彼女の指先に蝶が

春の真ん中で佇む彼女のひとみが

昨日とは明らかに違う

秋の黄昏に深く潜るわたくしは

それをまっすぐに見ることができない


蒸せかえる夏へ向かうこと

一歩一歩 冬へ向かうこと

すれ違いざまにいくつか傷をつくって

膨らんでゆくこと

削ぎ落としてゆくこと

向き合うほどに

さざめきは止まない


いつしか 

ぬくもりの記憶はさらさらと零れ

掬おうとしたわたくしの指は空を切る

望みは叶わず

待ち人は来ない

それでも

淡く染まった頬の産毛を掠めて

彼女の指先にそれは 

夢のように

ひらめく

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