第29話 はい、管理人の彼です

 未来のAIが、人類にとって、非常に危険な存在となって行くプロセスは理解した。

 しかし、こうして玲子君やマーシャンのように、人類が自由に時間移動出来ているということは、人類はこの難問に対して、一定の解決策を見出した、という事だよな、これは気になる。


「それで、人類はどのように、このAIとの問答を回避して、共存の道を歩んだのだ?」


「そうですね、厳密には、共存の道はまだ歩めていないかもしれません」


 ええ、マトリックスみたいに、AIと人類が戦争でもしているのかな、それって勝ち目あるの?


「AIと人類は、戦争でも始めた、ということか?」


「それは、何と申しましょうか、少々戦前の方々の発想ですね、AIは戦争という概念で人類を見ていません、それが感情をコントロールできない、知的生命体として最も幼稚な感情と解釈しているからです」


 ならば、AIは人類にとって、脅威にはならないではないのかな。


「ならばAIは、この地球に不要となった人類を、どうしようとしたのかな」


「残念ですが、その部分は最も未来の重要なところですから、雄介様にもお話することは出来ないのです」


「いや、GFである私なら、そもそも問題ないと思うのだが」


「いえ、雄介様がGF本人だからこそ、ここは絶対にお話しできない部分なのです。」


「それは、理由を聞いても良いか?」


「簡単なお話です。それ自体、GFから命ぜられた事項です。これからGFが未来でどのような偉業を成し遂げるか、その内容を話すと、少々厄介なことが発生しますので」


「厄介?」


「はい、とても厄介です。それは、この世界の構造に影響する内容ですので、彼がここに来て、私がお話することを止めるでしょう」


「、、、、彼?」


「はい、管理人の彼です」


 !、ああ、そりゃヤバいわ。

 結局、原理は解らないけど、管理人って、要するに人類不要論を唱えたAIと、根本は一緒ってことでしょ。

 なるほど、玲子君が会いたくないと言った理由が解るわ。


「しかし、この世界の物理法則を無視して、突然ここに現れるとは考えにくいが」


「ですので、その、この時代の物理法則が、、、、いえ、やめておきます。これも、多分、管理人を呼び寄せてしまう内容です。」


 管理人、こえーよ。

 今、俺の中で、幽霊の次くらいにランクインだよ。

 え、だって、時空ゆがめて、突然ここに来るってことでしょ、、、

 いやだよ、そんなやつ。


「ならば、もうそれについては聞かないでおこう」


 おれは、すっかり縮こまった体を、彼女のマッサージによりほぐしてもらった。

 そして、不覚にも、この珠玉の時間を、俺はうとうとと眠りについてしまうのである。

 なんと、もったいない!


 だが、俺はいつになく、癒しの時間を楽しんだ。

 これほど充実した眠りは、初めてではないだろうか。

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