それを冗談だと捉えていた。

 無理もない、彼女は未来人で俺はGF、本来何の繋がりもない人間同士。


「冗談などではない、本気だ。これからも私の行くところに、付いてきてくれるか?」


 彼女は、少し切なそうな顔をするが、少し間を置いて、うなずいてくれた。


「キャサリンを呼んでこよう、峠を越えたなら、回復は早いと言っていた、部屋の電気を付けて大丈夫か?」


「あ、、申し訳ありません、もうしばらくそのままでお願いします」


 ああ、彼女も少し涙声だな、明かりは付けづにいるか、、今回も引き分けだな。

 キャサリンが部屋に入ってくると、玲子君となにやらヒソヒソ話を始めた。

 玲子君は、それを聞くと、顔を真っ赤に染め、恥ずかしそうに俺をチラチラと見始めた。

 、、、? なんだ、どんな会話をすると、そうなる?


「キャサリン、玲子君はあとどれくらいで良くなりそうなんだ」


「はい、もう問題ありません、現時点で完全復旧です」


 早いな、さすが未来のテクノロジー、さっきまで危篤状態だったのにな。

 あれだけ出血をしていたのに、一体どんな仕組みなんだ。


「美鈴は私の軍医学校の後輩なんです、この時代は、現世と違って、医療の大半が再生医療となります、ですので、自己免疫による回復とは次元が異なります」


 なるほど、根本が違うんだな。

 それにしたって、再生させるなら、何か材料が必要に感じるが。


「ところで、マーシャンは大丈夫なのか?」


「ええ、横須賀基地が大変なことになっていますので、今は救護活動で大変なようです。こちらにも支援要請が来ていますが、正直、GFの正面の方が、多分事態は深刻ですから」


「そうだな、エラーノリターンを、早く実行しないといけないからな」


 キャサリンも、それには同意のようだった。

 もう一晩くらいゆっくりしていきたいところだったが、タイムマシーンを周囲に見られるリスクを考えると、夜が明けきらない早朝に決行するのがベストだとのことだった。


「玲子君、大丈夫か?立てるか?」


「はい、雄介様、問題ないようです」


 彼女が立ち上がるのを見て、本当に回復していることが信じられないでいたが、彼女は俺の方をじっと見つめ、俺も彼女を見返し、それは数秒間続いてしまった。

 キャサリンが、わざとらしく咳払いなどをして、ちょっと気まずくなったが、俺たちは少ない所持品を持ってタイムマシーン格納庫へと向かった。



※ 美鈴玲子の「タイムマシン搭乗服」です ↓

https://kakuyomu.jp/users/wasoo/news/16817330668189179239

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