自称「未来人」の彼女は、この時代を指して「戦前」と呼称した

第11話 未来の武器

　彼女の未来人としての可能性、、、、それを俺はまず否定したかった、、なぜなら俺は凡人なのだから。

　そんなアクションや冒険に満ちた人生を望んでいるわけではないし、この現状から、早く平凡な日常に戻りたくてたまらなかった。

　しかし、彼女の一言は、多分、それらを全否定するものだった。

「そうですね、このまま目的地に到達すれば、それは彼らに潜伏場所を知らせるようなものです。ですので、一度後ろの追っ手を振り切る必要があります。」

　ああ、、なんとなく予想はしていたが、これは激しいカーチェイスになると言うことか。

「ＧＦ、未来のＧＦから、貴方様にお預かりしてきた武器がございます。」

　おっと、未来からの武器とな！

　この流れは、もしや、何か世界を救う聖剣的な何かか、俺は世界を滅ぼす悪や化け物から、その聖剣によって、この世界を救うのか、救うのかあああ！

「こちらです。」

　、、、、彼女はそう言うと、黒く鈍く光る、金属の塊を差し出し、運転席と助手席の間にある小さなテーブルスペースにゴトリと音を立てて、それを置いた。

　、、、あー、、、ですよねー、、、なんとなく予想はしてたんだよな、これ。

　まあ、聖剣でなくとも、もうちょっと未来感のあるアイテムが良かった、、、これって今現在でもある、、拳銃ってやつだよな。

「ＧＦは拳銃の射撃経験はおありですか？」

「いや、拳銃はない。」

　あると思ってたんかい、１００年後ってそうなの？日常にあるの？拳銃。

　しかし、この拳銃、よく見ると随分使い込まれた感じがするな、表面もこうしてみると、だいぶ銀色になっている。

「それでは、使いやすい方を選んでください、この世界では、私達の側は勢力が少ないので、後方の敵を抑え込むことが困難です、雄介様、ご協力頂けますか？」

　一体、何のことを言っているんだ、ここは法治国家だぞ。

「君の申し出は、俺に銃器を使って敵と戦えと言うことか？ちょっと待ってくれ、ここは日本、今は２１世紀、わかる？銃撃戦なんて一般人はしないの！」

「後部にいくつかガンケースがあるのが解りますか？どれでも好きなものをお使いください、ライフルはご使用経験があるのですよね。」

　あー、聞いてないな、俺の話、もう銃撃戦が前提じゃん。

「あいにく、君たちが何者かはっきりしない内に、君に加担することは出来ない、それは理解できるな？」

　俺がそう言い切らない内に、後ろを走っていた車両数台が、まるでアクション映画のように助手席から身を乗り出し、拳銃でこちらを撃ってくるではないか。

「おいおい、だから、ここは日本で２１世紀で、、、」

　俺がそう叫ぶと同時に、数発の弾丸がこちらの車両に命中する音がした。

　そして、彼女を見ると、右肩口に銃弾が当たったような跡が見えた。

　俺は少し頭に血が上ってしまった、先ほどまでは、銃撃されたとしても、それはフェイクだと考えることも出来た。

　しかし、今、彼女が流している血は、恐らく本物だ。

　今回の一連の流れの中で、本物の血が流れたことは一度もない。

　、、、俺が考えていた、すべて作り話、という淡い希望は完全に消え失せ、彼女が未来人かどうかは置いておき、この現状から彼女を守らなければならないという、強い思いだけが俺を突き動かした。