第2-4話 顧問教師を確保せよー②


 放課後になり、これから張り込む駅前の本屋へやってきた。初めて覗く店内にどんなものかと期待を寄せていると、なるほどこれは通うようになると納得の売り場が展開されていた。



 入店してすぐのスペースでは、手書きのポップに紹介されたマンガがずらっと並び、細かくジャンル別に分けられている。今月のイチオシ!と書かれたポップの下には、美術系の学校に通っているのか頬に絵の具をつけた女の子の表紙が山積みになっていた。


 普通の本屋なら出版社別で陳列されていそうなものだが、客層に合わせて売り場を作っているのだろう、店内にいる客は不便そうな様子を全く見せず黙々と本を物色している。



「お、リリマジの新刊が出ているではないか! これは買わねば!」


「・・・目的を忘れるなよ、目立って気付かれたら終わりだぞ」



 制服では警戒されかねないと私服ではあるものの、こちらはいかにも高校生な見た目をしている。お目当てが本当にうちの先生だった場合、最悪顔が割れている可能性も考えられ、目立つ行動はご法度だ。



「ぬ、そうだな。すまない、速やかに購入してくるとしよう」


「今買うのかそれ・・・」



 リリマジは少女が魔法の力を手に入れ敵と戦うバトルもので、大変な人気があるらしい。グッズ販売が行われる度に即完売で、リリマジ完売のワードが界隈では挨拶のようなものになっているとかなんとか。


 実際にマンガを借りて(借りた本の中に混ぜられていた)読んだことがあるのだが、少女たちがいかつい武器を手に死闘を繰り広げる様は虜になるアンバランスさを孕んでおり、人気が出るのも納得といった内容だった。後日貸してくれるだろうか。



 戻ってきたメガネはホクホクといった様子で袋を持ちながら、店内の奥の方へと進んでいく。本当は色々見たいのだろう、棚から棚へ目移りしながらも歩みを止めることはなく、目当てのスペースへたどり着いた。



「これが交流ノートだ。何冊もストックがあるが古いのは気にしなくて良いだろう、まずは最新のものから確認してみよう」



 交流ノート!Vo.○とマジックで書き殴るようにナンバリングされたノートは、新しいはずなのに随分とくたびれており、多くの人が利用していることが容易に想像できた。最初のページから○○最高!と好きなキャラクターのイラストと共にコメントが添えられており、その熱量が伝わってくる。

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