第2話⑤『自分の意思で隠れる』ということ
それから2週間後。
隆は再び、柏木心療内科クリニックを訪れていた。
「神崎さん。今日は、あなたに会わせたい方が居るんですよ」
「どなたですか?」
「篠原先生」
達也は、冬吾を呼んだ。
「失礼します」
部屋の奥から、冬吾が出て来た。
「篠原 冬吾です。よろしくお願いします」
「こちらが、以前僕が言っていた『紹介したい腕の良い医師』の篠原先生です。先生はまだお若いですが、腕は確かです。今日は特別にお越しいただいていますが、いつもは島に居ますので、手術はそちらで受けていただき、その島の病院で入院していただきます」
スラッとした体型に聡明な雰囲気。
“この先生になら、手術を任(まか)せられる──”
隆は、何故かそう感じた。
そして、自然に口から言葉が出ていた。
「仕事を辞めて、手術を受けます……」
「そうですか!じゃあ仕事をお辞めになって、この紙に書いてある物を準備してきてください」
「分かりました……」
そうして隆は、翌日、退職願を学校に提出した。
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