第2-8話 顧問教師を確保せよ-⑥
「なぜ月代がそんなに感情的になっているのか分からないが、俺は部活が作れたらいいと思うよ。言っていることは分かるし、そうなるかも知れない。だけど、そうじゃない可能性だってある。今の俺が知らない何かを知り、今より面白くなる可能性がある。それじゃダメなのか?」
「たとえ部活が創設できて、人が増えたとしてもメガネさんは必ずあなた頼るでしょう。志を共にするというのはそういうことです。もしあなたが思う結果が出ずに、その環境に嫌気が差したらどうするんですか?・・・メガネさんを裏切るんですか?」
言葉尻が消えゆくようにか細くなる。痛みすら感じる言葉は、俺への気遣いとか、心配とか、そういったところではなく恐らく彼女自身へ向いている。
――――過去に似たような経験をしたのだろうか。
仮にそうだとしても、ここでそれを問うのは明らかに違うことくらいは分かるし、言葉にそのまま返すのも違うと思う。だが月代が欲している言葉は今の俺の本心じゃない。だから、そのままをぶつけるしかない。
「その時は思ったままをあいつに相談するよ。身勝手に消えたり、迷惑をかけたりはしない。そもそも遠慮するような間柄じゃないしな、どうにかなるだろ」
ぶっきらぼうに聞こえたかもしれないが、それならそれでいい。言葉を偽ってその場を濁すよりは何倍もマシだ。
後ろで何かを言ったようだが、声が小さすぎて聞こえない。何と言ったのか確認しようと振り返ると、月代は荷台から降りており裾を整えているところだった。そこから時間をかけて裾を直すと、ようやく真正面で目が合った。その目は薄っすらと充血しており、何があったかは容易に想像がついた。
「いや、そんなつもりは・・・」
「いえ、これは私の問題ですのでご心配は無用です。それよりも」
言葉を一度切り、呼吸を整える。その様子を見ながら、なんと言われるのだろうと身構えるが、続けられた言葉は予想外のものだった。
「私も、その部活に参加させていただけませんか? 学校内でゆっくりできる場所が欲しかったんです。ダメでしょうか・・・?」
思わぬ形で、三人目の部員が誕生した瞬間だった。
後日、生徒会の繋がりということで三守先生とコンタクトを取り付けた月代は、そのまま交渉に臨み部員が揃えば顧問を請け負うという言葉を勝ち取って来た。
どんな話をしたのだろうと呆気に取られる俺とメガネは、その事実を喜びつつもアッサリと終わった探偵ごっこにどこか未練を残すのだった。
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