第49話 強行着陸


 相模原の補給処が見えてきた。

 ここには滑走路が無いから、場外離着陸場に強行着陸するしかない。

 既に消防車と救急車、航空機誘導員が準備してくれている、が、多分関係なく行くんだろうな、、、無免許操縦だしね。


「座間管制塔、協力に感謝する、こちらの機体コンディションは最悪だ、地上で待機している要員に、一旦退避するよう指示を頼む」


 どんな着陸になるか解らないし、被害は最小限に食い止めないとな、、、それでいいだろ、玲子君。

 徐々に高度を下げて行く、地上が近づいてくるが、匙加減がさっぱり解らない。


「風向4200ミル、風速6m、進入可能、進入せよ」


 地上の誘導員から指示が来る。


「機体が異常事態のため、強行着陸を試みる、進入可能、了解した、地上勤務員は退避せよ」


 誘導員は少し離れたようだったので、少し右旋回をしてながら降着を試みる。

 既に機体後部から煙が上がり、機内にも充満し始めている。

 多分、やり直しは効かないだろう。

 スロットルをゆっくりもどし、操縦桿を前にする。

 離着陸場の「H」マークがはっきりと見えた。

 そこを目がけて突っ込めばいいんだよな。

 そう思った時、彼女が少し目を覚まし


「いけません雄介様、進入角度が鋭角過ぎです」


 と、そっと操縦桿を引き、スロットルを戻す


「そうです、操縦桿はそのまま、で、ゆっくりと進入してください、、、」


 再び意識を失う彼女、このまま、進入するしかない。

 俺は彼女を強く抱きしめ、強行着陸に備えた。

 一瞬、恐怖で操縦桿を上げそうになったが、彼女がギリギリのところで指示してくれたことだ、それに、これ以上は彼女がもう持たない。

 意を決して、俺はHマーク目指して真っすぐ進んだ。

 機体の煙は、既に炎へと変化していた。

 地面まであと20m、10m、、、、


 ズーン、


 機体が地面と接触すると、機体は一度大きくバウンドして再び地面に接した、そのままうまく降着出来ると思った次の瞬間、機体の傾きが正常を保てず、メインローターが地面に接触してしまった。

 ローターは地面を何度も弾き機体を半回転させてようやく止まった。


「おーい、大丈夫か?」


 待ち受けていた消防隊が駆け付け、消火活動を始めると同時に、俺たちの救助に当たってくれた。


「俺はいいから、彼女を頼む」


「ドアを破壊しますので、少し我慢してください」


 陸軍の、まだ若い好青年だったが、必死に頑張ってくれていた。

 窓から、彼女を先に出すと、俺は内側からドアを何度も蹴って破ろうとするが、なかなか行きそうで行かない。

 俺は、活動中の隊員に、一旦下がるよう手で合図すると、最後の武器でもある腰の拳銃を抜いて、ドアに3発ほど撃ち込んだ。

 そして、再度蹴破ると、今度はうまくドアが弾け飛んだ。


「早く、こっちです」


 兵士が俺を呼ぶ、とにかく俺はそちらに向かって全力で走った、走ったのだが、、

 物凄い衝撃が背中に走り、思わず前へ吹き飛ばされてしまった。

 先ほどの兵士が、駆け寄り、俺に肩を貸して、退避してくれた、頼もしいな、君。


「君、名前は?」


「はい、ライアン二等兵であります。」


 ええ、またライアン二等兵?凄いな、一日に二人もプライベート ライアンに会ってしまったよ。


「まるで映画のタイトルだな、さっきも海軍で同じ名前の二等兵に会ったよ」


「ああ、よく言われます、プライベート ブライアンですよね、見た事あります」


 んん?ブライアン?ライアンだろうに。


「ブライアンではないよ、ライアンだ、君と同じ名前のね」


「いえ、あの映画のタイトルですよね、ブライアンですよ、私が間違えるはず、ありませんから」


 今日は一体、なんなんだ、空母の名前もレーガンからエンタープライズに変わってたし、映画のタイトルも、、、あれ、これってもしかして、聞いた事あるぞ、記憶と世の中が少しズレる現象、、、、あ、マンデラエフェクトだ、何回か経験あるやつだ、これ。

 そう思っていたら、ヘリはもう一度大爆発を起こし、完全に破壊されてしまった。

 消防隊の放水が勢いよくされるが、更に追加の消防車が基地外から駆けつけているようだった。

 そんな消防車を横目に、救急車に乗せられた玲子君が見えたので、慌てて車に駆け寄った。

 ここで別れてしまうと、次の接触が困難だ、それに、この時代の医療設備よりも、彼女の持っている機器の方が確実な治療が出来る。

 ここに隠してあるタイムマシーンの位置が解ればいいのだが。

 


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