第2-7話 顧問教師を確保せよー⑤
「ふぅん。つまり、メガネさんとあなたは漫画研究部や映画研究部とは違う、もっと自分たちの望みに沿った部活を作りたいと」
危ないからと二人乗りこそしなかったものの、月代は相変わらず荷台に乗ったままだった。少しずつ駅前から離れ、街灯と住宅街の明かりを頼りに自転車を押して歩く。話をするその表情は愉快とも不愉快ともとれ、こちらとしてはあまり気が休まらない。
「なんというか、大変ですね。今日の様子を見るに、あなたはメガネさんに付き合わされているのでしょう?進まないのならお断りになればいいのに」
いきなりの辛辣な言葉に、返す言葉がいったん詰まる。確かに最初はその気持ちがあり、その時に言われていれば否定するのに苦労しただろう。だが今日に至るまでの中で少しずつ変化があり、今はこの活動に対して付き合っているという気持ちはない。プロセスがどうであれ、最後に求められるのは結論だ。自信を持て俺。
「いや、そうでもないんだ。最初はそんな気持ちも確かにあったかもしれない。だけど今は違うんだよ。どうなるか分かったもんじゃないけど、それでも今やってることに面白さを感じているんだ」
今の正直な気持ちを、飾らずに言葉にする。実際に今日も面白かったし、これからが楽しみなのは事実だ。
だが、対する月代はそうですねーと興味がないように相槌を打ち、どこか面白くないような雰囲気を感じる。なにか気に障ったのだろうかと考えるのも
「それは面白いでしょう。探偵ごっこをしながら人探しですもの、知っていれば私だって最初から参加したかったです。けれど、それはあくまで目的のための途中経過であり、部活内容には全く関係のない今だけの面白さです。
あなた方が目的を達成した時に、そこから始まる活動を想像しましたか? メガネさんの趣味を、更に共有することを考えましたか? 今の私の目には、あなたの先は明るく映りません。温度差に疎外感を覚え、自分の居場所を再度問う姿が見えるのみ。本気になっている人間には、その場しのぎの相槌はいつまでも通用しないのですよ? そんな場所を、本当に望むのですか?」
マイペースを崩さず、しかし明らかに強い口調。まるで自分がその立場に立っているかのような迫真の言葉に、思わず荷台を振り返る。しかし街灯の切れ間に当たっているのか、月代の表情は明かりが届かず読み取れない。一体どんな表情をしているのだろうか。
なぜ、こんなに感情的になっているのだろうか。
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