エードルフ、言い訳をする

 ハルナは“あじぇんだ”とやらに俺の回答を書き込んで、出来にとても満足そうだったけど、俺の話も聞いて貰いたい。

 ……後出しの言い訳ばかりだけど。


「……その前にさ、絶対怒らないって約束して」


 ちらりとハルナを上目遣いで見た。


 ハルナはぐっと言葉に詰まった顔をして、

「はいそれ、聞いたら絶対怒るやつ。聞いてから判断します」

 と、無常な決定をくれた。


 俺は諦めのため息をこっそりついて話し始めた。


「俺、ハルナにいくつか嘘をついていたんだ」


 こんな事、昔、王宮を抜け出して兄上や母上に叱られた時以来だ。

 居心地の悪さにハルナを見てるフリして、窓を見つめた。

 ポロポロと言うより、いっぺんに言えば1回怒られるだけで済むかもしれない。

 よし、まとめて言っちゃおう!!


「一つ、ルドヴィルにマントを分捕られたと知られたくなくて、貸した事にしてほしいと頼んだ事、二つ、出会った時から異世界人ってわかってて無茶な契約と借金を持ち掛けた。三つ、帰る方法を探すと嘘ついた!」


 俺は言い終えてハルナを見ると、とても器用にくるりくるりとペンを回してハルナは言った。


「ふぅーん。じゃあ詳細話してみようか?」


 ああっ!! やっぱりハルナの言葉も目線もひえっひえでとても冷たい。

 これはものすごく怒ってる!!

 背中が冷たい汗を伝ってる感覚がした。

 言いづらいなぁ、と目線を泳がせつつ言い訳をする。


「は、はい。えーと……ですね。マントは騎士の魂で神聖な物。分捕られるのは騎士の恥でそれをルドヴィルに知られたくないと思って保身に走り、ハルナが聖女だって気配で一目で分かり、しかも偶然契約までしていて、すぐに解除しなきゃいけなかったんだけど、ルドヴィルの提案で契約解除できる事は伏せ、むしろ一度しか契約できないと罪悪感を持たせておき、帰すことはできないのに、帰る方法を探すと嘘をつき、しかも勝手にどこかに行かないように値札を書き換えた高額前借で縛りました!!」


 俺は一息に言い切った。

 はっ、そうだ!!

 こんな時こそ深い謝罪の気持ちを表す、ハルナのやった岩のポーズ!!

 俺は椅子から素早く飛び降りて、膝とおでこを床につけて丸くなった。


「ほ、本当にごめんなさい!!」


 そぅーーっとハルナを盗み見上げると、俺の発言をメモしていたのか、書いたものを眺めながら、やっぱりペンをくるりくるりと回していた。

 こ、怖い。何て言われるのか恐ろしい。

 俺はビクビクして床を見つめて沙汰を待った。


「ふむ……。すると其方はマントの件をルドヴィルさんに知られまいと適当な事を言い、婚姻の石の契約は1回限りって訳でもなく、契約解除を知られないよう嘘をつき、帰す気はないのに、帰る方法を探すと誤魔化し、値札を変えた服屋で山ほど服を買わせて借金まみれにした、と言うことで間違いないか?」


 言い終えると回していたペンをぴたりと止めた。


「さ、左様にございますっ!!」


 すごいな、ハルナさん。状況把握が完璧だ。

 今すぐ兄上の補佐もできそうで、聖女にしとくのが惜しいくらいだよ。


「大体わかった。とりあえず顔を上げなさい」

「はっ!」


 俺はゆっくりと顔を上げて、おずおずとハルナを見ると、うっすらと微笑みを浮かべていた。

 あれ? 怒…って……ない?


「団長は2週間のおかず抜き刑、執行猶予なしとする!!」


「えーーーっ!!!」


 そんなぁ……。

 俺はハルナのご飯が食べたくて、こんなに頑張ったのに。


「えーっ、じゃない! 反省しなさい!!」


 うう……。ごめんなさい。ハルナ様。

 反省します。もう嘘つきません。

 せめて作り置きのおかずだけでも分けてください。

 お願いします。。。

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