第十三話 最強騎士の剣技
〜箱人、技紹介のコーナー 〜
●鴉羽光太 箱:黒い闘気を纏う刀
『〜
両手に纏った黒い闘気を空中に送り、自分を中心にドーム状の壁を作り出す防御技。外から見ると黒い亀の甲羅に見える。黒人形など他のものに闘気を割いていると、甲羅の大きさは小さくなり、さらに強度も下がる。
『
黒い闘気を蝶の形に変化させる技。黒人形が陽動と移動用ならば、黒鳳蝶は妨害に使える。主な妨害は相手の周辺に飛ばし、視界を奪ったり、相手にまとわりつかせ、行動を阻害する等である。蝶同士の空間を繋げる事も可能であるが、当然サイズ的に体を移動させる事は出来ない。多くの蝶をコントロールする場合は、意識をそちらに向けないといけない為、移動が困難になってしまう弱点がある。
●藤崎茜 箱:注射器型クナイ
『パラライズショット』
相手に痺れ薬を打ち込む技。痺れさせる時間は相手の大きさ等で変わってくる。カマキリの箱憑きは6秒間動きを鈍らせる事に成功した。注射器に調合するのに1分近く時間がかかる為、連続して打ち込む事は出来ない。
●八雲一真 箱:カウント付きのグローブ
『オーラスマッシュ』
拳に赤いオーラを纏い殴りつける技。殴った瞬間に強い衝撃が生まれ、相手に強烈な一撃を与える、非常にシンプルな技である。
『インフィニティ・ゼロ』
能力を無力化させ、打ち消す技。その能力の形体や物質は関係なく、白いオーラを纏う左手でその能力に触れさえすれば発動出来る。この攻撃には左手のカウントを使う。打ち消した能力の強さに応じて、カウントの減り幅は異なる。100あるカウントが0になると箱が強制解除され、24時間経過するまで武器を使うことが出来なくなる。強力な能力である反面、リスクが伴う技である。
本編
神堂は鞘から刀を抜き、素早く鴉羽達の足下に線を引いた。
「その線を決して超えないように。まだ死にたくなければね」
「分かってますって」
神堂が忠告するや否や、藤崎は頷き、鴉羽と八雲を引っ張って線から更に後ろに下がった。
「それにしても何であいつは生きてるんだよ!」
八雲が取り乱す。それもそのはず、八雲はカマキリを殴り倒した後、息の根が完全に止まっている事を確認していた。
(恐らくはカマキリの体から出てきた針のようなものが原因だろう。確かあれは……)
「ハリガネムシ… カマキリを宿主とし、時にその体を乗っ取ってコントロールする恐ろしい寄生虫だよ。まさか一緒に箱憑き化しているとはね」
神堂が飛んでくる鎌を軽く避けながら説明する。
既に死んだカマキリの体を操る事が出来るのは、ハリガネムシの箱憑きとしての力だろう。
カマキリは神堂に向けて、鎌を連続で振り下ろす。神堂は刀を抜き、連続攻撃を軽くいなした。その後の鎌の猛攻撃も神堂には擦りすらしない。
(凄い…俺たちが掻い潜れなかった攻撃をいとも簡単に……)
鴉羽は神堂の見事な身のこなしに思わず目を奪われる。
痺れを切らしたカマキリは攻撃の当たらない神堂を無視し、先に疲労した3人の方を狙った。鴉羽達に巨大な鎌が飛んでくる。
鴉羽は咄嗟に両手に黒い闘気を纏う。何とか技を使おうとした瞬間、鴉羽達を襲った鎌がバラバラに切り刻まれたのだった。
カマキリは驚き、神堂の方を見る。しかし、神堂は鞘に刀を収めたまま抜いてすらいない。
「言った筈だ。死にたくなければ、その線を超えないようにと」
神堂はカマキリに対して冷たく言った。確かに、鴉羽達を襲った鎌は神堂が引いた線を超えた瞬間にバラバラに切れた。
カマキリは切られた怒りをぶつけるかの如く、神堂にもう一つの鎌を振り下ろした。神堂は真上から降ってくる鎌に刀を合わせて打ち払った。衝撃で鎌は腕から外れ、上空へ飛ぶ。カマキリが無防備になったところに神堂が刀を振るう。
『
神堂は一太刀でカマキリの首、右足、お腹と別々の三箇所を同時に切った。首は半分切り裂かれ、右足は切り落とされ、お腹は大きく抉れた。抉れた腹からハリガネムシの体が少し露わになる。
「それ以上動かない方がいい。死にたくなければね」
再び神堂が忠告した。しかし、カマキリは怒りのまま、空中から戻した鎌を神堂に振り下ろした。
その瞬間、カマキリの首と鎌が真っ二つになり、地面に落ちた。神堂はまたもや刀を振っていなかった。神堂の得体の知れない技に、お腹と足だけになったカマキリは思わず後ずさる。しかし、後ずさりした瞬間、お腹が更に大きく抉れたのだった。
動く度に体が勝手に切れる状況に、カマキリは微動だに出来なくなってしまった。
「どういう事だよ!動いただけで体がバラバラになっちまうなんて」
目の前で起きている事の不可解さに八雲が動揺する。
「これが先生の技よ……」
そう言って藤崎は先程、神堂が線を引いた場所を指差した。
「よく目を凝らしてみて」
鴉羽と八雲は言われた通りその場所を注視した。よく見ると、透明なガラスのような、キラッと光るものが微かに見えた。
「それは斬撃よ」
これが鴉羽達に飛んできた鎌をバラバラにした正体だった。神堂がその線を超えるなと言った理由が分かった。
「『
連牙で切った3箇所も『止まる斬撃』となっていた。
その斬撃が不用意に動いたカマキリの首と鎌を落とし、腹を更に抉ったのだった。
既にカマキリの体はお腹と3本の足しか残っていないが、ハリガネムシは未だその中に息を潜めている。
「さて、そろそろ中から出てきて貰おうか」
『
神堂は空中に灰色の鋭い斬撃を飛ばした。飛ばした斬撃は空中で突然弾ける。そこには首を切った『止まる斬撃』があった。飛ばした斬撃をわざと『止まる斬撃』に当て細かく切り、弾けさせたのだった。
『
『止まる斬撃』によって細かく切られた灰色の斬撃が雨のようにカマキリの背中に降り注いだ。カマキリの体はズタズタに切り裂かれ、跡形もなくなった。
その場に残ったのは、体の至る所が欠けたハリガネムシだけだった。宿主を失い、ボロボロにされたハリガネムシは、体を震え上がらせ、その場から一目散に逃げ出した。
神堂は逃げていくハリガネムシを真っ直ぐに捉え、刀を鞘に戻した。そしてふーっと息を吐いた瞬間、足場が大きくひび割れ、神堂の姿が消えた。
『
それは高速で相手に飛び、放たれた居合い斬りだった。気づいた時にはハリガネムシの体は真っ二つになっていた。切れた2つの体が地面に倒れ、やがて動かなくなった。
「これで箱憑き討伐任務完了だな」
呆然としている3人に向かって、神堂は平然と言ってみせたのであった。
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