四章 獅子騙し/怒れた吸血鬼 その5

(この町はいい気分がしませんね〜。外国人らしき観光客は多そうですけど、地元で富んでいる割合が少な過ぎます。吸血鬼になる前から何度か私ここで金貨などを配ってましたけど、なかなか発展しませんね。)

 幸灯は無邪気にだがどこか悲しそうに蛇京を歩き回っていた。ピタッと道の真ん中で止まる。

「うっ。」

(頭がツンツンします。吸血鬼になってから何度かあるこの感覚……。)

 気がついたら幸灯は刀を所持した男達に囲まれた。その中の一人が物申す。

「小娘、この町の主がお呼びだ。同行しろ。」

「いや、あの、その…あっ、いや…」

 幸灯は怯えてると、あることに気づいて両手を腰に置く。

「ちょ、ちょっと! 小娘ってなんですか⁉︎ ちゃんと私をお姫様みたいに扱ってください!」

「いいから来い!」

 武士が突然ガシッと幸灯の手首をいきなり掴んだ。

「キャッ! 離して!」

 幸灯は振り解こうとした。

「いやああ!」

 幸灯は勢いよく腕を動かした。

「うわあああ!」

 すると相手は投げ飛ばされてしまった。

「ガッ!」「ゲブッ!」

 投げ飛ばされた男は同僚に当たり二人は地面に倒れた。幸灯はかなり戸惑った。

「えっ…勝手に転んだんですか?」

(待って、待って、待って。もしかして私が投げ飛ばしたんですか?)

 幸灯はそう思いながら、自身の両手の手の平を眺めた。

「己ええ!」

 武士らはシュッっと一気に刀を抜いた。

「ひっ!」

(怖い! 怖い! 怖い! 何で男の人ってすぐ怒鳴って威圧的なの⁉︎ でも…)

 幸灯は涙目になりながら瞳を赤く光らせた。

(動きは利用できます!)

「おらあ!」

 一人が刀を横に振った。幸灯は優雅に腰を軸に体を後ろに傾けた。後ろにも武士がいた。幸灯は後ろの男の袴を掴む。

「えいっ!」

 引き寄せるように引っ張る幸灯。

「えっ、ぎゃあああああ!」

 前にいた男の斬撃が後ろの男の斬撃に当たった。

「この魔女ー!」

 そう言いながら、前にいた男は今度は幸灯の腹を突こうとした。

 びゅっ!

「ざ、残像?」

 グサッ!

「うわあああ!」

 また別の男に刀の先が当たった。

「おい! 小娘が消えたぞ」

「おいいい! みんな見逃したん⁉︎」

「近くにいるはずだぞ。」

 コロン…コロン…

 何かが転がってきた。一人が気づく。

「り…リンゴ?」

 ドォン!

『うわあああ!』

 武士達は見事に戦闘不能になった。

「ごめんさいね。お兄さん達があまりにも意地悪だったから、火薬を埋め込ませたリンゴをプレゼントさせてもらいました。」

 まあまあ距離のある路地裏で幸灯が言った。

「さて…」

 幸灯は蛇京城を見据えた。

「私、まだ怒っています。」

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