第21話 未来予知5
「はいはい、わかったよ。そんなに興奮しないでくれ」
やっとキスシーンの停止画像を切り替えてくれた。本当に竜胆博士は何を考えているのかわからない。
「でもこれでわかっただろう?問題のない人間となら君もごく普通の幸せな恋愛が出来る」
確かに、鶯さんと向日葵の映像に比べれば何の変哲もない未来だった。強いて言うなら大半の男が嫉妬するような最高のシチュエーションだったくらいだ。
「勘違いしないで欲しいのが、空君の選択によっては鶯たちと付き合ったとしても平和な未来が訪れる可能性はあるという事だ」
え、そうだったのか。
「てっきり選んだ瞬間BAD直行なのかと思いました」
「基本的にはそうだが、まぁ未来は無限にあるわけだから君の考え方や行動一つで未来は変わっていくものだ。その中の全てが不幸な結末だとは思えないだろう?未来予知で見ることが出来るのは最も可能性の高い未来一つだけ。バタフライエフェクトというものもあるし、未来に行きつくまでの君の些細な変化がどう影響するかまでは計算できない」
だとしても、女性への理解度もヤンデレへの理解度も無い俺には到底無理な話だろうな。ギャルゲーとかたくさんやっていればよかったのだろうか。
「まぁ、そこまではいくら天才の私にもわからないということだ。若者の無限の可能性を測るのに科学の力はあまりにちっぽけ過ぎる」
なんだか格好つけた言い回しで誤魔化しているが、結局は鶯さん達との幸せな新婚生活があるかどうかも不明ということだろう。それに現時点の印象だと多種多様の悪い未来が待っているようにも思える。
「だが君がフィランスブルーとして任務・・・もといヒーロー達の心の世話をしている間は誰かと交際するのは辞めて欲しい」
突然アイドルのような縛りを設けられてしまった。別にその気はないし、そんな勇気もいまのところないけど。
「あれだけの美少女達に好意的に接してもらっている以上心苦しいとは思うが、君が一人を選ぶと残りのヒーロー達が弱体化するし、好意を持たれたヒーローは基本的に暴走するからな。彼女達の力が安定するまでは誰か一人に決めたり他所で女を作るのは控えてくれ、もちろん拒絶しすぎるのも良くない。全て肯定しろとは言わないが露骨に避けるような行動や根本から否定する言葉は逆に暴走させる可能性があるからな」
「別にいいですけど・・・」
悲しい事に、他所で彼女をつくるあては無い。
「もちろん、好意に付け込んで身体の関係だけ持つのも禁止だからな?特に子供達には」
「し、しませんよ!!」
この女性はどうしてそういうことが平気で言えるんだ。羞恥心がないのか俺を男だと思っていないのかわからないが、俺の戸惑う顔を見るためにこうやってセクハラじみたからかい方をしているような気がする。
「本当か?私の前だからって紳士ぶらなくていいからな。最近の若者には理解できないかもしれないが、ヤンデレにとっての性行為は結婚の同意並みの重さがあると思った方がいい。一緒の墓に入る気が無いヤンデレには手を出さないことだよ、命が惜しければね」
「手なんて出しませんよ・・・」
何故かちょっとだけ口ごもってしまう。そんな煮え切らない俺を見て博士は口角を上げた。
「空君は巨乳は好きかい?ちなみに我々の中で一番胸が大きいのは鶯だ」
「なっ!そんなこと勝手に教えたら鶯さんが可哀そうじゃないですか!」
怒りつつも単純な俺の脳みそが勝手にさっきの映像で見た下着姿の鶯さんを思い浮かべてしまう。映像を見ているときは内容に恐怖していて微塵もいやらしい目で見ていなかったけど、今思えば割と・・・いや、かなりあった気がする。そういえば鶯さんはいつも厚着をしているしヒーロースーツ姿を見たことが無い。現役ヒーロー人気投票でもフィランスグリーンはスタイルがいいって言われていたな。
「君は怒っていて顔が赤いのか?それともいやらしいことを考えているからか?」
「なっ、なにも考えていません!怒ってるんです!本人の承諾もなしに胸の大きさのことを男に話すなんて駄目ですよ」
図星をつかれた俺はますます顔を赤くしている事だろう。その証拠に博士はとても満足そうだ。
「薄々勘付いていたが空君は結構初心だな。でも安心してくれ、鶯だけでなく彼女達は君に性的な目で見られることも満更ではないだろう。もちろん露骨なことはやめて欲しいが、ちょっと意識されるくらいなら寧ろ喜ぶと思うぞ」
本気なのかふざけているのかわからないニヤケ顔。
「ちなみに次点で私、茜、桃だ。しかし未来予知の向日葵はまだ高校生くらいだったのに桃より大きかったな・・・あ、でもこれはサイズの話だ。カップ数で言えば茜がダントツだ」
「だんとつ・・・」
思わず声が漏れてしまう。
「違う!いつまで胸の話してるんですか博士!」
さっきの新婚動画のせいか、なんだか博士のテンションが変だ。俺もちょっと流されているけど今は未来予知でヒーロー達の危険性を知るチャンスなんだ。
「ふざけてないで次の予知を見せてくださいよ。茜さんと桃の分もあるんですよね?」
このまま博士に話を続けさせては具体的な数値も言いかねない。正直興味はあるが今は男子高校生みたいな話で盛り上がっている場合ではない。
「わかったわかった、そんなに焦らないでくれよ」
まるで俺が我がままを言ったかのように「やれやれ」とわざとらしくため息をつきながらノートパソコンを操作する。
「どうせ全員見る決心はついているのだろう?順番はどうでもいいか」
「そうですね」
怖いとは思うけど、未来予知を使えばノーリスクで将来の不安を具体的に知ることが出来る。見ておいて損はない。
「じゃあとりあえず茜の方を見ようか・・・」
茜さんと俺の未来。未だによくわかっていないが茜さんは俺の事を好いてくれているらしい。そうなるとやっぱり結婚という未来はあり得るわけで、茜さんなら既にヒーロー中最強の力を持つから俺のヤンデレメーカーの影響も受けにくいのではないだろうか。
「・・・む?おかしいな」
茜さんとの未来を映そうとPCを見ている博士が首をかしげている。
「何故かエラーが出て茜との未来が再生されないんだ・・・おかしいな、あの子は君が好きなのだから二人の結婚という未来は再生可能な筈。現時点で存在する可能性のない未来、例えば日本から出る気が無い者とアメリカから出る気が無い者の結婚生活とか男性にしか興味が無い男と女性の未来とか、そういうものを排除したら基本的には再生されるようにできているんだけど・・・ふむ、やっぱりだめだな」
おかしな話だ、お互いに恋愛感情を持っていない俺と博士ですら再生できたというのに。
「何故でしょうね?」
少しだけ期待していただけに残念だ。
「まぁ再生できなかったものは仕方ない、あとで原因を調査しておくよ。今日は桃の分だけ見ておこうか」
「そうですね」
桃か、この間のフィランスレッドのぬいぐるみの件が気になるが四人の中で一番普通の女の子っぽい性格をしている。女子高生らしく、流行のモノが好きでちょっとミーハーそうな感じがして、一見すれば一番ヤンデレからかけ離れているかもしれない。
とはいえ、さすがに俺も学習しているのである程度の覚悟はしておこう。向日葵の未来以上に悲惨なことにはならないとは思うが、多少胸を痛める心づもりでいたほうがいい。
「こっちは上手く再生できそうだ」
茜さんの未来だけ見れなかったのは何故だったんだろう、他の未来が再生できるのなら機材トラブルではなかったのか。
「あー、空君」
「なんですか」
「その・・・あんまりショックを受けないようにな」
「?」
今更過ぎる注意に疑問を感じつつも、プロジェクターに移された画面に注目する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます