第2-10話 次へのヒント


「面白いってこった。面倒だけど、見てて飽きない」



 そう言うやいなや、向かいのソファーからわざわざこちらまで移動して横に座ってきた。普通に怖いのであまり目を合わせたくないが、合わせないともっと面倒なことになりそうで必死にこらえる。前傾姿勢は怖いから止めて欲しい。



「そこでだ。若者が頑張って青春しようだなんて素晴らしいと思う先生が、部員候補なんてものを教えてやろうと思うわけだが」


「え、部員候補ですか? この流れで」


「流れもクソもあるか。黙って聞け」



 頭をぐりぐりと押さえられ、髪がボサボサになる。見た目に反してスキンシップを取るタイプのようだが、初対面でこれは割と人を選ぶと思う。気の良い兄ちゃんと言えなくもないが、面倒絡みしてくる不良の先輩とも言える。詰まるところ苦手なタイプなのだが、そんなのはおかまいなしだ。



「図書室の奥に入りきらない本を保管する部屋があるんだがな、そこを根城にしてる奴がお前らと気が合いそうだと思うんだわ。お前らまだ部員足りないんだし、新しく引き込んじまえよ。それでリーチだ」


「あの、気が合いそうとはどういう・・・?」


「まんまだよ。会えば理解するだろ。行ってみな」



 さーて帰るかーと立ち上がるので、慌てて追うように立ち上がる。一体どんな人物なのだろう。今の部員的にはどんな人でも対応はできるように思えるが、それでも合う合わないは実在する。趣味を共にするのは思っているよりも難しく、互いに譲れないラインが被った場合、待ち受けるのは間違いなく決裂だ。


 ふと昨日の月代の様子を思い出す。別に趣味で衝突した訳ではないが、友人との距離感という部分において、共有できないものはあると改めて考え直す会話だった。今のメガネとの間に不和はないが、それでも覚えておくべきだろう。



「さて、質問はあるか? 無ければここ閉めるぞ」



 質問・・・聞けるなら全て聞きたいが、やはり一番の疑問は



「なんで俺一人だけ呼ばれたんですか? 別の友達もいるんですが」


「月代がよ、お前が部長だって。まあ頑張れや部長」



 こちらの質問と表情で全てを察したのか、ケラケラと笑うその顔は間違いなく気の良い兄ちゃんだった。


 因みに、本屋の件にキッチリ釘を刺されたのは言うまでもない。


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