七章 侍道化と荒海の魔女 その10
「お願いだ、ルーちゃん。いや、荒海の魔女―ルシア・シーキングさん。お願いだ。」
括正はルシアに深く土下座した。
「僕だけじゃ無駄死にだ。僕と一緒にこの国を守ってくれ。」
ルシアは横を向いていた。
「あっ、アタシは自分の物が手元に戻ればそれでいい……この国がどうなろうと知ったこっちゃない。さっきも言ったでしょ? いきなり悪役から英雄になるなんて、アタシにはできない。」
「そうか…。」
括正はすぐに立ち上がった。
「だったらタチの悪い言葉で説得するまで!」
「あぁ?」
「僕は戦うよ。一人でも。でもそうしたら死ぬ確率が非常に高い。…そしてどういうわけだが、僕の存在はあんたの生きる希望だ。僕が死ねば、あんたも都合が悪いんじゃねぇか?」
ルシアは黙っていたので、括正は話を続けることにした。
「もう一つ。……あんたはこの国を滅ぼさないって約束したよね? 僕と戦う際もそこだけは気をつけてたことは感謝する。だけどそれはこの国にいる間は国を守ってくれるって捉え方もできるんだぜ。」
「……とんだ屁理屈ね。」
「屁理屈も立派な理屈さ。」
括正は両腕を左右に伸ばし、手のひらを広げ、指をピッタリと閉じながら言った。そしてルシアの方をビシッとルシア指差した。
「このまま背を向けたらあんたは臆病者の嘘つきって汚名がつくってわけさ!」
「それだけは絶対嫌!」
ルシアは叫んだ。そしてすぐに冷静になった。
「……わかったわ。今回だけよ。あんたと共闘して、このルシア様が守ってあげる。」
「ありがとう。助かる。」
括正はお礼を言うと、余計なことを口走る。
「自分で様付けするんだ…へへ。」
「うっさい。……ちょっと下がって。」
ルシアは指示を出すと、彼女は髪を後ろに結んだ。
スパッ!
括正は驚く。
「あんた、剣で…髪を。」
「一つのケジメの表れよ!」
「めっちゃいいっすね、ミディアムウェーブ!」
「なんで急に後輩ぶるん? …まあ、いいや。」
ルシアは括正を運んだ。括正は複雑な気分だ。
「なんだろう。お姫様抱っこすることは好きだけど、まさか女の子にされるとは思わなかったよ。」
「体力保持能力はアタシの方があるから移動はアタシがあんたを運ぶね。文句ある⁉︎」
「ないです、姉御!」
「だからなんで急に後輩ぶるん? ……行くわよ。」
そう言うとルシアは括正を運んで東武国を走り出した。
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