第18話 防犯カメラ
事件の次の日俺は普通に学校に登校していた。
あの事件は表向きは誰かが女子トイレに侵入し、塗料を散布。
発見した生徒が驚いて気絶し、入院中と言うことになった。
怪我人も実質いなく、ただのイタズラとして処理したいらしい。
だが、その塗料が血であることは伏せられていた。
そして、その血が気絶した生徒のものである事も。
警察が現場検証の為今日は休みになった。
だが、それでも俺が学校に来た理由が。
「はい、制服ね」
「ありがとうございます」
制服が新しく出来たのだが、家ではなく学校に、送られてしまったのだった。
その為、仕方なく取りに来るのが一つ目の目的だった。
「昨日、あんな事件があったのに来なくちゃいけないなんて、大変だね」
「そう、ですね」
事務のおばさんの言葉に俺は苦笑いで答える。
本当はもう帰りたいのだが、制服の入った袋をなかなか離してくれないのだ。
とりあえず、何かを話したいのだろう。
「どんな犯人なんですかね?」
真っ先に昨日の話をし出したんだ。
この内容について話したいのだろう。
社長には関わるなと言われているが、これぐらいなら。
「そうねえ、私は内部犯だと思うのよ」
「そうなのですか?」
「そうよ。だって、ここは進学校だからね。防犯カメラが至る所に付けてあるんだよ。年に一度あるかないかだけと、侵入してこようとする奴はいるの。でも、それですぐに発見して、捕まえるのさ。だけど、捕まえるどころか、今回はなんの手がかりもない」
「そんなにカメラが多いのですか?」
「ちょっとやり過ぎなくらいにね。でも、それで今まで安全がしっかりと守られていたから、誰も何も文句はなかった、けど」
今回の件で親から色々と言われているのか。
少なくとも警備体制は見直されるだろう。
「四年前にあんな事もあったし」
「なにか?」
「ああ、うーん」
言いづらい事なのだろうかおばちゃんは急に歯切れが悪くなる。
こんな風に止められると知りたくなるだろ。
「教えてくださいよ。二人しかいないし」
俺がそう言うとおばちゃんは口端を上げた。
「仕方ないねえ。実は自殺があったのよ」
「へえ」
そんな事、というわけではないが、少し期待外れなような。
「でも、その瞬間の画像がネットに流出しちゃったのよ。しかも、位置的に防犯カメラじゃないかって言われちゃって」
「実際そうなのですか?」
「どうなんだろうね? 元々、屋上は入らないように鍵がしてあったし、今では厳重に南京錠までしてあるから、カメラの位置の確認なんて出来ないし。確認できるのは鍵を持ってる職員と年に数回室外機の点検に来る業者くらいかね」
「なるほど」
そうなると、自殺した生徒がなぜ鍵を持っていたのか気になるが、それをおばちゃんが知る由もないか。
「ありがとうございます。面白い話でした」
「また、おいで」
「はい」
とりあえず、そう答えるのだった。
社長には関わるなと言われているが、おばちゃんと話したせいか気になって俺は昨日の事件現場に来ていた。
「入れるわけないか」
遠目で見てみると規制線が張られており、警備のおじさんが見張りをしていた。
俺は諦めて帰ろうとした時だった。
「君、お話し少しいいかな?」
振り向くと糸目のスーツを着た男の人がいた。
誰だ?
「おっと、挨拶がまだだったね。僕は
そう言って警察手帳を見せた。
なるほど、情報収集ということか。
でも、俺が関わる事件となれば。
「
「あや? 近藤先輩を知ってんですか? もしかして、
「元ですが。今は
「はいはい、なるほど。近藤先輩から聞いてますよ。あなたの周りには謎が多いくて、面倒だと」
そんなふうに近藤さんは俺を周りに言っているのか。
今度、嫌味でも言ってやろう。
さて、なんて言って切り抜けよう。
作り話などしようものなら直ぐにバレそうな気がする。
しかし、正直に魔法だとか言っても信じてもらえないだろう。
魔法で切り抜けようにも昨日治癒魔法を使ってからなんとなくだがまだ魔法が使えない気がする。
だが、それで納得するようなタイプの人間には見えなかった。
「それでは色々聞けないですね」
「へ?」
「上の方からあなたには手を出してはいけないと、言われてまして。しかも、今回急にです。どこからか圧力でもかかってるんすかね?」
その言葉にふと社長を思い出す。
「まあ、それでも近藤先輩は突っかかって、謹慎中ですけど」
俺は胸を撫で下ろそうとした時だった。
名倉が俺の肩に手を乗せる。
「近藤さんが、今回は明らかに事故じゃない。誰かの意思がある。絶対に犯人を見つけるって、言ってたっす」
俺は名倉の顔を見る。
そこに笑顔はない。
真顔で冷たい視線を俺に向けてきた。
「それで、何か話すことはありますか?」
名倉が改めて俺に聞いてくる。
この事件は捜査が始まる前に俺が前提をおかしくしてしまった。
だから警察は証拠を見つけられないのかもしれない。
だが。
「あなたにはありません」
どこか、この名倉という男を信用できなかった。
俺の言葉に名倉は笑ってメモ帳を取り出す。
そこに何かを書くと、破いて俺に渡してきた。
「近藤さんの番号です」
「いいの、ですか? 情報漏洩ですよ」
「僕は君を気に入ったっす。それに、その方が事件が早く片付きそうっすから」
感情の見えない笑顔に一抹の恐怖を感じながら、メモ書きをもらうのだった
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