第12話

 俺たちはあれからすぐに家に戻った。俺も浩美もひかりが斬られたのが衝撃だったこともあり、一度休みを取るべきだと思ったのだ。


それと先程のゴブリンソルジャーが話していた、ゴブリンキングについて報告しなければならない。



「みんな話を聞いて欲しい。」



「改まってどうしたの?」



「今日のことの反省と、報告。それに今後について相談があるんだ。」




浩美と子供たちも俺の真面目な表情に、何も言わずに自分の椅子に座ってくれた。



「まず最初に今日の反省だ。ゴブリンを相手にするのに慣れてしまって、完全に油断していた。そのせいで、ほんのちょっと強めのゴブリンが現れただけで、家族を危険にさらしてしまった…本当に済まなかった!!」



「パパ、大丈夫だよ!私痛くなかったよ!」



「ひかりが大丈夫だったのは、ひかりが物理耐性を上げまくっていたからなんだ。もしあのとき、ゴブリンソルジャーが狙ったのが、ステータスが初期値のあかりだったとしたら…今頃あかりは死んでたかもしれない。それくらい危ない状況だったんだ!」



「そっか…」



俺の言葉に浩美が青い顔をしている。




「これからは気を引き締めて、いつ強い魔物が現れるかもしれないという心構えで油断せず挑んだ方がいいと思う。」



「分かったわ!」


「「はーい!」」



ひかりはともかく、あかりは内容を理解してるか怪しいが、相変わらず返事だけは立派である。




「次に報告だ!いい報告と悪い報告がある。


いい報告は、今日のゴブリンソルジャーは言葉が話せた。しかも日本語をだ!魔物が上位種だと知能が高くなることはよくあることなんだが、日本語が通じたのはかなり朗報だ。


それにこの世界には、俺たち以外に人間がいるのは間違いなさそうだ!あいつは俺のことを「人間のオス」と呼んだからな。いずれ情報を得られたら、人間の街に行ってみたいと思ってる。ゴブリンでも通じるんだ、多分人間相手でも言葉は通じる筈だ!」



「私たち以外の人間!それは吉報ね!!早く行きたいわ。」



「ひかりも行きたい~!」


「あかりも~!」



「次は悪い報告だ。今日のゴブリンソルジャーの話によると、この辺りにゴブリンの国があるようなんだ。そこには今日のゴブリンソルジャーが500匹はいると言っていた。それに1番トップにはゴブリンの王様、ゴブリンキングってのがいるそうなんだ。


おそらくだが、その配下には他にも様々なゴブリンの上位種たちが数多く存在していると思う。」



「そんな!」



「さらに悪い報告になってしまうんだが、そいつらに既にこの辺りを注目されてしまっている。俺たちがこの辺りのゴブリンばかり大量に狩っていたから、今日のゴブリンソルジャーは様子を見に来たんだと思うんだ。


そのゴブリンソルジャーも戻ってこなかったら、きっと近いうちに大規模な部隊を組んで攻めてくると思う。」



「大変じゃない!それならすぐにでもここから逃げないと!!」



「ママ、落ち着いて!逃げるにも何処に逃げたらいいのかすら分からないんだよ。やみくもに進むのも危険だと思うよ。


それにゴブリンが襲ってくるのは、今すぐじゃない。今日のゴブリンソルジャーが戻らず、実際にゴブリンたちが動き出すまでは、おそらくまだ2~3日は猶予があると思う。それに事前に分かってさえいれば、防ぐ方法もあるんだ。」



「さすがパパ!…でもどうするの?」



「単純に移動したと思わせればここには来ないだろ?ここから離れた場所で大暴れすれば自然にそちらに目が向く。家は発見されにくくなるだろう。


ただし、この方法は目立たなければ意味のない作戦上、暴れる際、かなりの数の敵に囲まれるだろう。下手をすれば今日のような上位種もやって来るかもしれない。


その時に、今回みたいに突然家族を狙われたら…特にあかりが狙われたらとても危険なんだ!



そこで相談なんだ。


俺はこの作戦を1人で行おうと考えてる。大暴れするなら俺1人の方が安全なんだ。ママとひかりはステータスを伸ばせば、今日のひかりのように安全に一緒に行動できると思うんだけど、あかりは違う。


2人にはここであかりを守っていて欲しいんだ!

幸いママもひかりも成長したから、パパがいなくても普通のゴブリン相手なら心配ない。」



「そんなことパパ1人で…危険だわ!いくらなんでも危険すぎるわ!!」



浩美は不安そうな顔をしている。



「そんなに心配いらないと思うよ。俺はかなりステータス高くなってきてるし、まだまだスキルポイントもかなり余らせてるんだ。物理耐性さえ上げておけば、今日のひかりのように万が一攻撃を喰らっても、大したダメージは負わない筈だ。


ところで参考にしたいから、ひかりの今のステータスをメモに書いてくれる?」




俺はひかりのメモを見て驚いた。



[名前]

社 ひかり


[年齢]

7歳


[種族]

人族


[HP]

15200


[MP]

500


[力]

500


[物理耐性]

15500


[魔法耐性]

2000


[状態異常耐性]

2000


[器用さ]

900


[素早さ]

900


[魔力]

500


[習得魔法]

なし


[習得スキル]

射撃レベル1

頑丈レベル1


[ユニークスキル]

テレパシーレベル1


[スキルポイント]

746ポイント




「これはスゴいな!想像以上に上げていたよ。ひかりは訓練もいっぱい頑張ってたもんな!!新たにスキルまで覚えてるし、どおりでゴブリンソルジャーの一撃を弾いてしまう筈だ!!


頑丈スキルは、物理耐性をさらに上げるのかな?便利そうだし、これは俺も欲しいな。出現条件はHPと物理耐性だろうな…どこまで上げたら取れるんだろう…」



俺が途中からぶつくさとスキルの考察に入っていると、浩美から声を掛けられる。



「パパ?パパッ!…パパの悪い癖が出てるわよ!何かに集中するとすぐに自分の世界に入り込んじゃうんだから…」



「あっ。ごめん。本当にひかりには驚かされるよ!参考にさせてもらうね。それと、ひかりは射撃のスキルのレベルも上げていくともっと強くなれると思うよ。」



「はーい。」



「ママ、俺はとりあえずこれから3日間1人で暴れまわろうと思ってる。それ以上家族と離れるのは俺も不安だしな…その間家のことは任せていいかな?それと、温めれば食べられるレトルト系の食事と水をネットスーパーで3日分用意して欲しい。



ひかり、ゴブリンが万が一やってきたら倒すのはひかりの役目だ!そのときには頼んだぞ!それと、そんな状況になったらパパにテレパシーで必ず知らせてくれ。


そうじゃなくてもお互いの安全確認の為にも毎日声を掛けてくれたら助かるよ!



あかり、パパがいなくてもママやネエネのいうことをちゃんと聞くんだぞ!」




浩美はちょっと心配そうにしていたが、俺はこうして1人でゴブリンたちに挑むことになった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る