藍色の単線

いつも満員だった電車も

今夜は誰一人 乗る人もいない

心音と同じ律動で

宵闇の中を のろのろと走る


海に飲まれそうな停車駅には

行き交う言葉はなく

ただ セイレーンの唄が聴こえる

ぬらぬらとした波のあいだから

おいで おいで、と。

誘いにのって君と睦み合いたいところだけれど

あいにく

地上でも十分に酸素が足りない


一両きりの電車は走る 宵闇の中を

あい、が わからない

なさけ、なら わかる

すれ違う電車が ひどくまぶしい

胸が波打っている限り

何処かへ 行きたいのだろう

何処か 何処かへ

深く

深く

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