第2話 ある日の夜
金曜の夜、夕飯を済ませた俺達は並んでソファーに座り、テレビを見ていた。
適当にザッピングした果てに行き着いた番組だから名前は忘れたけど、内容は若い女の子に流行っているもの特集みたいなそんな感じだった。
悠太はそれに、「おぉ」とか「え、ほんとに?」とか言いながらテレビに釘付けになっていた。
正直、俺は興味がなくて。
明日の夕飯何作ろうかな。何か無くなりそうなものはあったっけ。
そんな取り留めのないことを考えながら、テレビの音と悠太の声をBGMにスマホを弄っていた。
そんな状態でいると、悠太から声がかかった。
「翔平、ねぇ、テレビ!」
その声に従い、スマホからテレビに目線をやると、人の顔ほどの大きさの黄金色の物体を笑顔で齧る女の子が映っていた。
「…は?」
その物体の入っている袋には炸鶏排と書いてある。
なんて読むのか分からないが、多分きっとあの物体の名前なんだろう。
「何あれ」
思わず悠太に尋ねる。
「ザージーパイ?だって。台湾の唐揚げらしいよ」
今流行ってるんだって。
悠太はテレビの方を向いたまま答える。その横顔はキラキラと輝き、そのザージーパイとやらに惹かれているのは一目瞭然だった。
「……」
手に持っていたスマホでレシピを調べる。
ザージーパイと一緒にダージーパイとやらも出てくる。同じ物なんだろうか。
いまいち違いがよく分からない。
とりあえず、いくつかレシピを開いては閉じ、開いては閉じ、調味料をそんなに買い足さなくても良さそうなレシピを探す。
五香粉なるスパイスが本来は必要らしいが、カレー粉やシナモンパウダーでも代用できるらしい。
カレー粉なら家にあるし、作れるか?
いや、でも、そもそもこの量食べれるのか?
俺も悠太もそんな大食いってわけじゃないし。
でも、工程自体はそんな難しくなさそうだし、折角の機会を潰すのも。
「翔平?」
逡巡していると、番組が終わったらしく、暇になった悠太が顔を覗き込んできた。
暫く見つめ合ったあと、悠太に問う。
「…腹減ってる?」
「…お爺さん、さっきご飯食べたでしょう?」
呆れたように、ヤレヤレと肩をすくめて首を横に振る悠太の頭に拳骨を落とす。
痛がりながらギャンギャンと喚く姿を横目に見ながら、買い物リストに鶏むね肉と白玉粉を追加した。
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