第10話 石原燃『赤い砂を蹴る』

あらすじ


「お母さん、聞こえる? 私は、生きていくよ。」


画家の母・恭子を亡くした千夏は、

母の友人・芽衣子とふたり、ブラジルへ旅に出る。

芽衣子もまた、アルコール依存の夫・雅尚を亡くした直後のことだった。

ブラジルの大地に舞い上がる赤い砂に、母と娘のたましいの邂逅を描く。

渾身のデビュー小説!






読了した感想  


近しい人の死。


その故人に想いを馳せるとき、楽しい思い出、悲しい思い出、後悔、懺悔、葛藤など、様々な想いがよぎる。


その想いは、周りの人と共感できるところもあれば、できないところもある。


自分にしか分からないこともきっとあるだろう。



一人一人がその故人の思い出一つ一つに想いを噛み締めて、決着をつけることが大切なのかもしれない。




この話では、母と娘が出てくる。



この2人は、お互いに依存し合うのではなく、好きなように生きていた。


母親だからこうする、娘だから親に可愛がられるようにする、


そういうことは、せずに周りの目も気にしていなかった。


そうできたのは、母が自由に生きて、周りの目も気にしていなかったからで、そんな母の姿を見て、娘もそうした。



決して愛情不足ということはなく、お互いに愛し合っていたからこそ、できたこと。




「自分の道を歩くべき。


親のためになにかを犠牲にするのではなく、自分のために生きるべき。


それが私の信じてきた理想」



と、母が娘に話していたシーンは、


なんて強くて逞しい母親なんだろう!


と感銘を受けた。





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