第3-1話 図書室の奥ー①
高校生になった放課後は中学生の放課後とは一線を画す。具体的に言うと行動範囲が拡大され、門限が緩和されることで自由度が増し選択肢が増える。学校によってはアルバイトも解禁されるため、金銭的な余裕ができるのも大きい。
しかし当校はアルバイトを許可制にしており、原則として一年生は不可となっている。できたらするのかと聞かれると悩ましいが、選択肢には入ると思う。使用用途を聞かれると、それもやはり即答できないが。
つまり、放課後に三人で集まった場所は本当にどこにでもあるファストフード店で、理由はやはり財布事情に他ならない。特にメガネは出費が著しく、食費を削る傾向があるため安く済むならそれに越したことはない。こちらも余裕があるわけではないので、いつも似たような結論に落ち着く。
「まあ! これがはんばーがーですの!? 初めてですわ!」
「おお! 月代はハンバーガーを食べたことがないのか! それはだな、箸を使って食べるものだ! カウンターで借りてくるといい!」
楽しそうにバカをしている二人に目をやる。本屋での一件がきっかけになったようで、こうしてふざけた会話を聞く機会が増えていた。
月代はどうやら思っていたよりもギャグというかふざけることができる性格のようで、たまに校内で見かける高嶺の花の印象は三人の時には
一方で、こちら二人は一部で既にあの勧誘の人、という囁きを耳にする程度には良くないイメージがついてしまっており、そんな二人と親しく話す様子を他の生徒が見たらなんと思うだろう。そうメガネと話しあった結果、校内では月代と極力会話を控えることを決めた。
月代はこれに猛反対したが、部活として認められれば部室が割り当てられるのでそこで話せばいい、あと二人なんだから大丈夫と必死に説得しなんとか飲み込んでもらうことに成功した。気持ちは大変嬉しいが、何かと人の目を引く月代の足を引っ張るわけにはいかないというのが最終的な結論だった。
「ところで、話というのは一体なんでしょうか? 残りの部員について話しがあるとは伺っていますが」
両手で小さい口にハンバーガーを運びながら問いかける姿は小動物を連想したが、絶対に口には出さない。
「例の話だな? 図書室に潜む新入部員候補の」
「図書室・・・?」
メガネにはすでに話していたが、月代には伝える機会がなかったので事情を説明する。先日に三守先生に呼び出された話から図書室の準備室にいる生徒の話、その生徒が似た趣味を持っていそうだという話。
話し終えると同時にあーなるほど、と理解した様子を見せる月代はそのままポテトに手を伸ばし、やはり小動物のように口へと運ぶ。
「それ、多分交換条件なんですよ三守先生の」
「「交換条件?」」
「はい。三守先生の担任されるクラスにそのような生徒さんがいたはずです。けれど、そうなると三年生の女子生徒ということになりますが」
三年生と聞いてメガネと顔を見合わせる、しかも女子生徒。色んな部活を見学して上下関係がうんたらと語っていたのを思い出し、目線でどうするんだと問いかける。返す目線は困ったように宙を泳ぎ、どこにも行きつかないままとりあえずとポテトをつまんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます