六章 悲哀と勇気 その9

「ここがダンジョンの入り口か〜。」

 武天は早起きして、最も近場のダンジョンの入り口前に来ていた。

「さて。入るとするか…」

「武天君!」

 後ろから聞こえる声に武天は思わず振り向いた。

「清子君、なぜここに?」

 武天の質問に答えるように種を出して自分の手の平に乗せた。

「追跡ありがとう。お礼よ、ありがとう。」

「カカーッ!」

 一羽のカラスが一瞬で飛んできて、種を取ってその場を去った。

「私の一族はなぜかカラスと深い繋がりがあるの。村周辺に住んでいるカラスちゃんを呼び寄せて、あなたを追わせてもらったわけよ。それより…」

 清子の瞳が怒りで金色に光った。

「今日の朝食当番あなたでしょー⁉︎ 私アキラさんとプリスキラさんの分作ってから来たんだから! 責任放棄するなら理由やホウレンソウくらい言いなさいよ! あっ、一応言っておくけど、ホウレンソウって報告・連絡・相談のことよ。だけどね! ……武天君の歳上であることと男の子のプライドもあるから、これくらいにしといてあげる。」

 そう言うと、清子は持っていた小さなバスケットを前に出した。

「何も食べてないでしょ? サンドウィッチ作ったから一緒に食べましょう。」

「……ありがとう。」

「そ、の、か、わ、り。私も一緒に行くからね、ダンジョン探索。」

 清子はそう言いながら、ビシッとダンジョンの入り口を指差した。

「……いや、俺は一人で行きたいのだが…」

「私も資源や資金が欲しいの。お願いだから連れてって。ねっ、ねっ?」

「……了解した。ではまずは、朝食をお言葉に甘えていただこうではないか。」

武天はそう言うと、二人は朝食を食べ終えて、ダンジョンの中に入って行った。

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