七章 侍道化と荒海の魔女 その3
「そうですか〜。」
幸灯の基地に戻った括正の報告を聞いて、彼女は満足していた。
「姫様が治ってよかったです〜。」
「本当によかったよ〜。姫様の笑顔が可愛くてね、治りたても色気があってさ、太ももとか…」
「うん、それ以上のいやらしい感想は控えて括正。男の子だけの空間ならいいですけど、女の子の前では控えてください。気持ち悪いって思われますよ。っというか思いました。」
「……ごめんなさい。」
「はい。素晴らしい。ちゃんと括正みたいに非を認めて女の子に対してでも謝れる男の子が増えたら、世界はもっと丸くなりますね。まあ、逆も然りですけど。」
「……全ての基地での荷物は全部サンライトが収納してくれたんだね。」
「はい。完了です。よかったですね。括正が全部持つハメにならなくて。」
「君は発想がたまにサディスティックだな。」
括正は空っぽになった基地を見渡しながら、言った。幸灯はニコニコしていた。
「いよいよ、船出ですね。」
「そうだね。……僕は一任終えたらね。」
括正は海剛石と荒海の魔女からの手紙を取り出した。幸灯の瞳は小さな事で怒りで赤く光った。
「私言いましたよね? それは案六城の方々の問題だからあの人達に任せなさいって。」
「僕はいって返事してないもーん。」
「……もうっ。私絶対行きませんから。あなたは荒海の魔女の恐ろしさを知らないんですよ。確かにどこか寂しそうな感じはありましたけど、人をいじめ抜いた上で確実に殺そうとする異常者です。括正は確かに強くなりましたけど、あの人は失敗する度に努力ができる人だと思うんで、はっきり言って未知数です。現にソドォームを滅ぼしたらしいじゃないですか⁉︎」
「やたら詳しいね、君。」
「姫君の様子見のために何回も案六城は侵入してるんで、あそこの機密事項は私にとっては筒抜けです。だから調合も急ぎました。」
「そうか。…とりあえず明日出かけるね。」
「だから駄目ですって!」
幸灯はバッっと両手を広げて、聖母を意識した笑顔で誘惑を始める。
「もしも明日、荒海の魔女に会いに行かないって約束してくれるのなら……わ、私のこと…今夜…私と
顔を赤くしながら言う幸灯に、括正も思わずポッと赤くなった。
「えっ…本当幸灯?」
(えっ、嘘〜? 括正釣られてる? …いやありえますね。っていうかそれが狙いでしたから。)
「んんんんんんん! ぐううううううう! 迷ううううう!」
(すごい葛藤してますよ、この人! 性欲と正義でここまでぶつかることあります⁉︎)
「はぁ〜。わかりました。」
幸灯はため息を吐いた。
「明日の任を許可します。その代わり必ず生きて帰って下さい。」
「了解した。」
括正は親指を立てた。幸灯はさらに付け足す。
「後アゴ髭伸びましたね。剃って下さい。」
「……。」
「返事は?」
「ノー。」
「もぉー!」
「メェー!」
「動物ごっこはしてません!」
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