第7話 再会
喫茶店でアイスコーヒー (本当はホットの紅茶を頼んだはずなのに)を飲み干して、葵さんと別れるのだった。
お昼になる頃俺は家に着いたのだが。
俺の家の前には見覚えのある外車が待ち構えていた。
そして、見覚えのある黒服さんが出てくる。
「準備がととの、その顔どうした?」
「いえ、昼から飲んでた酔っ払いに殴られまして」
本当はもっと早く帰宅するつもりだったのだが、そのせいでこんな時間になってしまったのだ。
「そう、か。まあ、ドンマイ」
少し前までぶっきらぼうだったヤクザさんが労ってくれた。
自分ではまだ確認してないが、そんなに酷いのだろうか?
「そんじゃ、行くか」
俺はまた黒服の方達と黒の外車に乗って、連行されるのだった。
連れてこられたのは山奥にある工場だった。
工場の敷地は草木が生い茂り、建物の塗装はほぼ剥がれ錆び付いていた。
長い間使っていないのが一目でわかる。
この中に父さんがいるのか。
そう思うと、胸が痛くなった。
「こっちだ」
黒服の一人に呼ばれてみちびかれるまま俺は裏口から工場に入った。
沢山の重機が所狭しと置かれているが、その全てが錆びていて、物によっては倒れているものまである。
物寂しい感じがする。
その中で、誰かが言い合っているのが聞こえた。
「言う通りにしただろ! これで借金は無かった事になったんじゃないのか!?」
「ダメだよ。嘘ついちゃ。大石さん、あの子の親権持ってないじゃない」
陰から覗くとそこにはサラリーマン風のヤクザと痩せ細ったメガネの男がいた。
「そ、それは。でも、これから奪い返せば!」
「おい! この仕事は信用第一なんだよ。今更お前の言うことなんか聞けるか」
「す、すみません。でも、もう少しだけ」
陰から見ていたのだが、後ろにいた黒服さんの一人に蹴られる。
突然の事で体制を崩し、二人の前で盛大に転ぶ。
俺は顔を上げると痩せ細った男と目が合うのだった。
「えっと、そ「りえなのか?」
「は?」
痩せた男は俺を見てそう聞いてきたのだ。
だが、俺はそんな名前ではないし、まず男だ。
俺は困惑のあまりサラリーマン風のヤクザさんに視線を向けると、不気味な笑顔を俺たちを見ていた。
「もしかして、尊くん見て死んだ奥さん思い出しちゃった?」
そう言うと、俺の手を掴み引き寄せる。
「そうだよねえ、男にしておくのが勿体ないくらい綺麗な顔してるし」
「お、お願いだ。りえには手を「甘いんだよ!」
俺に伸ばそうとする手をヤクザさんは払い除ける。
そして、後ろに視線を向けると、待機していた黒服達が痩せた男を取り押さえる。
「さて、罪には罰が必要だと思わないかい?」
「や、やめてくれ!」
ヤクザさんは俺の頭を叩くき、そのまま地面に叩きつけられる。
「それじゃあ、お別れをしてください」
「倍の金を返す! だから!」
懐から取り出した黒光する塊を俺の頭に突きつけた。
俺は銃を突きつけられてるんだ。
俺は死を覚悟してそっと、目を閉じた。
「バイバイ」
「りえ!!」
ッパン!!
強い衝撃に俺は意識を手放した。
「いやあ、名演技だったね」
俺が目を覚ますと、そこはいつかのビルの中だった。
頭周りが冷たくて触ると赤い液体が。
「血!?」
「いや、ただの血糊だよ。君の頭を叩いた時に時限式で吹き出すやつをつけといたんだ」
「じゃあ」
「君は死んでないよ」
そう聞いて、俺は少し残念に思うのだった。
「なんか、思ってた反応と違うな。もっと喜ぶものかと思ってたよ」
「正直、かなり微妙です」
俺は家族として、少しでも思うところがあるのなら、と思い父さんが俺の死を躊躇うとかけた。
サラリーマン風ヤクザはさっさと殺せとむしろ後押しするとかけた。
この二つなら、結果としては。
「君の勝ちだ、大石くん」
「色々とありがとうございました」
「まあ、いいさ。本当ならこんな遊びは絶対にしないけど、案外面白かったし。今回だけだ」
そして、なんとも言えない気持ちのままビルを後にしたのだった。
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