ジャムを煮るか否か

ああ何処かの誰かが

ジャムを煮ている

春と夏の間で何処かの誰かが


あまねくあまくて ひどくせつない

何処かの誰かは

傷付けぬよう果実をもいで

洗って やさしく水気を取って

白い琺瑯の鍋でジャムを煮る


鍋の中をそっと覗き込む

何処かの誰かは

果物をふたたび結実させるため

丁寧にとても丁寧に

それをこしらえるから

ふつふつと沸き立って

崩れて結びついて

こめかみが きん、とあまい


やがて小さな瓶に詰められて

きゅっと蓋が閉まるとき

ふたたび蓋が開けられるとき

何処かの誰かと私が

銀の一匙の上で相見えるから

ジャムを煮なくても生きていける私は

ジャムを煮ることをやめられない

何処かの誰かのことが

とても好きだ

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