第2話⑥『自分の意思で隠れる』ということ

それから1ヶ月後。

柏木心療内科クリニックでは、手術を決心した隆が、キャリーバッグを持って訪れていた。


「じゃあ……。この書類にサインをお願いします」

「はい」


「荷物はこれだけですか?」

「いえ。他にもあったんで、こちらのクリニックに送ってもらうようにしています」

「分かりました。じゃあ届き次第、中身を確認して神崎さんにお渡ししますね」

「中身を確認されるんですか?」

「はい。一応『危険物等が入っていないか?』等を確かめるだけですから……」


“いちいちウルサイ患者だな──”

達也はそう思いながらも、笑顔で答える。



「じゃあ……。こちらをどうぞ」

「ありがとうございます」

そう言って達也は、睡眠薬入りのハーブティーを渡した。

「柴田さん。これをコピーしてください」

「はい」

そう言って、徹は出て行った。


「神崎さん。コピーした物をこちらで保管させていただきます」

「分かりました」

“あれ?何か──”


「先生。少し眠たくなってきました……」

「神崎さん。疲れているんだと思います。こちらで少し休まれてください」

「はい……」

そう言って隆は、ベッドに通された。


「ようやく寝たか。柴田。彼を例の島に」

「はい」


そうして隆は、『あの島』に運ばれた──。

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