第8話 決戦前夜

 ____2238年7月7日____

 獣国騎士団に入団して4年。20歳になったシロウと30歳になったウィリアはもうしっかりとした大人になっていた。団の名に恥じぬくらいの実力をつけていた。今日もBARUMバルム機関の本拠地である獣国寺の闘技場でひたすらマスターエイジによるゴーレム連戦を行っていた。地面が砂なのでエイジの作るゴーレムはサンドゴーレムである。

「ハアアァッ!!」

「シェアアッ!!」

 ウィリアとシロウの渾身の掛け声が闘技場に響く。一撃でエイジの作ったサンドゴーレムを次々と破壊していく。その戦いの様子をレオン達は見ていた。

「一気に片付けてやるんだから!」

 囲まれたウィリアはそう叫ぶと長剣に[気]を溜めて大きく円を描く。その瞬間刃から渦潮が飛び出し辺りのサンドゴーレムもろとも一掃した。

 一方のシロウはサンドゴーレムの猛攻を紙一重で避けて札を貼っている。

「仕込みはもう済んでんだよなぁ。」

 指を鳴らした瞬間、札からサンドゴーレムを覆う量の水で閉じ込め一気に破裂させた。そして最後の1体をウィリアが一刀両断にした。

「シロウ君、後何体?」

「今のでラストだよ。ウィリア。」

 余裕綽々よゆうしゃくしゃくの2人がする会話は4年前では考えられないものとなっていた。その成長ぶりに見ていたレオン、サバージ、シルベスター、ワイバーン、そしてサンドゴーレムを操っていたエイジから賞賛の拍手が送られた。

「お二人ともすばらしいですね。見違えるほどの成長をしていますぞ。」

「「ありがとうございます。マスター・エイジ。」」

「じゃあ今度はボクが相手だ! どっちか早速やろうぜ〜。」

「だめだニャワイバーン。今日は全員午前だけの稽古で午後は明日に備える時間という約束だニャ。」

「「エェ〜。」」

 シルベスターもワイバーンと同じ気持ちだったらしく、2人揃ってごねり始めた。だが2人同時に喋るものだから全員聞き取れていなかった。

「全く、お前らはどうしていつもこうなんだか……。」

 レオンはいつも通り頭を抱えた。前日になってもこんなバカ2人に悩まされることになろうとは思ってもいなかった。

「まぁまぁ、彼らのような存在があるからこそ、今でもこうしていつも通りでいられるのです。」

「しかしマスター・エイジ。確かにそうかもしれませんが、今彼らに付き合っている暇はありません。明日はこの国にとって一番大事な日なのです。あなたは特に明日に備えて休んで頂かないと。」

「それもそうですね……なら、彼らはどうしましょうか。」

 エイジはそれを温かく見守りながら悩んでいた。レオンは全員明日に影響してしまうのではないかということが不安でならなかった。それに加え、明日は獣士全員での交渉決戦となるので、警察長であるレオンと獣士長であるサバージは多忙なのだ。

「なら、僕が2人に付き合いますよ。」

 シロウが手をあげると、後出しでウィリアも挙げた。

「私もやります。シロウ君1人じゃ大変そうだし。」

「どういうことだよ、ソレ。」

「「イィヤッター!!」」

 ワイバーンとシルベスターは飛び跳ねてはしゃぎ回っていた。

「おい!……2人とも、本当にいいのか? いつもアイツらに付き合わされているが……。」

 レオンははしゃぐバカ2人よりもシロウとウィリアの心配をした。

「大丈夫ですよ。心配しないでください。」

「あの2人のおかげで私達強くなれてる部分がありますから。」

 2人の謙虚さはどこか損をしている部分がある。そうレオンは前々から思っている。しかし、バカ2人彼らのわがままに付き合ってくれている部分もあり助かっているのでレオンは言うに言えないのだ。

「……そうか……いつも本当にすまないな。これに関しては2人には助けられてばかりいる。それじゃあ、あの2人を頼むよ。」

 レオンはそう言った後に自分が情けなく思えた。また2人の謙虚さに甘えてしまった。

「おーい! 早くやろうぜー! こっちはいつでも準備オッケーよー!」

 そんなことも知らずに、ワイバーンとシルベスターはシロウとウィリアを急かした。早くやりたくて仕方ないと言うのが彼らの落ち着きのなさから滲み出ていた。

「はーい! 行こうシロウ君。」

「うん。それではまた夕方に。」

 2人はそう言うとワイバーン達のもとに走った。

「あぁ……また後でな。」

 2人の後ろ姿を見たレオンは自責の念に駆られた。

「本当に……申し訳ない。」

 レオンは彼らに聞こえないのを分かっていながらも、意味が無いのを分かっていながらも謝った。

「それじゃあ2人に伝わってないニャ。」

「もしかすると余計なお世話かもしれんからな。行こう、サバージ。俺たちは忙しくなるぞ。」

「頑張らニャイとニャ。」

 隊長2人はお互いを鼓舞してそれぞれの仕事に取り掛かった。


 ____人間界 ZENON日本支部・新宿地下研究所____

 日の光が決して届く事がない地下50メートルにある中枢研究所。太陽の代わりに研究所内は白く光る人工灯が研究所内を冷たく照らしていた。人々は太陽の下で平和に生活をしている。大都会の道路では仕事をしている人が様々な服装で交差点の中を慌ただしく、そして目まぐるしく入り乱れている。にも関わらず、暗闇の中でうごめく怪物どもは着々と準備を進めていた。研究員達も慌ただしく研究しごとをしている。全員がスーツと白衣である彼らも慌ただしく、そして目まぐるしく廊下を行き来して入り乱れている。その中で、男が2人女子供が1人ずつ、エレベーター乗り場に向かって廊下の真ん中を闊歩かっぽしている。職員達は会う度に返事が帰ってこないことを当然のように通りすがりに挨拶をする。彼らはサドナ、アモン、そして新作である。1人は大人しいスタイルの黒髪で長め前髪、柔弱そうな目の子供・ミスト。もう1人すらりとした体で栗色の長いストレートヘア、はしばみ色の目を持つ女性・フラナだ。サドナの顔からは不気味なほどの満面な笑みをしている。唯一アモンだけはヘラヘラと笑っていたが、残りは真顔である。1人とはエレベーターに乗って地下最深部に向かった。降りている最中、気まぐれにアモンが聞いた。

「何がそんなに楽しいんスカ? 所長?」

「『何が』だって? 決まってるじゃないかアモン。だよ。明日があまりにも楽しみで私は仕方がないのだよ。」

 顔だ振り返って見せたサドナの表情は笑顔だ。だがその笑顔は純粋なものではなく、狂気に満ちた笑顔だった。

「それは明日獣国と獣人ビーストを滅ぼして人間オレたちのものにできるからってコトっすか?」

 そう尋ねた瞬間、エレベーターが最深部に到着したことを伝える電子音が鳴った。扉が開くと、暗闇で一寸先しか見えなかった。何も見えないが、なんとなく異常な広さは伝わった。あとはそこらじゅうから漂う血生臭いニオイが。アモンはエレベーターから一歩出た瞬間歩いた感覚から地面についていない事がわかった。そして先へ進もうとすると鉄格子にぶつかった。

 カーーーーーーン……。

 ぶつかった音が遠くまでこだまする。それはここの広さを表していた。ミストとフラナは格子をつかんでゆっくりと歩き、自分が檻の中にいることを自覚した。

「これは俺たちが出てるんじゃない。俺たちが捕まってるんだ。」

「ここが一体なんだというの? 何も見えないし、何もいないじゃない。」

 するとサドナは思い出したように3体に言った。

「そうだった……。君たちをここに連れてくるのは初めてだったね。」

 エレベーターの光で白衣のポケットからタバコとライター、そしてこの最深部の照明スイッチを取り出した。そして右ポケットにタバコとライター、反対には照明スイッチを入れたのを確認してエレベーターから出た。

「アモン。お前がさっき言ったことも間違ってはいない。確かに獣国とその雑種ビースト共を終わらせて国を頂くことも楽しみだ。……だが……本当に楽しみなのは……コレだよ!!」

 スイッチを押すと巨大な音と共に照明が閃光弾フラッシュバンのように最深部全体を照らした。一瞬3体の目がくらんだが、目が慣れて景色を見た瞬間。驚愕きょうがくして言葉を失った。

「な……なんだコレ……!」

 目の前に広がるのは見渡す限りの檻の壁。その中一つ一つに失敗作だった様々なキメラが収容されている。形はどれも同じではない。ツギハギのキメラもいた。そして光に反応したキメラ達は檻から出ようと体当たりをしたり檻に噛みついたりしていた。そのガンガンなる足音や吼える声などに連鎖爆発のように次々と反応して目を覚まし、全てが同じような行動を取っていた。目の前だけで数百体はいる。

「何だ……コレ……。」

 あまりの恐怖でミストの声は震え、腰を抜かした。

「大丈夫?」

フラナはミストに寄り添ってミストを立たせた。

「半世紀と12年……君らのいしずえだ。こいつら全てを戦場に投入し雑種ビースト共を終わらる。きっと最高だ、芸術にもなるぞこれは! 上から撮ればきっと高く売れるくらいの値打ちがつくぞきっと!」

 サドナの今までためてきた感情がたかぶった。それはもう止まらない。彼にとって戦場はもう戦場ではなく、もはやただのキャンパスだ。様々な色の大地を、血というインクだけで芸術を表現するためだけの一枚の画用紙になっていた。

「明日、我々人間は証明するのだ! この世界の頂点に君臨するのは、人間であるということを! フッフフフ……ハハハハハハ……! アーッハッハッハッハッハッハ……!」

 サドナの高らかな笑い声は最深部の床から天井まで届いて響いた。彼ら3体もサドナに感化され、全員が狂気の笑みを浮かべていた。


 ____同じ夜____

 明日の準備が整った街は大騒ぎだった。全大陸の獣士・警察官達が集まり、明日を楽しみにして待ち切れないと言う声が至る所から聞こえてくる。「マザリ屋」では獣国騎士団の4人の獣人ビーストが他の獣士達と明日の生還と勝利を誓い合って乾杯をしていた。ただシロウとウィリアだけはその気分に乗れなかった。そんな時、酔ったシルベスターとワイバーンは空いたテーブルの上に立ち出した。

「え〜本日、7月7日は何と彼女! ウィリアの誕生日でーす!」

「皆さん祝ってあげましょ〜!!」

 2人がそう言うと前夜祭から誕生日祝いの会に変わった。

「「イェーイ!! ウィリア! 誕生日おめでとー!!」」

 店内にいる獣人ビースト達がウィリアを祝った。そしてウィリアは祝われたのが嬉しかったのか女性の獣士たちと話したり、レオン達と似たようなことを頑張ってやっていた。だがシロウはどうしてもその気になれなかった。空気に合わない自分がここにいるのはまずい。そう思ったシロウは1人店を出た。そして獣国寺の桃の木のところに行った。着くとそこには誰もいなかった。ここは夜だとまた一変わった風情のある場所だ。月明かりに照らされ、そよ風が吹き、ゆっくりと時が流れている感じが心を落ち着かせた。

 ゆっくりと息を吐いて自分の背負っている武器をおもむろに取り出して撫でながら眺めていた。4年前までは黒い長剣と白い短剣を何本持って戦っていた。だが今は、マスター・エイジから頂いた替え刃式の短槍長剣になっている。持ち手は短槍くらい長く、刃は長剣の刃をさらに長くしたものを混ぜ合わせたような武器になっている。収納ができるように替え刃式になっているのだという。だが正直言って、この武器は今までの中で一番使いやすい。剣のように斬れて槍のように突いて振り回せる。シロウにとっては長所だけを抽出したような武器なのだ。そんなことを考えながら見ていると、上から声が聞こえてきた。

「皆さんと一緒に過ごさないのですか?」

「うわッ!」

 突然の声かけに驚いたシロウは体を縮こまらせて上を見た。シロウの真上にある木の枝のところにマスター・エイジがいた。

「あなたは亀ではないでしょう? そんなに縮こまっても何にも変わりませんよ。」

 シロウの反応を楽しむようにエイジは言った。

「マスター・エイジ……あっ、いたんですね。あの、ごめんなさい、勝手に入っちゃって。まさかいるなんて思ってなくてウワァッ! というか……気が付かなくて、あと気付けなくてイテッ! ……本当にごめんなさい。」

 シロウは慌てて椅子から立ち上がり後退あとずさりしながらエイジに謝り続けた。後退あとずさりの時に足をつまずいて石床に腰を打った。しかしそのまま後ろに行き続けたので後ろを見なかったシロウは柵に頭をぶつけた。そして頭と腰を順番にさすって痛みを引かせた。

「全然構いませんよ。むしろよく来てくれました。ちょうどシロウさんに話があったのです。」

 そう言ってエイジは桃の木からゆっくりと降りてきた。あとから聞いたことだが、[気]で足場を作ってそれをゆっくり重力と反対方向の力を[気]で送る。そして反対方向に送る[気]の量を減らすことによってできることらしい。

「僕に……ですか?」

 シロウが繰り返すと、エイジは黙って頷いた。


 2人は長椅子に座って、いつも通り桝に水を入れ飲んでいた。

「それで……話と言うのは一体なんですか?」

 シロウが尋ねると、エイジは何も言わずにシロウの武器を指さした。

「その武器は、誰が作ったものだと思います?」

 4年前と同じ、突然の問いかけが始まった。

「えっと……それは……マスター・エイジ……ですかね?」

「なぜそう思いました?」

 深ぼられた瞬間、シロウは少し悩みながら答えた。

「やっぱり、この武器を下さったのはあなたですし、僕はあなたからこれを頂きましたから。でも……。」

「『でも』……なんですか?」

 エイジはゆっくり待ってくれた。シロウが自分の中で思っていることを自分で引き出すのをじっと待つかのように。

「でも……何か違うんです。マスター・エイジが僕を理解していないとか、そう言う事ではありません。ただやっぱり、どうしてもこれをもらった時から、使っている時もずっと、僕をよくわかってくれている……ヤタさんと……キュウビさんの感じがすごいするんです。それに、こんな僕専用みたいな変わった武器を作れるのも、きっとあの2人だけだと思います。だからいつも思うんです。もしかしたら……これはあの2人からの最後の……なのかなって。まぁ、最後の部分に関しては、2人が亡くなったのが僕の誕生日だからってところが強いですけど。」

 シロウは俯きながらも、思っていることを全て話した。エイジはそんな彼の話をを頷きながら聞いていた。

「やはりわかっているではありませんか。」

 シロウはその言葉の意味が分からなかった。分かってはいるのだが、一体どの部分が『分かっている』と言っているのかかが分からなかった。

「『分かってる』って……何がですか?」

「全部ですよ。今君が言ったこと全部。これは私が渡しましたが、作ったのはヤタとキュウビですぞ。君はそれを感じ取ることができた。素晴らしいではありませんか。」

「でも……どうやってマスター・エイジの元に? どうして僕だとわかったんです?」

「それでは……見せてあげましょう。事の経緯いきさつを。」

 そう言ってエイジはシロウの空になった桝と自分の桝を重ねて息を吹きかけ木屑きくずにした。しかしその木屑は飛んでいくのではなく、その場に残り続けた。

「全ては6年前から動いていたのですよ。」

 そして映像のようなものが流れ始めた。


 ____2232年3月____獣士認定試験終了後

「サコミズ。すまないが一つ頼まれてくれないか?」

「何だい?」

 サコミズが聞くとヤタは麻袋を渡した。

「これを、グランドマスター・エイジに渡してくれないか?」

 中身は重く何やら細長いものがある。

「中身を見ても?」

「構わない。」

 出てきたのはシロウが今持っている武器だ。

「これは一体何だ? 短槍と長剣どっちなんだ?」

「どちらでもない。強いて言うなら棍槍剣こんそうけんだ。」

「棍槍剣?」

「棍棒・短槍・長剣の3通りで戦える何でもござれの武器さ。」

「彼は棍棒、長剣、短槍がとても上手く使えていた。短槍に関しては自覚が薄かったがな。それに、刃を飛ばしての投擲とうてき攻撃も上達していたので、替え刃式にした。シロウならきっとうまく使ってくれる。」

「ここの替え刃の部分、ここだけ分厚いんだけどってるけど、これは……。」

蓋を押し込むと中が2部屋に分かれており、出前はたくさんの札が入っていた。そして奥には数枚しか入らないような隙間があった。

「そこに札を入れて取り出せるようにしたの。札を自分で使うもよし、奥の消費場所に入れて武器自体に付与するもよしにした。何もない札を入れれば撃てるようにしたし。[気]を込めれば札が銃弾の役割を果たして銃としても使えるようになる。札一枚で最低でも10発撃てるように改良したんだ。」

「それじゃあ、渡しておいてくれ。」

「ちょっと待ってくれ。」

 サコミズは2人を引き留めた。

「こんなに丹精込めて作ったんなら直接渡せばいいんじゃないか?」

「ダメだ。」

 ヤタはサコミズの当然の提案を強く否定した。

「これは彼に対する我々からの最後の贈り物だ。それにシロウ自身がこれに気づけるかと言うことも含めてな。」

「何でそこまでする必要があるんだ?」

「だって僕ら、来年のシロウの誕生日で死んじゃうから。僕の能力で調べた。もうこれは変えられない事実だ。」

 サコミズは言葉を失った。自分の死期がわかると言う能力があるなんて思いもよらなかった。そしてここまで準備を進めているのも驚きだった。

「そして2人がマスター・エイジの所に行くと言うのも知ってる。どんな形かは分からないけど会うことだけは分かる。だから……渡しておいて欲しい。」

「彼に教えるべきことは全て教えた。あとは自分で探し、掴み取る訓練をするだけだ。こればかりは自分でやる以外どうしようもないからな。」

 サコミズは困惑した。このまま返して直接思いを伝えろと言うこともできるが、2人の決意が本物であることも、また辛いものなのだ。

「本当に……いいんだね?」

「あぁ構わない。シロウにとって、これは我々からの最後の誕生日の贈り物だ。そしてもし、これがマスター・エイジの手から渡されてもなお、我々からの武器贈り物だと気付いた時、この武器これは本物の獣士になったと言う証となる。きっと一生使えるはずだからな。」

 サコミズはもうこれ以上何も言わなかった。認めるしかなかった。そして受け入れるしかなかった。目の前の2人の腹はもう決まっているのだから。

「…………分かった。」

 サコミズが言い終えると、木屑に映された映像が消えた。

「知らなかった……こんなことがあったなんて。」

「やはり思いは伝わりますな? シロウさん? ウィリアさん?」

「ウィリア?」

 シロウが振り返ると、扉の前にウィリアが泣きながら立っていた。

「じゃあ……ウィリアも見てたの? いつから?」

「初めからだよ……。」

 そう言ってシロウのもとに駆け寄り抱き締めた。

「シロウ君……合格……おめでとう。」

 涙ながらに言われる言葉は刺さるものがあった。

「ありがとうございます。」

 シロウも応えるようにウィリアを抱き返した。だが少しした時にエイジが杖で2人をつついた。2人は慌てて離れた。

「あぁ、ごめんなさい。つい……。」「僕もすいません。」

 離れた2人はなぜかエイジに対してたじろいでいた。

「お二人とも。今日は決戦前夜ですぞ。彼らに伝えなくてよろしいのですか?」

「????」

「今夜は大事な人と、大事な場所で過ごすのがしきたりですぞ。さぁ早く行きなさい。」

 そう言われた瞬間、2人の行き先と過ごし方は決まった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る