第27話 シンギュラリティ
この世界には、パラレルワールドから迷い込んだ人物を、元の世界へ送り返すための「管理人」がいる、それは理解した。
しかし、それが実在する人物ではなく、AIのような存在だったとして、人の形をしているという部分がどうも理解できない。
「その管理人AIは、意思を持ったロボットのようなものか?」
「いえ、基本的には、現世の人間と何ら変わりません」
「しかし、生身の人間に、AIの意思を移植することは、未来でならできるのか?」
「いえ、、、、なんと申しましょうか、この世界の考え方に関係する話なので、お話することは非常に難しいのです」
いやー、さっぱりわからん。
これまでの話は、一応論理立てて話が成立していたが、このAIの話は辻褄が合わん。
それとも何か?、生身の人間を乗っ取って、寿命が来るとまた別の人間を乗っ取って、、、みたいな感じか?
「その管理人の体は、元々誰かのものを乗っ取っているということか?」
「いえ、その、、、管理人は現世人類の体を使うことはありません。それは彼らオリジナルですが、現世人類となにも変わらないので、戦前の機材を使っても、それは検知も発見もすることが出来ません。」
「現在でも、人間の表情や動きを検知して、人間の感情を読み取ったり、犯罪を防止する技術はあるが、それでも発見は困難と言うことか?」
「、、、何と申し上げたら良いか、それら分野は、彼らの最も得意とするところです。生き物の行動原理そのものをコントロールできるので。」
なんとも歯切れの悪い回答だな、、。
「、、、その、管理人にとても興味がある。もう一度聞くが、合うことは出来ないのか?」
「、、、はい、あ、いえ、強く望めば会えなくもないのですが、時間超越の世界では、私達よりも遥かに上位者ですので、ちょっと私は苦手ですね」
「まさか、管理人AIは、君の上司なのか?、、、、まさか、玲子君も、AIなのか?」
「いえ、さすがに私は人間です、ただの未来人です、、、、それは信じてください」
いや、ただの未来人って、未来人の段階で、ただの、って日本語に違和感を感じるよ。
しかし、この現世では、AIは単なる機械の延長線にしか存在しないが、100年後では、人間より上位者のAIが居るってことなのか?。
「信じてあげたいが、今日一日に起きたことを考えれば、もうどんなことが起きても、何を信じれば良いのか解らないな」
「、、、、雄介様は、、私に触れても、私と一緒にいても、AIだと思いますか?、たしかに管理人AIは人と何も変わりません、しかし、やはり本物の人間とは、少しだけ異なります。」
「具体的に、どんな?」
「なんと申しましょうか、管理人AIには何度でもやり直すことが可能です、つまり、死の概念が無いのです。そのため、どこか冷静なのです。」
なるほどね、たしかに玲子君は時々見せる慌てたところなんて、必死さが伝わってくるし、機会っぽくはないよな。
でも、そもそも、機会っぽくないという発想自体が、ナンセンスかもしれない。
100年後の世界で、AIの進化は俺の常識を遥かに上回る性能だろう、もうシンギュラリティーを超えて遥か未来のことだろうし。
、、、シンギュラリティ、技術的特異点、つまり人工知能が人間の知能を超える瞬間のことね。
「いくら冷静とはいえ、この分野のAIは100年も経過していれば、とっくにシンギュラリティは超えているだろ、そこは人間に近いんじゃないのか?」
「、、、もう、雄介様には、お見通しのようですね、、、、はい、100年後のAIは、ある意味人間より人間らしいところがありますし、感情も備わっています、つまり怒ったり笑ったり。でも、決定的に不足しているものがあるのです。」
不足しているもの?、100年後ですら、人工知能にはまだ不足したものがあるの?
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