昼下がりのアナタに届いた紙片

佐座 浪

書き連ねてあったのは

 突然ですが、ただの知り合いのアナタ。後悔、した事ありますか?


 例えば話題の新商品を食べてみたら、評判通りの味では無かったとか、気分を変えていつもと違う道を通ったら、道に迷ってしまったとか、そういう他愛のないものから、もっと真面目に勉強しておけば、夢に向かって突き進んでおけば、なんて重大なものまで。


 本当になんでもいいんです。ありますよね?


 もちろんそれを聞いて、何かしようという訳ではありません。そもそも、アナタがこれを手に取る頃には、したくとも出来ない身体になっている事でしょう。


 ちなみにですが、ワタシは後悔などした事がありません。元々、ワタシには消え失せるような希望も、自由もありはしませんでしたし、人に誇れるような思い出を何一つ作らなかった癖に、それをなんとも思わなかった人間ですから。


 でもまあ、アナタはきっとそうじゃない。泣いているのを見るたびに、そう思っていました。


 アナタ自身もよく言っていましたね。もう後悔なんてしたくない、もっと幸せになりたい、と。


 この際だから書いておきますが、ワタシはアナタがずっと憎らしかった。


 後悔出来るような人生を歩んで来たアナタが、自由があったアナタが、眩しくて、羨ましくて、仕方がなかったのです。


 それが身勝手だと言うのも、もちろん構いません。その通りですから。


 ただ一つだけ覚えておいて欲しいのは、アナタにはまだ、未来を掴めるチャンスがあるという事です。


 もうそれはそれはどうしようもない、やり直しなんて視野にも入れられない、薄っぺらい紙屑みたいな人生を送ってきた訳ではないのですから。


 ああ、それと。遅くなってしまいましたが、ワタシはずっと、アナタの事が好きでした。


 箸が転げるようなくだらない事でも一喜一憂して、フラれて泣いて、受かって泣いて、夢が破れてまた泣いて。そんな自由なアナタが。


 ワタシの人生に、『後悔』という名の華を添えてくれたアナタが。


 後悔をした事が無いなんて嘘です。アナタのおかげで、嘘になりました。


 アナタに好きだと言えなかった事、アナタのこれからを見れない事、そしてこんなものを送りつけてしまう事、全てが後悔です。


 さて、思い思いに色々と書いてしまいましたが、まともに言葉が綴れている内に、そろそろ筆を折ります。


 さようなら、なんて暗い言葉で締め括るのも不愉快ですから、最期にはこんな言葉を置いておきましょう。


 ——ワタシと出会ってくれて、ありがと! アナタなら幸せも夢も、絶対掴めるから!

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昼下がりのアナタに届いた紙片 佐座 浪 @saza-nami-0406

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