七章 侍道化と荒海の魔女 その11

「ランララン〜! ラララ、ランララ、ララララン〜!」

 フローレは草原の中にある道をスキップしていた。

「フッハ〜! 町だ〜! この国に来て何個目かな〜?」

 フローレは目をキラキラ輝かせていた。フローレはスキップしながら村の中に入る。当然人々は彼女に目を奪われた。

「かわいい〜! 素敵〜!」

「花のいい匂いがする〜!」

「外国の人かえ?」

「護衛がいない…売ったらいくらになるか?」

「辛気臭いこの町に合わねえな。」

「何しに来たんだろう?」

「何か分けてくれるにかな?」

「もしかして天使かな? あるいは女神様?」

(フフフ、みんな私を見てときめいてる。幸せ、幸せ、しあわ…)

 ゴン!

 突然石ころが花の女神の二の腕に当たった。村の少年だった。

「冷やかしは国から出てけ!」

 フローレは投げられた石ころを拾った。

「石って嫌い。お花が育つ邪魔をするんですもの…。」

 ブン!

 フローレは石ころを投げ返した。

 ゴキッ!

「あああ!」

 少年は悲鳴をあげて、倒れた。

「てめえ! 女のくせにいい!」

 刀を持った侍がフローレに向かって斬りかかろうとした。

「枝刺し。」

 グサッ!

「ああ! 指から枝を…あ…。」

「デカイ侍がやられた!」

「ふぅ〜。」

 フローレは手首上方向にくいっと動かすと、枝はスルスルと指の中に戻っていったように見えた。というのも実際は指先で小さな魔法陣を作り、そこから攻撃的な枝が飛び出るものだからそう見えるだけだ。

気がついたら柄の悪い男たちが彼女を囲む。

「嬢ちゃん、随分と華やかな格好だなー!」

「その癖、アグレッシブ!」

「黙って男に頷かん女はこの国じゃお呼びじゃねえぜ!」

「この町のここら辺は、俺ら山口一家が取り仕切ってるんですわ!」

「今のは内の者ちゃうが、縄張りで起きた不正は見逃せねえ!」

「大人しく落とし前…ぶべっ!」

 一人の男の顎にフローレの蹴りが命中した。

「う、内の格闘家が…一発で…。」

「フラハハ、あなた達、調教しがいがありそう。」

 フローレはにやけていた。すると右手は何かを持つような形にして左手はその隙間から何かを掴み、伸ばすような仕草をした。

「ツルむち。」

 持ち手が茎のようになっていてグリップエンドに花が一枚咲き、後は全身緑の鞭が現れた。

 パチン!

 フローレの試し打ちで皆が多少下がり、地面にヒビが入る。

「ツル鞭、ヘラの賛歌!」

 連続でパチンと鞭がヤクザ達に直撃した。

『あああああ!』

『ぎゃああ!』

『うげええ!』

「あっ、あんな華奢な女の子があいつらを羽虫のごとく…」

「えいっ!」

 伸縮自在のツル鞭は一発で一軒の家をごなごなにした。

「や、つ、あ、た、り。」

 フローレはそう言うと、目くばせをした。誰かが呼んだのか役人が集団でやってくる。

 ガチャ。

「レディに銃を向けるなんて…この国の人はどんな教育をしているのやら。」

「大人しく同行しろ!」

「あっかんべー!」

「撃てええ!」

 銃声が響いた。しかしフローレはそのままだった。

「な、なっ⁉︎」

「効かないよ〜。銃への耐性もバッチリなんだから。」

 そう言うと、フローレは目の前で真ん中に花模様がある魔法陣を展開した。

「気を付けろ! 何か仕掛ける。」

 一人が忠告してると、フローレは右手を銃の形にして、魔法陣の前に構えた。

「みんなのハートを撃っちゃうよ〜。バッキューンって…」

 突然フローレは悪女の顔になった。

「物理的に!」

 フローレは両手で2丁拳銃を作り、銃口替わりの双方の指先に魔力を込めた。

「セレスの残響! 乱れ!」

 ドドドドドドドド!

 音と共にフローレは交互に巧みに連続で手を縦に小刻みに揺らした。

『ぎゃあああ!』

「た、種が…」

「じゅ、銃弾のように、連続で魔法陣から解き放たれた。」

「まるで…種の機関銃。」

 市民が怯えながら観察するなか、役人達はみるみる倒れていった。

「はぁ〜。この町も不合格。この国は民度低すぎ〜。」

 フローレはそう言うと、バッっと両手を広げた。

「この町の元気も生気も、お花さんも〜。私のものだー!」

 フローレを薄緑のオーラが積み込む。

「ガイアの捕食!」

 フローレはそう叫ぶと緑のオーラその町から彼女の元に引き寄せられては、同時に無数の悲鳴が響き渡った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る