Act.9
「こいつぁ当たりだな」
「お嬢ちゃん、一人じゃあぶねえぜ?」
「まあもう遅いがな!」
「「ぎゃははは!」」
異世界お約束の盗賊ですね、分かります。
数は10人くらいか? 思ったよりは多くはない。さて、どうしたものか……相変わらず気持ち悪い視線で見てくる。
そんな邪な目でアリスを見るんじゃねえ! と言ったやりたい。
「大人しくすれば優しくしてやるぜ?」
「こいつを付けて貰うがな」
「上玉だし、かなり高く売れるだろうな」
ジャラっと音を立てて盗賊たちが取り出したのは、黒光りする輪っか。そこから少々長めの鎖が伸びている。
うん、首輪だね。ペットとかに付ける物ではなく、明らかに人用のやつ。何だろ、隷属の首輪とか服従の首輪とかそんな名前なのかな。要するに奴隷にする為の首輪だろうと推測する。分からんけど。
そんな呑気なことを考えていると、盗賊たちはわたしを方位した状態で徐々に距離を詰めてくる。
「あまり面倒なのはゴメンなんだけどなあ……取り敢えず、寝といて<スリープ>」
「!?」
闇属性魔法のスリープ。名前の通り対象を眠らせる妨害魔法だ。効果は覿面みたいで、一瞬にして囲っていた盗賊たちはその場に倒れる。
実はこのスリープもイメージで使えた魔法なんだよね。ほら、わたしには魔法についての知識がない。魔法のない世界の地球に居たんだから当たり前だ。
イメージの参考にしたのはやっぱり良くあるファンタジーもののライトノベルとか、後はわたしの個人的な想像である。
「起きてる人は……居ないかな。さて、ポステルに向かおっと」
適当に誰から処理してくれるだろうし、わたしが何かする必要はないかな。街に連れてくのも考えたけど、流石にわたし一人じゃ厳しいし、放っておこう。
こういうのってやっぱり、街とかに連れてけば報奨金とか出るのかな? 面倒な事になるのも嫌なので、やっぱり無視するけど。
「さてと、先は長いぞー」
結局、わたしが眠らせた盗賊たちは一箇所に集めておくだけにして、後はその場に放置して道を進む事にした。
歩いて3日もかかる訳で、あまり時間を無駄にしたくないって言うのが本音だが。ああいう輩が出るって事はやっぱり地球ではないのは確かか、まあ今更だけど。
わたしが立ち去ったその後、偶々通りかかった冒険者パーティに発見され、一悶着あったのだが、そんな事をわたしが知る由もなかった。
□□□□□□□□□□
ポステルに向けて出発して一日目が終わりかけていた。
すっかり日は沈み、空には月が浮かび、満天の星空が広がっている。地球よりも多い……気がするけど、どうだろうか。
天の川みたいなやつもあれば、三角形に出来そうな出来無さそうな、そんな星もチラホラあった。中にはオリオン座みたいな星座もあった。
「<転移>」
これ以上は今日は進まないという事で、わたしは転移魔法でログハウスへ帰宅する。夜が明けたら途中からスタートするつもりだ。
「……そう言えば」
今思い出したのだが、冒険者登録証に何かスキルっていう項目があったよね? ストレージにしまってある登録証を取り出して見てみる。
――――――――――――
□名前:アリス□
□性別:女性□
□冒険者ランク:F□
□スキル関連□
■創造魔法■
■光魔法■
■闇魔法■
■無限魔力■
■魔力譲渡■
■空間魔法■
■時間魔法■
■結界魔法■
■異常完全無効■
■-.-.-■
――――――――――――
サラさんの説明では、このスキル欄というのは他者には見えないと言っていた。どういう仕様なのか凄い気になる。科学の代わりに魔法が進歩した世界、何だとは思う。
で、気になったと言うか、スルーしてたけどこのスキル欄ってかなり重要なのではないだろうか。
わたしはあの白い空間で、能力の記入画面に色々と書いたのは良いけど全部は流石に覚えてない。それが今これで分かるのではないだろうか。
登録証に記入されたスキルは全部で9個だけど、思ったより少なかった。もっと、こういっぱいあるのかと思ってたよ。
創造魔法はもう知っての通りだし、光魔法と闇魔法だってわたしが選んだので合っている。無限魔力も空間魔法も時間魔法も、か。
ただ見慣れないスキルがあってそれが魔力譲渡と結界魔法、そして異常完全無効の3つだ。なるほど、他にもやっぱりあったっぽいな。
異常完全無効は何となく分かる。毒とかそんなは効かない方が良いって事で書いたような気がしないでもない。
結界魔法はまあ多分、守りも欲しいってことで書いたんだろうな。
で、3つ目の魔力譲渡っていうのはちょっと分からない。名前からして他者に自身の魔力を渡せるとかそんなのだとは思うけど、どういう理由で取ったんだろ。
んー? 魔力を渡してピンチな人を助けるため、とか? 確かにそ言うのも嫌いじゃないね。大方そんな理由で合ってるような気もする。
……まあ良いか。
自分のスキルっていうのが分かったのは結構な進展じゃないかな。ただ、そのスキルの詳しい所までは分からないけども。
名前で何となくイメージは付くから、使えそうな気はする。
ここまでちょっとスルーしてたけど、スキルの一番下に変なのがあるんだよね。なにこれ、文字化けか何か? これ組合の時あったけ? 無かった気もする。
非常に怖いんだけど……文字化けしてるせいで何なのかイメージも何も出来ない。文字化け自体がスキルって訳じゃないよね流石に……。
文字化けとかかっこいいじゃん? とかいってわたしが書いたやつだったら恥ずかしすぎて死ぬわ! というか、そこまで厨ニではない……はず。
文字化けしている以上、現段階で考えられる事は無さそうかな。文字化けについては今は一時保留で。
「結界魔法は結界……某作品の○Tフィールドとかイメージすれば行けるのかな?」
結界ってことはやっぱり、バリアとかそんなのしかイメージが浮かばないよね。というか守りが欲しいってことで書いたんだと思うし、そういう物だろう。
結界魔法を使ってみたという事でわたしは試すことにする。守るための物だし、多分周りに被害は及ばないはず。でもやっぱり怖いので外(夜だけど)で試すことに。
「<バリア>」
自分の周りをバリアが囲ってるようなそんなイメージで魔法を使ってみる。魔力が抜けていく感覚もあったので魔法は発動したはず。
自分の周りをちょっと見てみる。薄っすらとではあるけど、わたしの周りには膜のようなものがあって、これがバリアだと直感的に思う。
「ふむ……一応張れたのかな? 実際攻撃とかがないと分からないけど」
だからといってわざと攻撃を受ける気はない。油断したら死ぬような世界だろうし。取り敢えず結界は張れたということで、自分の部屋(屋根裏部屋)に戻る事にした。
「10時、か」
変わったことと言えばもう一つ。時計を作ったことだ。組合内に行った時、時計を見つけたのでその時に創造魔法でね。組合にあった時計を参考に同じ物を作った次第。
結構遅くなったけど、御飯とお風呂を済まし、いつものように着替えた所でベッドの中にインする。時計の針は11時過ぎを回っている。
地球では午前1時前後に良く寝てた気がする。朝起きのは午前6時位。わたしは最低5時間の睡眠がないと辛いしな。
それを考えると、この時間は早いんだけど、身体が変わった影響なのか睡魔が襲って来てるので多分無理。
今まで寝てた時間もこの辺なのかな? 今日までは時計無かったし。
「ま、良いか。おやすみなさい」
そこまで睡魔が迫ってきていたからか、目を瞑ったらあっという間にわたしは夢の世界に旅立ったのだった。
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