第5話 クラスメートに裏切られて
突然現れた骨の騎士たちに怯える一行。急いで勇が鑑定の魔法を使用し、そして絶句した。
【アルマサーヴァント】
種族〈魔物〉 性別〈男〉 総合レベル55 ジョブ〈黒騎士レベル50〉
「な、なんだよこいつ!?」
「バカな! この階層にこんなにも強い敵がいるなど聞いたことないぞ!」
勇の倍近いレベルの魔物に、今の一行が勝てるはずもない。それに、団長たちも知らない魔物ということで不安が伝播していく。
とにかく今最優先で考えるべきは撤退だ。戦闘になればまず間違いなく全滅する。その最悪の事態だけはなんとしても回避しなくてはならなかった。
が、骨の騎士は完全に勇たちを包囲していた。一点特化の攻撃となにか一つのきっかけがあれば包囲網を突破できるかもしれないが、失敗はそのまま死に繋がる。
騎士団長が勇たちの前に躍り出る。
「お前たちは退け! こんなところで勇者を死なせるわけにはいかん!」
「くっ! ……撤退するぞ! ゲルマン団長たちが命懸けで時間を稼いでくれているうちに!」
「いや待て勇。いい方法がある」
「邪魔者を一気に始末できる方法がね。だから、あたしたちの話を聞いてよ」
不気味な笑みを浮かべる二人の男女がなにやら勇に耳打ちしている。その提案を聞いた勇の顔にも、段々とおぞましい表情が浮かび上がってきた。
「よし、それでいこう。頼めるか?」
「おうよ! いくぜ! “コレクトヘイト”!」
周囲の敵の注意を惹き付けるタンクジョブの技。骨の騎士たちの視線がタンクの男子生徒に向けられた。
「お前たちなにを!?」
「団長あれ見て。あそこだけ地面が脆い。晃があいつら引っ張り回してあそこに誘導したら魔法で地面砕いて落とすから、あたしたちを信じて撤退してくれない?」
「そういうことなら、頼むぞ! 俺は後ろの連中を避難させる!」
「りょうかーい! 叶! あんたの力も貸してよね! 確か隠密があったでしょ? あれで死角から逃げようとする騎士を攻撃しなさい!」
「う、うん!」
珍しく名前を呼ばれて、戸惑いながらも叶は走る。初めて仲間として認めてくれたのかも淡い期待も抱いた。
言われた通り隠密のスキルを発動させようとする。その時、叶の脇腹を衝撃が襲った。
「……え?」
「ごめんね~。みんなのためにここで死ね」
見ると女子生徒が剣で叶のことを刺していた。銀の刀身が赤い血で染色される。
口の端から血を垂らしながら、震える声で尋ねる。
「どうして……」
「当たり前じゃん。役立たずなんて見ててウザいの」
「――足手まといはいらない。さっさと死ね」
勇までもがそう言った。剣が引き抜かれて女子が叶を蹴り飛ばす。
後方の状況を確認したタンクの男子が飛び下がった。盾から一筋の光が飛び出し叶の体を照らす。
「譲渡。“コレクトヘイト”」
魔物たちの注意を叶に押しつけた。骨の騎士たちが動きを止め、叶をジッと睨むとじりじりにじり寄ってくる。
刺された脇腹が痛くて動くことができない。だが、このままだと確実に殺されてしまう。
勇たちは叶が死ぬところを見たいわけではない。叶を囮に逃げたいだけなのでさっさと逃走を始める。
「じゃあな!」
「時間稼ぎよろしく~」
「囮くらいならできるだろ」
冷たい言葉を残してさっさと逃げていった。叶うの顔に絶望が宿る。
骨の騎士が剣を振り上げた。殺される直前になって叶が力を振り絞る。
「これで……落ちろ!!」
自分が倒れている所がもろい地面だということに気がついて地面を破壊しようとする。こればかりは真実だと信じながら攻撃を打ち込んだ。
叶の攻撃は地面を破壊する。勢いよくひび割れが広がり、完全に地面が崩落した。骨の騎士たちと叶が落ちていく。
ただ、叶の予想外が一つある。
それは、下の階層がちょうど深い崖になっていたということ。叶と骨の騎士たちは漆黒の奈落へと吸い込まれていき、やがて完全に見えなくなってしまった。
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