第3話 「バタフライ効果」の秘密
「タイムトラベルに必要な要素を、この時代の人間は、認識する事が出来ません」
なるほど、そう牽制球を投げてきたか、わからないものの中の話なら、何でも言いたい放題と言う訳だ。
「いや、少なくとも、私には認識出来るはずなのだが」
これはだいぶ効いたようだった。
彼女は目を丸くして、かなり驚いた表情をこちらに向けてきた。
そんな彼女の表情を見ながら、俺は思った、
、、、かわいい。
「さすが、斉藤雄介様」
「いや、雄介で構わぬよ。」
「いえ、、、そんな、恐れ多い」
「私が構わぬと言っているのだ、そうしなさい。」
「、、、それでは、、、雄介様」
ああああー、なんだか凄くない、これ。
俺が口調を変えると、彼女ってこんなにしおらしく振る舞うの?
もしかして、彼女は、未来で俺の秘書だったりするのか?
彼女の口から俺の下の名前がああ、それも様付き!
、、、いくらか、お支払いした方がいいのか?
まあまあ良い感じのプレイだぞ、うん、詐欺にしてはクオリティー高い。
俺の淡い妄想は加速度を増している、その後のタイムトラベル理論が頭に入ってくるかが心配だ。
でも、そこは流石の彼女、しっかりとツボを押さえてる、やるな、不思議ちゃん。
「まず、不思議だと思いませんか?私がこの世界に来た事で、未来がどうして変化してしまわないか。」
うん、その通りだよね。
バタフライ効果って聞くよね。
彼女は本来、この時代のこの場所にいるはずがない、そうすると、これから俺の人生は、これをきっかけに、少しずつ変化してしまう。
明日の変化は微々たるものだ、でも一年後、十年後はどうだろう。
恐らく俺は仕事に就き、彼女と俺の間には可愛い子供たち、そうだな、もう2人くらいいるかな。
、、、そんな未来、彼女が未来からここに来なければ起こり得ない、そう、これがバタフライ効果だ。
、、、いや、少し違うか、まあいいや、
ようし、再びハッタリかますぞ。
「うむ、その通りだな、では、そのバタフライ効果の証明をしてみなさい」
ほらほら、言ってごらん、この辺から苦しいんじゃないかなー。
「はい、まず、私たちが今いるこの時空間は、先程まで雄介様がおられた時空間と既に同じではありません、別のものに置き換わっています。」
ほうほう、世界線ってやつだな、聞いたことがあるぞ、彼女が訪れたことで、それまでの世界線が分岐してしまうと言うアレだな。
ちょっとカマかけるか。
「では、その分岐した世界線の辻褄を、どうこの世界は合わせているのだね」
すると彼女は、少し不思議そうな顔をし、こう言った。
「、、はあ、世界線ですか?、私はあまり聞き慣れない言葉ですが、戦前では著名な考え方なのですか?タイムトラベル理論がメジャーになるのは、もう少し後と聞いていましたが」
アウチ、違ったか!
意外としっかりと設定組んでるんだな、単なる不思議ちゃんではないのか?
もしや、やはりそれ系の詐欺師なのか?
「うむ、世界線とは、その後のタイムトラベル理論に影響を与えるものとなるだろう。引き続き、タイムトラベルを証明して見せてごらん」
ごまかせたか?、うまくごまかせたか?
、、、しかし、彼女は、この詰んだ理論の話を、この後、どう展開してゆくのだろう。
それは、貧乏大学生の興味をくすぐるのに十分な内容であった。
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