第十話 新たな仲間

〜箱人、技紹介のコーナー 〜


●天城陽介 箱:伸縮自在な黄金の両刃槍


双蛇そうじゃ刃刃はじん

 槍を背中に回してコの字に折り曲げることで、両刃を前に持ってきて、相手目掛けて勢いよく伸ばし貫く技。勢いをつけている為、基本は真っ直ぐに伸びていくが、多少で有れば途中で向きを変更したり、コントロールも可能である。射程も長く威力も高いシンプルな技である。



双蛇そうじゃ睨牢げいろう

 両方の槍先を蛇のように這わせ相手を絡み取り、拘束する技。スピードは速くないが、槍先でなく、伸びた事で地面に垂れた柄に触れても、そこから一瞬で槍が縮まり、ぐるぐる巻きに拘束される。殺傷能力はないが、正に蛇に睨まれたカエルの如く、相手を動けなくし、無力化させる技である。鴉羽との手合わせでは、自身に使用し、自分を槍でぐるぐる巻きにする事で槍の鎧を作り、防御に使うという変則的な使い方をした。



本編

 

 自警団員がしばらく待っていると、奥のエレベーターの扉が開いた。

 中から渋い顔立ちで只者ではない雰囲気を持った中年男性と坊主頭でやんちゃそうな少年が出てきた。中年男性の方は鴉羽にこの学校を薦めてくれた神堂先生そのものだった。


 「お帰りなさい、神堂先生!その…彼は?」


 天城が尋ねた。


 「ああ、彼は1週間前に箱人に覚醒したこの学校の生徒だ。彼の希望もあり、この自警団で共に戦ってくれることになった」


 「押忍!俺は八雲一真やぐもかずまと言います!先輩方これから宜しくっす!」


 八雲と名乗る人物が元気よく答える。彼は15歳で鴉羽や星乃の2つ下のクラスの生徒だった。それぞれが八雲に対して自己紹介を行う中、神堂はトレーニングルームとは別のもう一つの部屋である会議室に鴉羽を呼んだ。


 「お久しぶりです、神堂先生。先生のお陰で無事この学校に入ることが出来ました。本当に有難うございます」


 「久しぶりだね。君とこうして再び会えた事を嬉しく思うよ。色々と大変な目にあったみたいだがね」


 神堂は星乃からの連絡で昨日のあらましを大体把握していたようだ。鴉羽はこれまでの事を神堂に話した。


 「成程…箱憑きを1人で倒した事もそうだが、あの天城に勝つとはね…」


 「天城先輩には手加減をされていたような気もしますが…」


 「そう謙遜することはない。流石、私が見込んだ通りだった」


 「え?」


 「実を言うと私の能力で君が箱人なのは知っていね。いずれこの自警団に誘うつもりだったのだが、まさか君の方から来てくれるとはね」


 「そうだったんですか…!でしたら俺は…」


 「是非とも歓迎するよ。私達にどうか力を貸して欲しい」


 鴉羽は無事、神堂から神堂自警団に入団する許可を得たのだった。


 「登録の手続き諸々は私の方でやっておこう。それらを済ませたら後に自警団を示す身分証を君に渡せるようになるだろう」


 「有難うございます。宜しくお願いします」


 鴉羽は神堂に感謝し、2人は会議室から出て、皆の所に戻ったのだった。


 「神堂先生! その鴉羽くんは…?」


 「ああ、彼にも自警団で共に戦って貰う事になった」


 その言葉に星乃が嬉しそうに鴉羽を見つめた。


 「だがー」


 鴉羽に駆け寄り、話しかけようとした星乃を神堂の言葉が遮った。


 「今日から仲間になった2人にはテストを受けて貰う。内容は帝国から依頼されたある箱憑きの討伐だ!」


 「私達の時はそんなテストは無かった気が……」


 藤崎は自分が入団した時の事を思い出して神堂にツッコミを入れた。


 「私達のやっている事は決して遊びではない。命懸けの戦いだ。戦う事で誰かの命を救う事が出来るかもしれない。しかし、誰かの命が失われる事も当然ある。鴉羽は既に箱憑きとの戦闘経験はあるが、改めてこの自警団でやっていく覚悟を知りたい」


 新堂の真剣な言葉に天城、藤崎、牛嶋、そして星乃の4人の表情が強ばる。恐らく星乃優美の事を思い出しているのだろう。

 

 (さっき話した時は歓迎ムードだったが……)


 鴉羽は先程とは打って変わり警告する神堂を見た。その表情は冷たく、2人を試しているように見えた。


 (だが俺の気持ちは変わらない)


 「神堂先生。そのテスト是非受けさせて下さい!」


 「俺もテスト受けます!」


 鴉羽が力強く言い、八雲もそれに続いた。


 「分かった… では明日の10時に再びここに集合して貰おう。ミーティング後、君達には今回のターゲットである "カマキリの箱憑き" を討伐して貰う」


 神堂が2人にテストの概要を伝えたところで、今日の集会は終わりを迎えた。自警団員は皆、寮生だったようで、全員で寮に帰った。

 

 (カマキリの箱憑きか… …)


 鴉羽は明日の戦いに意識を集中させ、食事や風呂をとっとと済ませて、早めの就寝をするのだった。

 

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