第12話 法治国家日本で実銃を取るということ
「おい、大丈夫か?」
俺は、銃撃された彼女の右腕を大丈夫か覗き込もうとしたが、彼女によってそれは阻まれた。
「私を少しでも気遣って頂けるのでしたら、お願いです、銃を取ってっください。GFご自身で、この危機を脱するのです。」
躊躇している暇はなかった。
そう話している今現在も、後方の追っ手が放つ銃弾は一つ、また一つと車体に命中しているのだ。
「よし、わかった、運転は大丈夫か?」
「はい、まだ持ちそうです。でも、このままですと車体が持ちません。この後、細い県道に入りますから、敵の車両が縦一列になったところで、こちら側から反撃してください。後部の窓ガラスは銃で撃ちぬいて排除して大丈夫です。」
法治国家日本で、実銃を取る、これが何を意味しているかは常識があれば誰にでも解る。
捕まれば銃刀法違反、後方の敵を殺害すれば殺人罪、正当防衛が認められても、ライフルによる防衛行為は正当ではないよな、、、しかし、やらなくては彼女の命にかかわる。
、、、、やるしかない。
彼女の言った通り、助手席の後方には、いくつかのケースやカバンがあった。
その中に、明らかにライフルが入っています、と言わんばかりのガンケースも置かれていた。
「えーと、カラシニコフ小銃に、、あれ、これって89式じゃないか?」
俺は驚いた。
テロリストの類であれば、外国の銃を密輸して使用するなら理解できる、しかし、この89式小銃は自衛隊の正式小銃で、民間にも、諸外国にも流通していない、つまり偽物か、本物であるとすれば、、、
俺は既に弾倉が装填された状態の小銃を手に取ると、切替レバーを連発の「レ」に合わせて豪快に引き金を引いた。
ドタタタタタタタタタッ nnn
最後の望みとも言うべき、この89式小銃が偽物であると言う淡い期待は、この瞬間消え去ってしまった。
覚えのある硝煙の匂い、、、
間違いなくこれは実銃だ。
彼女は、俺が予備自衛官補と言う情報から、この89式を用意したのかもしれない、、、、しかし残念、俺が経験した実弾射撃訓練は、64式という、もう少し古いタイプの銃でした!
残念!
などと考えているうちに、俺が今放った銃弾により、後方にいた敵の車両は一旦距離を置くように下がった、しかし、すぐに体勢を立て直してくるだろう。
「雄介様、間もなく狭い県道に入ります、その時点でまず、先頭車両に徹底的に射撃をしてください、予備弾倉は近くにあります。」
、、、さすがだな、彼女は俺が今何発撃ったのかを掌握している。
次の一撃は、出来るだけ多くの弾丸を短時間で撃ち込まなければ意味がない。
彼女の言う通り、30発が入る少し「くの字」に曲がった弾倉、いわゆるマガジンを新しいものに交換し、再び安全装置を連発の「レ」に切り替えて、俺は銃を構えた。
※ 登場する銃器に関する設定資料です ↓
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