三章 革命前夜、茨の黒魔女への挑戦 その1
「貿易港にある箱って結構いいものがいっぱいありますね〜。」
隠し倉庫の一つにいた幸灯は、盗んできた箱の中身を確認していた。
「ふふ、吸血鬼になってから盗める量が大幅に増えたり、気配をより明確に察知できたり、役人からも逃げやすくなったりと、いいとこだらけですね〜。何より空を飛べるのはたーのしい!」
幸灯はご機嫌にお宝やお金をまとめているとふとある課題を思いついた。
「でもこれとその他の私の財産を、国を出る際にどうやって持っていきましょうか? 全部運ぶなんて無理ですし、目立ちすぎます。んん〜。」
幸灯はしばらく考えていると、ポンと手を振った。
「まあいざとなったら、私のかっこよくて強い括正が全部運んでくれますよね。信じてますよ〜。あら?」
幸灯は箱に入ってあった、文字の書いてある紙切れに気がついた。
「これは確か…外国で使われている出張版の瓦版―新聞というやつですね。ああ、海を渡ってるわけですから、日にちにはかなりのズレが、ってええええ!」
幸灯は記事の一面に驚いてしまった。
「せ、清子ちゃん?」
幸灯は自分のフェアリーゴッドマザーでもある清子・ブラックフィールドがばっと魔法で撮られた写真を確認して、読み始めた。
「ミステリーとロマンの国―スパーダを魔法学園グリムリーの首席が戴冠式に緊急訪問⁉︎ ……国のあり方を直談判⁉︎ ………恐喝⁉︎ ………宣戦布告⁉︎ ……炎と茨で堂々退場⁉︎ ……茨の黒魔女の伝説がここに始まる⁉︎」
幸灯はブルブル震えながら、目を輝かせていた。
「カッコいいです〜‼︎ 茨の黒魔女って清子ちゃんのことですよね? 清子ちゃんに合っててすごくカッコいいー! まあ怪盗獅子騙しの方がカッコいいですけど…多分。おそらく。だと信じたいです。でも茨の黒魔女って侍道化やんー、ぺっ! 災狼や世界一の剣士を目指す白虎よりは断然カッコいいです。」
幸灯は自己完結すると、一度座り清子の写真をウキウキしながら見つめていた。
「でも清子ちゃんうらやましいな。憧れちゃうな。お勉強ができて頭いいし、心も強いし、魔法も強力だし、かわいいし。…いえいえ、でも世界一かわいいのは私です。てへっ。ごめんなさい清子ちゃん、そこは譲りたくないです。だけどこの人私より女王様してませんか⁉︎ ……触れないどきましょう。」
幸灯は新聞を置いて入り口の先の空を眺めた。
「本人は否定してたけど、清子ちゃんが何かに負けるなんて想像できないな〜。」
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