七章 侍道化と荒海の魔女 その7
「ふぅー、ふぅー!」
ルシアは再び泳いで戻ってきた。括正はフレンドリーに彼女を迎える。
「おお、やっぱり戻ってきた。見て、見てー! 木の棒使って砂に君を描いてみたの〜。どお、かわいいでしょ〜?」
プシュウウウ!
ルシアは容赦なく海水で括正の作品を消した。
「いやああああ!」
括正はショックで悲鳴をあげて涙を大量に流した。そして思わずルシアの胸ぐらを両手で掴んだ。
「何さらしとんじゃ、お主もし〜! 結構心込めて書いたんだ、グエッ!」
ルシアは片手で括正の頸をガシッと掴んだ。
「念術がなくてもアタシは強い! 山や島だって投げ飛ばせる!」
「本当? あんたすごいね〜。僕は島は流石に投げられないけど…」
ブン!
隙を狙った括正は勢いよくルシアを投げた。
「ぎゃっ!」
「山や島を投げられるあんたを僕は投げられる!」
地面に倒れたルシアはすぐに起き上がった。そして海剛石を取り出した。
「この石の真の姿を特別に見せてあげる!」
ルシアはそう言うと、海剛石から闇が大量に溢れ出た。次に紫の炎が燃え上がった。最後に眩しい光が解き放たれて、真の姿が露わになる。
「ヤッベええ! 魔女が武器を持ちやがった! ……あっ、僕も既に持ってた。テヘペロの極み。」
括正はそう言いながら、海剛石だった物を分析していた。
(刀じゃなくて剣だな。柄頭はまるで小さな水晶のように青く丸い、握りと鍔きの部分は金色だ。刀身の刃先は黒いが樋は深紫だ。)
「驚いた〜?」
ルシアは剣を掴み取って確認した。
「これは本来のアタシの相棒の真の姿。名は
パチパチパチパチ!
「いや感動の拍手いらない! 空気読んでだまらっしゃい!」
ルシアは思わずツッコミを入れてから、右手の手首だけで三回
(刀身全体に黄色い雷……まずい! 念術でも魔法でもない自然系の雷!)
括正はルシアから遠くへ、走り出した。それに気づいたルシアは優越に酔い、にやけた。
「あらあら、括正くーん。ネタ切れかしら? なら遠慮なく撃つわよ。」
ルシアは右手で
「
ボオオオオ!
ルシアが左手で軽く柄頭を押すと、分厚くて黄色い光線が括正に向かって真っ直ぐ解き放たれる。括正は冷静に刀を抜いた。
「……飛斬、血染の黒豹。」
ボゴボゴっと技が衝突する。ルシアは余裕だった。
「アッハッハッハ! ぶつかり合う光と闇! どこか詩的! 飛斬って切断的な技なのに、随分破壊的な飛斬ね! 膨大な闇のざんげきから赤いオーラが燃料のように溢れている。……でも…」
ピキイ! ゴゴゴ!
「アタシの光があんたの闇に勝ちそうね!」
「…ならば付け足すまで。」
括正はにやけた。ルシアは戸惑う。
「へ?」
「飛斬、血染の黒豹! 飛斬、血染の黒豹! 飛斬、血染の黒豹! 飛斬、血染の黒豹! 飛斬、血染の黒豹!」
「ハァー⁉︎」
ルシアは驚いていた。
(うっ、嘘でしょ⁉︎ あんな大規模な技を連続で…
「ハロー!」
「ヒッ!」
突然目の前に現れた括正にルシアは少し後退りをする。そんなルシアのお腹に括正はチョンっと刀を鞘に納めた逆十字刀の小尻の部分を置いた。
「念爆〜!」
括正はそう言いながら、上に武器を引いた。
バコン!
それと同時にルシアの腹辺りが小さく爆発する。
「ギャフッ!」
ルシアは後退りしたら、括正を睨み、剣を振るった。
「純粋な剣技で勝負よ! ブランクがあってもイメトレはしてきたんだから!」
しばらくの間、括正の
「拝め! ひれ伏せ! 敬意を示せ!」
ルシアは叫んだ。括正は冷静だった。
「僕はあんたを崇拝しない。それに今のあんたはとてもじゃないけど尊敬できない。だが不思議だな……」
括正は笑顔を見せてしまった。
「あんたからは僕と同じ匂いがする。本気で僕を殺そうとしているあんたを憎めない。嫌いになれない。不思議な感覚だ。」
「うっ、うっさい!」
ルシアは勢いで剣を大きく振った。括正は間一髪でかわす。だが…。
(風圧で帽子が後ろに飛ばされた…ひろ、えっ?)
括正は意外すぎるルシアの表情に驚くのであった。
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