第14話 澤田瞳子『星落ちて、なお』
あらすじ
【第165回直木賞受賞作!】
鬼才・河鍋暁斎を父に持った娘・暁翠の数奇な人生とは――。
父の影に翻弄され、激動の時代を生き抜いた女絵師の一代記。
不世出の絵師、河鍋暁斎が死んだ。残された娘のとよ(暁翠)に対し、腹違いの兄・周三郎は事あるごとに難癖をつけてくる。早くから養子に出されたことを逆恨みしているのかもしれない。
暁斎の死によって、これまで河鍋家の中で辛うじて保たれていた均衡が崩れた。兄はもとより、弟の記六は根無し草のような生活にどっぷりつかり頼りなく、妹のきくは病弱で長くは生きられそうもない。
河鍋一門の行末はとよの双肩にかかっっているのだった――。
感想
夢が現実となる人、途中で夢を諦める人、叶わなくても最後まで夢を諦めない人がいる。
その人たちが死んだ後は生き残った人の心の中で生き続けている。
しかし、その生きた事実を指し示す者がいなければ、どれだけ眩しかった輝きもいずれは忘れ去られてしまうという儚さを感じた。
天才画家を父親に持つ娘。
父親に憧れ、尊敬する一方で、憎らしくもある。
どんなに頑張っても父親には届かない。
そんな葛藤を描いていた。
画家になるために、自分と同じように切磋琢磨していた仲間たちが、自分よりも有名になったり、金を稼いでいたりする。
そこには、祝福だけでなく、嫉妬もまじる。
その嫉妬がなんとも切なく共感できる。
嫉妬をしても何も生まれないのに、そうしてしまう人間という生き物。
そのもどかしさを感じた。
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