第2話
「ふあぁぁ」とあくびをしながら誰よりも朝早く俺ことケイヤ・リューレンは畑に向かう。
この世界には天職という物がある。いわゆる才能ってやつだ。天職には色々なものがあるが大きく分けると5つに分類される。
ケイヤがもつ天職は天職を鑑定する"石板に"表示された「廃帝・草植人種」数ある天職の中でも最低ランクの廃帝天職のうちの一つ。草植人種。
出来ることといえばふつう通常天職・農業師の手伝いくらいだ。そして農業師・草植人師は簡単に言えば農家だ。
「なんで俺だけ草植人種なんだろ」
ケイヤは悪態吐きながらも自分に任された畑を耕し始める。自分含めて4人いる兄弟の中でケイヤは次男だが兄弟は皆農業師で、1人を除いて兄弟にはいつも無能だと言われている。
作業を始めてしばらく時間が経ったあと兄弟が畑に来た。奴ら俺の姿を確認した途端いつも何か言ってくる。
「おい無能。ちゃんとやってんのか?」
「兄さんは仕事が遅いからなー」
「うるせーな。お前らも早くやれよ」
これは決してスキンシップなどではない。ただただ煽り煽られてるだけだ。
四男だけが「今日も早いね」と慰めてくれる。情けないが意外とこの慰めは心に染みて楽になるということはケイヤだけの秘密だった。
「今日も、頑張ろ」
俺は四男と話しながら作業の続きを始めた。そしてここで見えてくるのは天職の差だ。
ケイヤは朝早くから作業をしているのに兄弟はすぐに追いついてくる。結局は才能なんだ。努力が頼りってのは辛いと思いながら作業を続けて昼頃には全員大体終わった。
「時間ばっかり食ってホント残念な奴」
「相変わらずの遅さだね。兄さん」
「そのうち兄さんの天職もランクが上がって早くなるよ」
と煽られ慰められ複雑だが、本当のことを言われているのでぐうの音も出ない。悔しいがしょうがないのだ。
***
そうして過ごし11歳を超えてから数ヶ月経ったある日。俺は自分の担当してる畑にいつものように朝早く向かったら、そこにはゴブリン種の中でも下位のコブゴブリンがいた。
俺はコブゴブリンかどうかを確認したら急いで近くの木の影に隠れて様子を見る。コブゴブリンは魔物呼ばれる凶悪な生き物の中でも最弱だけど、草植人師の俺では武器もなく、倒すことは不可能だった。
「どうしよう……誰か呼ぶか……」
本来こんなに朝早いし1人で倒すべきなのだろう。けど俺には倒す手段がない。せめて剣さえ有れば、不意打ちで倒せるかもしれないけど。俺は思わずにはいられなかった。
とりあえず「剣よ出でこい!とか言ったら出てきたりして……」なんて呟いてみた。
ハァ、俺は何を言ってるんだろう、とケイヤは思わずにはいられなかった。そんな時急に右手辺りが光り始めた。何事かと思って見てみると右手が木剣を握っていた。
「え!え……え?」
俺は意味不明な言葉を呟きながらひっくり返った。だって草植人師の俺が剣を作り出せるわけがない。
「盾よ出ろ?」
ダメもとで願ってみた。すると木の盾がもう片方の手の方に出た。
「俺にこんな才能があったなんて……」
生まれて1番驚いた。味わったことのない高揚感に身を包めながら俺は走り出した。
「うぉぉおおらぁぁ!くそゴブリンかかってこいやぁぁ!」
そして半ばヤケクソになりながらゴブリンに襲いかかった。
「ギャギャギャ」
「おらぁぁ」
俺は不意打ちを喰らって混乱したゴブリンの脳天目掛けて自作の剣を振り下ろした。「ギャアァァァ」
俺は震える手で血に染まった木剣を持ちながらゴブリンの死骸を見下ろす
「俺だけで魔物を倒した……」胸がなんとも言えない興奮と高揚感でで押し潰されそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます