第一話 二人の邂逅

 ここは私立幻想学園。国内有数の名門校にして、日本国内においては珍しく、実力主義を標榜している。代表的なものを挙げれば、生徒会の権限だ。この学園では初等部から高等部に至るまで、生徒会の権限が強い。(幼等部から大学院まである。)普通、生徒会の権限はせいぜい学校への提案程度だ。でもこの学園では「各部が傾きかける程度までの自治」が生徒会の権限として認められている。そのため、生徒会を務めた者は皆、概ね高い評価を得ている。ちなみに生徒会が失策した場合、学園が丸く治めることで学園と教師陣の世間的評価を上げている。

 そんな学園に、高等部えと移る者と門をくぐる者がいた。

 前者の名は一瀬いちのせ和紀かずき。内部受験者だ。幻想学園高等部受験者の大半を占める内部受験者達を抑え、見事内部合格者一位となった天才である。彼は今、外部受験者達のトップはどんな奴なのか、それを拝みに来ていた。

(さて、どんな奴かな?)

 噂では自分と良い勝負だったらしい。だがこの学園では内部生と外部生、入試の内容こそ同じだが順位は分かれている。なんでも過去に初日からいじめがあったらしい。それ以来分かられ、尚且つ点数の公表はしない、ということになった。だから和紀も自分の点数を知らない。知っているのは順位だけだ。だが自分と総合首位を争ったという噂が流れているのだ。それだけで興味を引くには十分と言える。

(さあ、早く来い!)

 そう思いながら和紀は門前で立っているのだった。

◆◇◆◇

 さて、遅くなったが紹介しよう。後者の名は月夜蒼空(つきのよそら)、外部受験者だ。ごく一般的な中学に通っていたが、見事難関と謳われる入試を首席で乗り換え、この春この学園に入学することとなった。

(桜が多いな。)

 そう、この学園は桜の木が他校と比べて多く、桜の並木道が形成されている。淡いピンクの花弁が無数に舞い散る。その光景はどこか幻想的で、思わず立ち止まり見入ってしまう程だ。事実何人かの生徒が立ち止まる中、大半の生徒は一目散に門をくぐる。・・・おそらく内部受験者。毎年見るので慣れているのだ。彼等は自分たちが必死に勉強し、その末でくぐることを許された門を我先にと通っていく。

 そんな中で蒼空は、一人の生徒を見つけた。その生徒は桜に見入るわけでもなく、学園に入るわけでもなく、ただ門前に立っていた。その身に男性用制服を纏い手には鞄、何よりその目には自信と大きな光が宿っている。

(生徒会役員か?)

 そう思った蒼空だったがすぐにその考えを改める。かれの左胸に輝く名札は黄色。蒼空と同じ。つまり一年生だ。彼はしばらく辺りを見ていたが一瞬、蒼空と目が合うとすぐに門へと入っていった。

(何だったんだろう?)

 そう思いながら、彼の後に続く様に蒼空は門をくぐるのであった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

あとがき

 どうも、初めましての方は初めまして。そうじゃない方はありがとうございます、琴葉刹那です。お読みくださってありがとうございます。さて今回は「邂逅」主人公二人の出逢いです。二話は和紀の感想(めちゃ短い。)になります。どうか次回もよろしくお願いします。

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