六章 悲哀と勇気 その12 完

「うう…。」

 夕方になってようやく清子も目を覚ました。

(あったかい…誰かが火を作ってくれてる。…あっ。)

「やあ、魔女ちゃん。また会ったね。」

「おじさん! あっ、もしかしておじさんが助けてくれたの?」

「ご名答。君はやっぱり賢いね。僕の友達の協力もあったけど。」

「ありがとうございます。おじさんのお友達は今ここにいるの? その人にもお礼が言いたいわ。」

「大切だよね、ありがとう。どういたしまして。彼は違う仕事があって、いなくなっちゃった。僕から言っとくけど、会うことがあったら言っとくといい。エドワード・テディだ。」

「覚えときまーす。」

 清子は元気に敬礼しながら返事すると、キョロキョロ辺りを見渡した。

「アレ? おじさん、武天君は?」

「……彼は、旅に戻ったよ。」

 清子はそれを聞いて、わかりやすくしょんぼりした。

「そう…武天君…。」

「でもね。彼すごく反省してるんだ。…今度また会えたらさ、彼を笑顔で迎えて謝ってきたら許してあげて欲しいんだけど、難しいかな? できれば今日起きたことで彼を責めずに…ほら…あの子、なんか繊細そうじゃん?」

「そうなの! あの人すごく繊細なの!」

「急に圧がすごいね、君。」

「おじさん、武天君に意地悪なこと言ってないでしょうね?」

「……愛を込めたことしかやってないよ。」

「だったらいいんですけど。幸灯ちゃんと武天君を傷つける奴は全員私が呪ってやるんだから!」

(起きたばっかなのに、元気だな〜、この子。)

「じゃ、じゃあ僕がお願いしたことできるってことで、オッケー?」

「オッケーです。」

 清子は返事をするとホウキを取り出して、宙に浮いた。伸正は手を振った。

「またね、魔女ちゃん。これからどうするんだい。」

「しばらくお世話になってる村に奉公し終わったらまた旅に出ます。」

「そうか。気をつけてね。」

「おじさんも。無理をすると腰に響いちゃうわよ。」

 清子は優しく手を振ると、リキ村に戻るのであった。




六章 悲哀と勇気 完

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