第3話 新しい風を連れてきた女性
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ニキがフェレイラ家で働くようになって約一か月。最初は反抗的だったエリザベスも、朝のプールの時間で、ニキを信頼するようになったようだ。ジャックもニキはこれまでのナニーと違うと感じ、また少しずつ女性としての魅力に心惹かれるようになる。
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翌日は昼までに来ればいいと言われていたので、ニキは軽く昼食を食べてからフェレイラ家に向かった。三年まえから運転している小さな車を指定されたガレージに入れて、小さなカート付のスーツケースを転がしながら家に入る。ガレージから続く
「あの……こんにちは」
ニキが声をかけると、女性が振り向いた。一瞬、びっくりしたように目を丸くしたが、すぐに口元がゆるみ、明るい笑顔になる。
「あら、あなた……エリザベスの新しいナニーね?」
「はい。ニキといいます」
「私はキャサリン・ボーネット。〈フェレイラ・インベストメント〉の経理部で働いてるの」
ジャックの部下ということだろうか。肩までの黒髪、小粋な印象の黒縁メガネをかけている。仕立てのよいグレイのスーツをぴしっと着こなしていて、いかにも優秀なキャリアウーマンといった感じだ。しかし冷たい印象はなくニキにも愛想のよい笑顔を見せている。
「あの、きょうは……」
ニキがたずねると、キャサリンはすぐ彼女の疑問を察して答えた。
「社長のお迎えに来たのよ」
「お迎え?」
「午後から会議なんだけど、ジャックは気が向かないとよくすっぽかしちゃうの。きょうはどうしても出てくれないと、エドワードがフォローで苦労するわ。だから私がお目付け役を押しつけられたわけ」
「社長が会議をすっぽかすんですか?」
「ええ。彼にはそういうところがあるの。不要だと思うものはどんどん切り捨てていくし。その判断が正しいこともあるけど、形式が大切なときもあるでしょう?」
「え、ええ、まあ」
実業界の若きプリンスが会議をすっぽかす? まるで退屈な授業をさぼる大学生を授業に引っ張り出そうとしているようなキャサリンの口調に、ニキはおかしくなってしまった。社長のことを、こんなに気安く話すなんて。
でも、家にまで来るなんて、ただの部下ではないのだろうか。
もしかして恋人?
そう思うと、ニキの胸はちくりと痛んだ。
「キャサリン、わざわざ来ることはなかったのに」
階段の上から声が聞こえ、二人は振り向いた。
「エドワードからのたっての依頼よ。あなたが席に着くまでは安心できないんですって」
「とんでもなく過保護だな」
「スケジュールを守ってくれるんなら、それほど過保護になる必要はないんですけど」
ジャックはキャサリンが見ていないところで肩をすくめた。
「こんにちは。ミスター・フェレイラ」
キャサリンのうしろにいる女性を見て、ジャックは思わず動きを止めた。今ここにいるということは、きょうから働くことになっている新しいナニーにちがいない。だがこの女性が、きのうのニキ・リースなのか?
きょうは紺のスーツでなく、Tシャツとジーンズに、髪も下ろしている。ひっつめていたときは気づかなかったが、明るくやさしい褐色、はちみつのような色あいで、大きくウェーブがかかっている。メガネは同じだったが、午後の明るい日を浴びて、青い瞳の色が強調されていた。少し緑を帯びた青だ。昔、母がこんな色の宝石がついた指輪をしていたのを覚えている。あれはたしかターコイズだったか……。
ジャックにじっと見つめられて、ニキはどうすればいいのかわからなくなった。
子供の世話をするのだから、動きやすい服装と思ってジーンズにした。髪はあとでしばるつもりだったけれど、ちょっと気を抜きすぎたかしら? それでも目をそらせず、二人の視線は絡み合ったままだった。
「ミスター・フェレイラ?」
ニキに声をかけられて、ジャックははっとした。
「ああ、すまない。きのうと印象が違うので、少し驚いたんだ。エリザベスは一時半ごろに帰ってくる。夕飯までは、危険でさえなければ、きみの判断で何をさせてもいい」
「わかりました」
「じゃあ、行こうか、キャサリン」
足早に出ていく二人を、ニキはじっと見送った。きのうはジャックの肩書きと、雇い主としての立場に圧倒されてしまっていたが、きょうのジャックは、ごくふつうの三十代のビジネスマンのように見えた。ああいう意外な面を見られるのも、住み込みのナニーの特権かも。ニキはそう思って、自分の荷物を部屋に運んだ。
エドワードが言っていたとおり、エリザベスのナニーはたしかに楽な仕事ではなかった。まず彼女は、まわりの大人に心を開いていない。目を合わせないし、話しかけてもあまり返事をしない。
フェレイラ家に移ってきた翌朝、ニキが六時半に起きてキッチンにいくと、すでにエリザベスは起きていて、リビングでテレビを見ながらスナック菓子を食べていた。ニキは彼女のとなりに座り、スナック菓子の袋を取り上げた。エリザベスはさっと顔色を変えて、手を伸ばして袋を取り返そうとする。
「返して!」
「朝からお菓子はいけないわ。すぐに朝食をつくるから、それを食べましょう。一緒にキッチンへ来て、卵を焼くのを見ない?」
ニキはできるだけ静かな声で言った。
エリザベスはぷいと顔をそむけると、リビングから走って出ていってしまった。
これは根くらべね。ニキは思う。しかしそれでがっかりすることはなかった。子供の心を開くのには時間が必要だ。でも保護者であるジャックはどう思っているのかしら?
ニキはジャックが仕事から戻ってきたとき、エリザベスが朝早く起きて、一人でスナック菓子を食べていたことを話した。
「朝食前にお菓子を食べるのはやめさせたいのですが」
そう切り出すと、ジャックはむっとした顔をした。
「そういうことを僕がさせているとでも思っているのか? 子供に規則正しい生活をさせる。それもナニーの仕事だろう? そのために高い給料を払うんだ」
その言葉に、ニキは少しかちんときた。たしかにナニーにしては破格に高い給料をもらっている。でも、もし彼が本当のエリザベスの父親だったら、それはまず親がやるべきことだと言うところだわ。
「わかりました。それでは私の考えてやらせていただきます」
「ああ。ただし体罰は絶対に禁止だ」
「まさか! 私は体罰など絶対にしません」
「……それならいい」
ジャックはそれだけ言って自分の部屋へ引き上げてしまった。体罰を心配するくらいだから、エリザベスのことを考えていないわけではないのだろう。しかし何といっても育児の経験がない男性だ。どう接していいのかわからないのかもしれない。
いずれにしても、まずは私が根気よくエリザベスとつきあうことよ。ニキはそう考えた。
翌日からニキはスナック菓子の袋を鍵のかかる戸棚に隠してしまった。午後のおやつの時間になったら、食べてもいい分だけを出す。二、三日はエリザベスがお菓子をさがしてキッチンやリビングをさがしまわり、見つからないとかんしゃくを起こして泣きわめいた。それでもニキは菓子を出そうとはしなかった。
そのかわり朝食にパンケーキやハムエッグを焼き、並んでカウンターに座る。エリザベスは数日間はニキのつくったものを食べようとはせず、シリアルを出して食べたりしていたが、十日を過ぎたころから、無言のままとはいえ、キッチンの小さなカウンターテーブルにニキと並んで座り、メープルシロップをかけたパンケーキに口をつけた。ニキはそれに気づいてもあえて何も言わなかった。
ニキはエリザベスが家にいる間は、できるだけそばにいようと思った。エリザベスは昼過ぎに家に戻ると、午後はほとんど庭で過ごす。ボールを蹴って遊んだり、木に登ったりするのが好きなようだ。それでニキもあとをついて走る。
簡単に見えて、大人にはけっこうつらい。年輩の女性では体力が続かないし、日焼けを気にするような若い女性でも無理だろう。
エリザベスはきっと、以前は両親がいつもそばにいる環境で生活していたのだろう。それが急にいなくなってしまった。おじとはいえ、ジャックは忙しくて家にいる時間は短い。誰を信用すればいいのか、わからなくなっているのではないだろうか。だからニキは、自分がずっとそばにいるということを伝えたかったのだ。
もう一つ、エリザベスが好きなのは泳ぐことだった。ある日、午後から暑くなり、庭にいたエリザベスがプールで泳ぎたいと言いだした。
「わかったわ。じゃあ、水着に着替えましょう。それからタオルも取ってこないとね」
エリザベスと一緒に部屋で着替えると、彼女は不思議そうな顔をした。
「ニキも一緒に泳ぐの?」
「え? ええ、もちろんそのつもりだけど。だめ?」
「いいけど」
にこりともせずに言ったが、それまでの警戒心ではなく、むしろ戸惑いの表情だった。
泳ぐといっても、エリザベスは子供用に浅くなっている部分で水遊びをするくらいだ。ニキはゆっくりと、プールの端から端までクロールで泳いで見せた。するとエリザベスは目を丸くする。
「どうやるの?」
ニキが近づくと、エリザベスが小声で言った。
「やってみる? まずは顔を水につけて体をまっすぐ浮かせる練習から始めるのよ」
ニキが水の上に両手を差し出す。するとエリザベスがそこに自分の両手を乗せた。
ニキの指示にしたがって、エリザベスはゆっくりと顔を水につけて脚を伸ばす。ぎゅっと手に力を入れるのが伝わってきて、ニキの胸に愛おしさが満ちあふれた。
ああ、子供ってなんてかわいいのかしら。
エリザベスは泳いでいる間は反抗的な態度をとらなかった。夕食時間が近づき、プールからあがって熱いシャワーを浴びたあとは、満足げな顔をしている。
その姿を見ているうちに、ニキに一つのアイデアが浮かんだ。
ニキはそのアイデアを実行に移すべく、ジャックに許可をもらいにいった。
「朝からプール?」
「はい。エリザベスは毎朝六時には起きて、朝食まで時間をもてあましています。少し体を動かしたほうが食欲もわきますし、ナーサリーでも落ち着いていられると思います。もちろんエリザベスがいやがるようならやめますが、事前に保護者であるミスター・フェレイラにご理解いただきたいと思いました」
最初、ジャックはあまりいい顔をしなかった。
「エリザベスは六歳にしては体力があります。それを発散できないから、落ち着かないのではないでしょうか」
「たしかにエリザベスは元気がありあまっている感じがするが、水泳は……」
「きちんと泳ぎを覚えるのは、事故を防ぐという意味でも大切だと思います」
ニキは何とか彼を説得しようと、さらにその利点を並べる。するとジャックの顔が一瞬こわばったように見え、ニキは思わずうろたえそうになった。
「わかった。しかし泳ぐときはきみも必ず一緒にプールに入ってくれ。プールサイドで見てるだけでなく」
「はい。もちろんです」
「それなら許可しよう」
結局、お許しは出た。けれども何か違和感をおぼえる。
彼のエリザベスへの接し方には、どこか無理がある。もちろん父親でもない若い男性が、とつぜん六歳の子供の面倒を見ることになって戸惑うのはわかる。けれどジャックは、ほんの小さな危険さえ、取り除こうとしているようだ。これほど神経質になるには、特別な理由がある気がしてならなかった。
朝食前にプールで泳ごうと言うと、エリザベスは少し驚いたようだった。けれどもニキの顔を見て「いいよ」と答えた。
二週間もすると、ニキの手を離し、顔を水につけてばた足ができるようになった。
「すごいわ、エリザベス。ばた足はすっかりマスターできたわね。今度はそれに腕の動きをつけてみましょう」
ニキの言葉をエリザベスはまじめな顔で聞いている。まだ心を開くところまではいかないけれど、少なくとも泳ぐことに関しては私を信頼してくれているみたい。
ニキはていねいに腕の動きを教えながら、そう考えた。
ジャックはエリザベスとニキが泳いでいるのを、家の中からガラスごしに見ていた。プールはキッチン横のダイニングルームから続くテラスのすぐ先にあるので、食事をしながらよく見えるのだ。
朝から泳ぐなどとニキが言いだしたとき、いったい彼女は何なのだと思った。エリザベスが誰かの言うことをきいて、その指示にしたがうなんて思ってもみなかった。
幼いころから元気がありあまっているような子だったが、両親が死んでからは笑顔を見せなくなってしまった。ずっとそばにいた家族がいなくなったのだ。ショックでないわけはない。なんとか元の明るさを取り戻してほしいと、破格の給料を出してナニーをさがしたが、これまでの女性たちはエリザベスの心を開くことはできなかった。
ニキはこれまでのナニーとはかなり違う。エリザベスのことについては、雇い主の自分に言いたいことをはっきりと言う。ウォールストリートの住人になってから、あまりそのような態度を女性にとられたことはない。
しかし実際にエリザベスは、目の前でニキと一緒に泳いでいる。自分にもこれまでのナニーにもできなかったことを、彼女はできるというのだろうか。
「やあ、ミスター・フェレイラ。今朝のごきげんは?」
考えごとを明るい声でさえぎられた。
「エドワード。なんだ、朝っぱらから。会社に行くにはまだ早いぞ」
「ごあいさつだな。今朝はうるさい上司の指示で顧客のところに行く予定だ。その前に自宅で打ち合わせをしたいと言ったのは誰だった?」
「ああ……そうだったな。あそこはきみの説得術が頼りだ。今日もよろしく頼むよ、副社長殿」
「は! きみのそんな甘い言葉にうかうか乗せられて、どれほど苦労させられたか」
「だがそのおかげで、ビジネスマンとしてのきみの名声はすでに業界にとどろいているだろう? 決して損はしてないと思うが」
「ああ、おかげさまでね。引き抜きの声もよくかかるし、独立しないかというお誘いもけっこうあるよ」
「なんだ、脅しか? まだうちにいてもらわないと困る。昇給のリクエストならいつでも言ってくれ」
エドワードは声をたてて笑った。
「いや、もう十分にもらってるよ。当面フェレイラを辞める気はないから安心しろ。まだまだきみから盗むものはたくさんある」
「知らぬ間にライバルを育成してしまうのも困るんだがな」
ジャックもエドワードの言葉に笑顔になる。
「おや、エリザベスがもうプールで泳いでるのか?」
エドワードは外に目をやって言った。
「新しく雇ったナニーも一緒だ」
「ああ、このあいだのニキという子か。しかしまだ七時前だぞ」
「朝食前に体を動かしたほうが、エリザベスにはいいと言っている。大人が付き合うのはたいへんだろうと思うんだが。実際、ここ一週間くらいはエリザベスもかんしゃくを起こしていないな」
「へえ。彼女が来てもうすぐ一か月か。これまでのナニーが音を上げ始めたころだ」
「とりあえずまだ大丈夫そうだ」
エドワードはテラスに続くガラス戸の前に立つと、プールのほうを見た。しばらくじっと見ていたが、とつぜん大声で笑い出した。
「なんだ、エドワード。何がそんなにおもしろいんだ」
興味を引かれてジャックもガラスの前に立つ。
「この屋敷のプールで、ビキニ以外の水着を着た女性を見たのは初めてだ」エドワードはまだ笑っている。
プールサイドでは水からあがったばかりのニキとエリザベスが、大きなバスタオルで体をふいていた。エリザベスは子供らしいスカート付の真っ赤なワンピース型の水着。そしてニキはフィットネス用のセパレートタイプ。トップスは鮮やかなブルー、ボトムは黒で、くるぶしまで長さがあった。
「フィットネスクラブのインストラクターみたいだな」
「ああ、アルバイトで水泳のインストラクターもやっていたと言っていた。スポーツは何でも得意らしい」
「ふうん。ようやくプロ意識のあるナニーが見つかったということか」
「そう思うか?」
「これまでここで雇われた女性たちが、どんな水着を着てたか思い出してみろよ。みんな露出の多いビキニばかりだった」
「そんなこと覚えているのはきみくらいだろう」
そうは言っても、実はジャックもこれまで雇った女性の態度には気づいていた。あからさまに男の目を引くような水着や服を着る女性もいた。ナニーに限らず、たいていの女性がそうだった。それが面倒で、いつのまにか住み込みの使用人は男ばかりになっていた。
「仕事へ向かう前に、レディたちにあいさつしていくよ」
エドワードはそう言ってガラス戸からテラスへと出ていく。
「おはよう、ご婦人方」
「おはようございます。ミスター・ミルトン」
「エドワードと呼んでほしいな」
「じゃあ……エドワード。朝早くからお仕事の打ち合わせですか」
「そう、わが国のエグゼクティブは、朝のさわやかな時間をむだにしない」
「早朝ミーティングをする会社が多いらしいですね。有能なビジネスマンはたいへんだわ」
「朝からプールで子供に水泳を教えるよりは、ずっと楽だと思うけど」
「あら、泳ぐのは楽しいわ。ほんの短い時間だし」
「きみの水着はとてもいい。僕の好みとしては……もう少しセクシーなものをおすすめするが」
「これだと体が冷えなくていいのよ」
ニキは笑って軽くかわす。
「なるほど。機能重視ということか」
二人の楽しげな様子を見ていたジャックは、なぜかいらだち、テラスからプールサイドへ向かった。
「エドワードのくだらんおしゃべりに付き合ってやる必要はないぞ」
ぶっきらぼうに言う。
今朝のジャックは、グレイのスーツにワインカラーのネクタイを合わせている。男らしい顔立ちを華やかに彩っている。ニキは自分の水着姿がひどく野暮ったく思えて恥ずかしくなった。
「おはようございます。ミスター・フェレイラ」
ジャックは苦笑する。
「ジャックでいい。朝から運動するのはいいが、二人ともあまり無理しないように。エリザベス、ナーサリーで疲れてしまったりしていないか?」
「平気」エリザベスがぼそりと言う。
「そうか」
会話が続かず、ジャックはついニキを見てしまった。はちみつ色の髪から、水のしずくがたれている。メガネをしていないと、青い目がさらに大きく見えた。健康的な小麦色に焼けた肌に、ターコイズブルーの瞳がよく映える。
「無理はさせず、疲れないようにします……ジャック」
視線を合わせたまま、ニキがゆっくりと言った。ジャックも彼女の目を見つめたまま答えた。
「ああ。そうしてくれ」
そしてエドワードのほうを振り返り、部屋へと促した。
きびすを返してプールサイドを離れても、ジャックの脳裏にはニキの水着姿が焼きついていた。決して挑発的なかっこうではない。けれども体にぴったりと張りついた水着は、脚の長さとスタイルの良さを強調していた。面接のときは細すぎるように見えたが、露出した腕には、ほどよく筋肉がついていた……。
「ジャック」
呼ばれてはっとする。
「ぼんやりするなんて珍しい。よほどきみの心をとらえるものがあったかな?」
笑みを浮かべているエドワードの顔をジャックはにらみつけた。
「なんでもない。仕事のことを考えていただけだ」
そう言うと荒っぽい足取りで階段をのぼっていった。
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