第4話 ダンジョンに潜る
召喚からさらに一月が経過した。今、叶たちはダンジョンと呼ばれる場所の入り口前に集合していた。
ダンジョンとは、この世界にある謎の場所のことだ。いつ、どのように誰が作ったのかは不明だが、どのダンジョンも決まって魔物や危険なトラップが設置されている。だが、財宝や貴重な素材を手に入れることができるので、一攫千金や腕試しをしたい者たちがこぞってダンジョン踏破を目指しているのだ。
そして、叶たちがいるのがアビスと呼ばれるダンジョン。別世界の邪神に由来する神殿が封じられているという噂があるこのアビスは、どこまで続くか分からない広大な地下構造型のダンジョンで、地下に行くごとに魔物の強さも上がる。そのため、自分の限界を調べるためにもいいダンジョンなのだ。ちなみに、過去一番深く潜った公式記録は地下七十八階層らしい。
選抜された十数人の生徒たちに、騎士団長が挨拶をする。なお、今回のダンジョン潜入は実戦訓練で、万が一に備え王国の騎士団が同行していた。
「皆聞け! これからお前たちに技能の幹を渡す! それに触れると鑑定の魔法を使えるようになるから、ダンジョン内で参考にするといい!」
「ゲルマン団長! 鑑定の魔法って?」
「よく聞いてくれたショウタ! 鑑定の魔法は、対象の特徴やレベルなどを知ることができる魔法だ! レベルは強さの目安だから、戦闘は無理のない相手と行うように!」
騎士から小さい木のようなものを渡される。その木に触れると叶の体に痺れたような感覚が走った。これが魔法を習得するという事だろう。
試しに勇に対して鑑定の魔法を使ってみることにした。
【金剛 勇】
種族〈人間〉 性別〈男〉 総合レベル25 ジョブ〈聖騎士レベル18・勇者レベル13〉
初日に見た値よりも格段に強くなっている勇に驚き、そして怖くなる。もし勇になにかされたら命の危険もあるだろう。
ちなみに、叶の総合レベルは現在7である。クラスで一番低い数値だった。
「では行くぞ! 気を抜くと死ぬから気をつけろ!」
団長の合図と共に、騎士たちがアビスに通じる扉を開いた。
◆◆◆◆◆
奇声を発しながら襲ってくる蜘蛛型の魔物を勇が一太刀で切り伏せる。教会が保管していた聖剣の力も凄まじいが、なにより勇の実力がなせる技だった。
現在アビスの地下十階層。平均すると総合レベル12程度の魔物が跋扈する階層だった。だが、その程度のレベルなど今の一行の敵ではない。……叶を除いて、という注釈はつくが。
勇と騎士団長を先頭にアビスを進んでいく。薄暗くヒンヤリとするダンジョンは不気味だった。
「てかさぁ。どうしてあんた付いてきたの? 邪魔なんだけど」
「こら。アズサはそんなことを言うんじゃない。カナウの成長も今回の目的なんだからな」
「はいはーい。……こんな無能役に立たないだろ」
「いっそ暗殺者から娼婦にでも転職したらいいのに」
団長には聞こえない声量で後ろ辺りにいた何人かが叶を弄る。と、その時叶をよくいじめていた武闘家の女子――
「んー! んーっ!」
「カナウ!?」
「お前ふざけるなよ。行軍の邪魔するなよ無能」
叶を心配する団長と苛立つ勇。叶は必死に魔物を振り払おうとしていた。とりあえず鑑定を使う。
【緑硬スライム】
種族〈魔物〉 性別〈なし〉 総合レベル9 ジョブ〈捕食者レベル9〉
叶を除けば雑魚の魔物。しかし、スライムよりもレベルが低く、息が詰まっている叶にどうする力もない。
スライムの捕食は非常にゆっくりだ。だが、すでに叶は服を食べられ下着姿にされていた。
「お前たち! 仲間のピンチなのに早く助けないか!?」
「チッ。……“光刃”」
勇が放つ一撃はスライムを切り裂き飛散させた。が、叶ごと攻撃したので叶にも目立つ切り傷ができてしまっていた。
「ぎゃはははは! 痴女かよ。もう下着も脱いじゃえば? そうすりゃ魔物が寄ってきたりして」
「こらジュン! あと、イサムもなぜあんな危ない技を? 下手するとカナウは死んでいたぞ!」
「でも、助けたからいいでしょう」
叶を殺しかけたことに反省の素振りも見せない。聖が叶を介抱するが、勇は無視して先を進み始めた。その姿にあきれながら団長も進む。
そして、しばらく歩いた頃に事件は起こった。
梓が何かを見つけ、鑑定の魔法を使う。
【ブルークリスタル】
青く美しい自然が精製する宝石。非常に希少な鉱物からできている。
「やった! 宝石綺麗!」
梓が壁面の宝石へと手を伸ばす。そして宝石を掴んだまではいいのだが、宝石は不自然に壁にめり込んだ。同時にカチッという音も聞こえる。
「……カチ?」
「おい梓……おまえまさかトラップ作動させたのか!?」
勇が驚きの声を発すると、周囲に複数の魔物たちが現れる。骨の騎士みたいな魔物は、叶たちを取り囲むと真っ赤な目を光らせて威嚇してきた。
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