七章 侍道化と荒海の魔女 その14
同じ町の饅頭屋さんにてフローレは無銭飲食を満悦していた。
「フラハハ! おいちいい! この饅頭ってのおいちすぎる〜! 何個目だったかな? どんどん入っちゃう〜!」
パクパク食べているフローレは突然、喉を積らせる。
「うっ、うぶっ! 何この肌寒さ! 急に来たんだけど。」
「どうも〜。」
フローレより背の高いその者は突然入ってきた。彼女は座っているので、より巨人に視える。
(紳士帽子に深紫色の着物に黒いズボン…十字架の武器。程よい色黒。程よいアゴ髭。一体何者? 寒気の正体はこいつ?)
「この町の者は皆干からびていた。あんたがやったのか?」
「女神に対して頭が高いわ…」
「苦しめたのかって聞いてるんじゃ、このクソアマァ!」
括正は叫んだ。フローレは鼻で笑う。
(ププ、ダッサ。あなたもこの町にいた男と同様、私に手も足も出せないのが決まってるのに。)
「私達神々は至高の存在。人の生気は好きなだけ奪っていいのよ。」
フローレの言い分に、括正は闘志を燃やした。
「……表出ろ。」
「……い、や、よ。」
ビュッ!
(男が消えた⁉︎ 一体どこに…)
「あっ! ガッ…ガッ…あっ!
フローレは痛みの声をあげる。
(うっ、後ろに回り込まれて、腕で首を絞められた。)
「だったら、引きずり出すまで。」
ズルズル、ズル。
(ルーちゃん程ではないが、さすが自称神。首を絞められても、かなりの抵抗力。)
括正はそう思いながら、店の外にフローレを引き出すことに成功した。フローレは括正に向けて指を向けた。
「枝刺し!」
「おっと。」
括正は思わずフローレを離し、攻撃をかわした。枝を引っ込めて振り向いたフローレは十本の指を括正に向ける。
「枝刺し、
「ふんっ!」
「なっ!」
(私の十本の指で創った十本の魔法陣から繰り出した十本の枝を手刀で全部折った!)
フローレがそう分析している隙に括正はガシッと彼女を掴む。
「ヒッ! 離して!」
「おらあ!」
括正は背負い投げでフローレを投げ飛ばした。
「きゃあああ!」
投げ飛ばされたフローレは地面にお尻で着地した。
「あっぐっ!」
「貴様らが二人で来たのはわかってる。もう一人は共闘仲間が倒す。彼女の方が残酷だ。僕が優しくてラッキーだったな。」
括正が言うと、フローレはあることに気づく。
(二人? ……なるほど、凪子の存在には気づいてないのね。プププ、私と闇男爵が足止め喰らっても、あの子がなんとかしてくれる。)
「おい君。」
括正はいつもの調子に戻ってフローレに話しかけた。
「僕の名前は岩本 括正。侍道化とも言われてる。君の名前は?」
「かっ、神が下郎風情に名乗ると思って?」
「そうか、そうか〜。君の名前はかっ、神が下郎風情に名乗ると思ってちゃんだね。長いから下郎ちゃんって呼ぶね、下郎ちゃん。それでいいよね、下郎ちゃん? 文句ないよね、下郎ちゃん?」
「…花の女神のフローレよ。」
フローレは仕方なく答えた。括正は質問をする。
「じゃあフローレちゃん。ここだと他人に迷惑だから、町の外の広い場所でお話ししようか。」
「いやよ、私人に迷惑掛けるの大好きだもん。」
「…今のは提案じゃない。」
「じゃあ、お前を追い出す!」
フローレはそう言うと、手の平に力を込めた。
「
「
ジジジジ!
桃色と紫のオーラが衝突する。フローレは焦りを感じた。
「同じ花属性の技? 嘘でしょ⁉︎ 私と互角⁉︎」
括正は空いた左手をくいっと動かした。
グサ、グサ、グサ!
「痛いっ! お腹が! 何…」
(あいつが手刀で折った私の枝を何本か投げて私のお腹に刺して…押し負け…)
「うわあああ! きゃあああ!」
括正の
(悔しい! 一回負けた! でも絶対反撃する! それに今頃凪子が暗躍してるはず…。)
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