第11話 朔夜の尊厳とは!?
ある日の放課後。
俺は自宅の部屋にいる。
今となっては、俺の唯一寛げる場所。
罰ゲームが失敗し、訳のわからない状況から逃げ出せる空間。
・・・だったはず。
なのに・・・なぜ!?
こんな事になったんだ!!
「みなもちゃん。ほら、このお菓子美味しいよ!」
「瑞穂ちゃん、ありがとぉ!本当だ、美味しいねぇ♪」
「はい、美鈴さん。アイスティーよ」
「ありがとう、千里っち!」
瑞穂とみなも、千里、美鈴が和気藹々としている・・・
ここは間違いなく俺の部屋だよね!?
なぜ、ここに4人がいる!?
・・・・・
ええ、ええ、わかっていますとも・・・
最終的には、俺が許可したんですよ・・・
しちゃったんですよ・・・
だから居るんですよ・・・
事の発端は、美鈴による唐突な「朔たんのお部屋はいけ~ん(拝見)!!」発言から始まったのだ。
それに、瑞穂もみなもも、部活が休みだった千里まで乗り気になってしまったのだ・・・
俺は最初、断固拒否していたのだが、美鈴の「朔たんの恥ずかしい秘密をばらすよ?」との一声で泣く泣くOKしてしまいました・・・
・・・いや、俺に恥ずかしい秘密などないぞ!?
あるわけないじゃないか!(・・・汗)
あるはず・・・ない・・・
ない・・・はずなのだが・・・
チキン野郎なんで、びびりました・・・
・・・
いや、チキンじゃねえし!!
チキンじゃないけど、悲しいかなびびってとっさにOKしてしまったのです・・・
ま、まあ普通に友達が遊びに来たと思えば、なんて事はないだろう。
と思っていると・・・
「それじゃあ、朔たんの部屋に来て最初にやる事といったら・・・エ〇本探ししかないよね♪」
・・・ちょうぉい!!
いきなりかよ!
男の尊厳をぶち壊す気かよ!!
「・・・うん、そうね。それは大事なことよね・・・」
おい、瑞穂もかよ!
しかも、さも深刻そうに言うんじゃねえよ!!
「朔ちゃんの好み・性癖を知るためには必須だよねぇ!」
ちょ、こら!
女の子が性癖とか言うんじゃありません!!
「大丈夫、私は朔夜君がどんな性癖の持ち主でも受け入れるわ」
千里までノリノリなのかよ!!
しかも、俺にどんな性癖があると思ってやがんだよ!!
俺はノーマルだよ!!
「やはりエ〇本を隠すと言えば、定番のベッドの下!と言うわけで、皆ベッド付近を徹底的に探すよ!」
「うぉい!勝手に
美鈴めぇ!
俺の言葉も無視して、勝手に探し始めやがったよ!
「うん、ベッド大事・・・朔夜くんの匂いが・・・」
って、おい!瑞穂!
真っ先に俺の枕の匂いかいでんじゃねえ!!
いきなり目的変わってんじゃねえかよ!
前もそうだったが、瑞穂は匂いフェチなのか!?
つーか、恥ずいじゃねえかよ!!
「じゃあ、私は朔ちゃんに包まれるために、布団に潜らないとぉ!!」
だから目的が違うってんだろ!?
みなもは何で俺の布団の中に潜ってんだよぉ!!
俺に包まれるってなんだよ!?
って、もう既に布団をかぶって、みなもの姿見えねえし・・・
「じゃあ、私は朔夜君の身体を直接探しましょうか」
ちょっとまてええええい!!
俺が自分の身体にエ〇本を隠し持ってるわけねえだろがぁ!!
つーか、全員当初の目的が変わって・・・って、あはん!
俺がそうこう考えている内に、千里の白い手が俺の服の中に延びてきやがった。
「あひぃ・・・って、おい、千里!本当に俺の身体を調べるんじゃねえ!!」
感じちまうじゃねえか!!
「ふふっ、朔夜君は本当にいい反応してくれるわね」
「そんなのいいから、やめて!もうやめてぇ!!」
これ以上は本当に感じて、色んな所が大変な事になるだろうが!!
だからもう、俺は全力で千里の手から逃げる!
「朔たーん!ベッドの下にエ〇本ないよ~?」
お前はまだエ〇本を探してたのかよ!!
くくくっ!!しかし、ばかめっ!
甘い!甘いのだよ、美鈴!
今時の男子高校生は、冊子ではなくデジタルなのだよ!
だから、いくらそんな所を探しても見つかるわけがないのだ!
「ふーん、なるほど?・・・じゃあ、パソコンをポチッとな」
ぎゃああああああ!!
「やめて!やめてぇええええ!!」
俺、また声に出してたのか!?
それよりも・・・
万が一どぎついのとか出てきたら、どうすんだよぉ!!
俺生きていけなくなっちゃう!!
・・・いや、そんなものはありませんよ?
・・・本当だよ?
そ、そんな事よりも・・・
「おいこらっ、美鈴!これ以上勝手な事するなら、家から追い出すぞ!」
「ちぇっ!朔たんのけちんぼっ!」
ったく、美鈴め!
けちじゃねえよ!
男の尊厳守れってんだ!!
・・・・・
いや、でもエロいのが見つかった方が、念願のごめんなさいが出るのでは・・・?
・・・・・
ばっかやろぉ!!
他に誰もいない俺の部屋でごめんなさいされたら罰ゲーム関係ねえし、俺がただ傷心するだけじゃねえかよ!
しかも逃げ場がねえ!!
それは流石につらい・・・
ま、まあその件は一旦置いとくとして・・・
「ほらっ、瑞穂!もう枕から離れなさい!」
俺は瑞穂を無理矢理枕から引き剥がす。
「うう~、朔夜くんの匂い、匂いがぁ~・・・」
泣くほどの事かよ!!
どこまで匂いフェチなんじゃい!!
つーか、俺の匂い連呼されると、なんか臭いみたいじゃねえか!!
・・・いや、臭くねえよ!?
それよりも、色んな意味でハズいからやめてくれよ!
「ほら、みなももいい加減出てきなさい!」
続いて俺は、みなもが隠れている布団をガバッとまくる。
「あうっ!朔ちゃんの温もり、温もりがぁ~・・・」
いや、だから!
泣くほどの事じゃねえだろ!
そもそも俺は帰ってきてから一度も布団に
そんな事を考えながら、俺の布団を涙で濡らすみなもをズルズルと強制的に引きずり下ろす。
そして、ベッドからみなもを引き離して安心している俺に、背後からそーっと白い手が・・・
「させん!させんぞ、千里!!」
俺はクルッと振り向き、両手を前に出してプロレスのような構えをとる。
その俺の反応を見た千里が・・・
「ああっ・・・朔夜君の感触、感触が・・・」
だから!!
泣くような事じゃねえだろ!
てか、言い方!
なんか卑猥に聞こえるからやめてくれ!
「あ~あ、3人の美女を泣かすなんて、朔たんは鬼畜だなっ・・・ぐすぐすっ」
いや、泣き方下手くそか!?
どういう理由で泣いてんだよ!!
どう見ても、美鈴のは明らかに便乗した嘘泣きだろが!!
そもそも俺は、鬼畜じゃねえ!!
俺は悪い事は何もしてねえよ!!
この時点で、俺は大分疲れ果ててきた・・・
まだ家に帰ってきてからそんなに経ってないのに・・・
俺がそんな事を考えていると、バーンと音を立ててクローゼットが開いた。
「朔夜あああああ!これは一体なんだあああああ!」
と、真白ちゃんが叫びながら現れた!
ええ!?
いや、ちょっと待って!?
何でクローゼットの中から真白ちゃんが現れんの!?
ここは俺の部屋だよね!?俺達ずっといたよね!?
そもそも、俺は真白ちゃんを招き入れてないよね!?
一体どうやって!!
そして、いつからいやがった!?
・・・って、真白ちゃんが手に持っている物・・・あれは!!
田中から無理矢理
その名も『女教師ランデブー』!
くっそぉ!!
田中めぇ!!
紳士である俺が、濡れ衣を着せられるじゃねえかよ!!
俺はそんな雑誌に興味はないんだよ!!
14ページのメロンが素晴らしかったとか、51ページのリンゴの色・艶・形が良くて美味そうだったとか、36ページの眼鏡が色っぽかったとか、42ページの女豹が可愛かったとか、etc…
俺はそんなのが載ってるなんて知らない!
知らないもんね!!
いいか!?
これは大事な事だからもう一度言う!
俺は全然、全く、これっぽっちも興味はないぞ!!
ましてや、袋とじが空いてなかったからって、カッターで丁寧に切ったりするはずないからな!!
田中の野郎めぇ!!
紳士の俺にこんな屈辱を~!!
絶対に許さんぞぉ!!
もう絶対に返してやらん!!
そして、これからもお世話になります!!(・・・ペコリッ、90度)
って、そんな事はどうでもいい!
それを真白ちゃんが持ってる事が問題だろが!
「ふふっ。やはりな朔夜!私にはわかっていたのだぞ!」
な、何がやはりなんだよ!?
何がわかっていたってんだよ!?
「朔夜の興味は、女教師にしか向いていないという事を!!」
・・・・・・
ちげえええええええ!!
そんな事はありませんからあああああ!!
「そんな事はありません!ごめんなさい!」
「くっ・・・か、隠すな隠すな!今までの私に対する朔夜の態度は、ツンデレというやつだったのだろう!?」
いや、隠してねえし!
更には、ツンもしてなけりゃデレてもいねえ!!
そんな様子がどこにあった!?
くそぉ!よりにもよって、真白ちゃんに見つかったモノがモノである。
真白ちゃんが折れる様子は全くない。
「ちょっと朔夜くん!どういう事!?」
ちょ、ちょっと、瑞穂さん?
まさか真白ちゃんの発言を真に受けちゃったの!?
「どうして、女子高生モノの雑誌じゃないの!?」
って、ええええええ!!
怒るとこ、そこ!?
持ってる事自体とか、真白ちゃんの発言を真に受けたんじゃなく、雑誌の内容が問題なの!?
「そうだよ、朔ちゃん!!女子高生に囲まれながら、女教師モノだなんてぇ!変態だよ、朔ちゃん!!」
いや、なんでぇ!?
おかしいだろ!!
女子高生モノはよくて女教師モノだったら変態なんてさ!
そもそも、女子高生モノがあったら色々とやばいだろが!!
「・・・だったら、私が女教師になればいいわけね?」
おい、千里!どういう事だよ!!
それは将来目指すという話か!?
もちろんそうだよな!?なっ!?
「ふふっ、わかったか?お前達・・・朔夜は女教師に目がない・・・いわば、私に惚れているという事だ!」
真白ちゃんはそう言って、俺の身体に艶めかしく抱きつきながら触ってくる。
あひゃあああああ!!
やめて!やめてええええ!
色んな意味で大変な事になるからぁ!!
つーか、女教師に目がないわけじゃねえええええ!!
やめてくれ!
ありもしない風評被害を広げるのは!
「むむむぅ!真白先生!朔夜くんは私達、皆の物なんですよ~!」
瑞穂が真白ちゃんから俺を引き剥がし、抱きつきながらそう言った。
いちいち抱きつくのはやめてくれ!
心臓に悪いんだよ!!
・・・てか、抱きつきついでに俺の胸でスーハーするんじゃねえ!
どっちかというと、それが目的か!?
「そうですよぉ!朔ちゃんの膝は、私達みんなの為にあるんですよぉ!」
今度はみなもが俺を引き寄せベッドに座らせ、俺の膝にちょこんと腰掛けやがった。
ももおおおおおおお!!
やめて!やめてぇ!
俺に桃を意識させんじゃねえええ!!
つーか、俺の膝は誰のもんでもねえ!!
俺だけのもんじゃい!!
「真白先生!私も今から女教師になるので対等ですね」
そしてみなもをひょいとよけた千里が、俺の服の内側に白い手を挿入させてくる。
ひゃあああああ!
もうやめて!マジで!
直接触られるのは、何度やられても色々とやばいんだよぉ!!
てか、女教師になるって、やっぱり将来の進路の事じゃなかったよ!!
現在進行形だったよ!!
「さ~くたん!ちゅ~しよっ!」
くっ!こ、こいつはぁ!
空気読めや!
い、いや、ある意味、この流れに乗らず空気を読まないこいつは有難いのかも・・・
しかし・・・それはそれ、これはこれ。
だから・・・
「あほか!」
「あいたぁ!」
と、チョップを入れておく。
痛くもないのに痛がる美鈴を尻目に、真白ちゃんが俺の頬を撫でてくる。
「おっと、こんな丁度いい所にベッドもある!さあ、朔夜!一緒に愛を育もうではないか!」
丁度いい所にって、俺の部屋なんだからあるに決まってるだろ!
「ごめんなさい!」
「くっ!しかし、それは愛情の裏返しだと知っているから私は折れん!!」
真白ちゃんは色んな意味で手強すぎる!
しかも、ずっと俺の頬を優しくなでるから、ドキドキが止まんねえんだよ!
更には・・・
「朔夜君が意外と良い体しているのは、私だけが知っているのよ。腹筋なんかは特に・・・ふふっ」
と、千里が再び俺の服の中に手を伸ばす。
「な、なにぃいいい!そ、それは本当か!?私にも触らせろ!!」
「えっ!?それはぜひ私も確かめないと!朔夜くんの体を直接・・・」
「朔ちゃんの腹筋!?もちろん頬ずりしていいんだよねぇ!?」
「おおっ、それは盲点だった!朔たんの腹筋をいじらないと!!」
と、全員で俺の身体にすり寄ってきやがったのである。
うひぃいいいいいい!!
もうやめてぇ!
本当にやめてぇ!!
俺の心臓が、この状況に耐えられるわけもなく・・・
心臓破裂により、今日が俺の命日となったのである・・・
・・・・・
いや、ならねえし!?
この状況で死んだら、何されるかわからないからな!
是が非でも、この場は生き延びる!
という事で、この後ずっと逃げ回ったのであった・・・
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